60 ─昨夜、薔薇の木の下で。
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[ノックスの後を追うように走ってゆく。エメラルドが困惑の色にしばし揺らいで。]
『大丈夫だよ。生気をわけてもらっただけ』
『ランディと同じ、疲れて眠ってしまったの』
『心配ないよ』
[不安がる少年に薔薇は囁く。本当のことだけを。 そう、嘘はついていない。]
(9) 2011/08/07(Sun) 01時頃
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──中庭・回想──
[蔦が、ヴェスパタインだけではなくディーンをも巻き込むのが見えた気がした。ゆっくりと倒れる二人の身体。]
大丈夫……。
[眠るだけ。大丈夫。それはわかっているけれど、転べば怪我をするし、炎天下に置いておくわけにも行かない。 気持ちだけははやるけれど、ノックスから運ぶ頭数に数えられれば、思い切り困った顔をした。自分と30cmも身長の違う人、上級生が二人居るとは言え手伝いきれる気もせずに。 おどおどと対処に困っていたけれど、ヤニクが人を呼ぶと言ってくれたのでほっとした。木の陰に向かうノックスとは離れ、薔薇の木のほうへ向かう。]
……すごいや。
[誰かが気遣ってくれたのだろうか、折れかけた部分には添え木がなされ、けれどすでにそれが必要ないくらい、枝はみずみずしさを取り戻している。ランディと、ヴェスパタインと、ディーンと、三人分の生気を貰って……]
『違うよ、四人分』 『君に酷いことした、あの子の分も』
(64) 2011/08/07(Sun) 13時半頃
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えっ!?
[思わず声を上げる。煽ったのは自分のくせに薔薇の精は酷い事なんて言葉を使う。]
フィリップ先輩……も?
『君に手を出したりするから』
『少しだけおしおき』
『君はぼくの大事な契約者だもの』
[薔薇の精が笑い、頭を撫でるような気配がした。]
(65) 2011/08/07(Sun) 13時半頃
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手伝います。
[やがてヤニク達が戻ってきたなら、本当に何の役にも立たなかっただろうけれど手伝おうとして。そのあとをちょろちょろとついて行く。]
あの……フィリップ先輩見ませんでしたか。
[どこかで倒れているのだろうか。それならば探さないと、と思うけれど。 心当たりはなく、またうろうろと外に出る。]
フィリップせんぱーい。
[答えが返るはずもない声。迷子の子供のようなそれは、誰かの耳に届いただろうか。]
(70) 2011/08/07(Sun) 14時半頃
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[細く開いた窓、最初はどこからの声かわからず周りを見回す。]
……サイモン先輩。
[それが誰のものかわかると、びくりと身体をこわばらせた。 けれどそれも一瞬のこと、自ら窓に近づいてゆく。]
何か、用、ですか?
[自分には妖精がついていて。何かあったら眠らせてしまえる。 歪んだ自信が警戒心を緩ませた。]
(73) 2011/08/07(Sun) 15時頃
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[思い出したのは昨夜のこと。 そうだ、自分がこの人を眠らせてしまえば、フィリパ先輩が黒ミサに参加させられずに済む。それはとても名案に思えて。]
からかわない? ほんと?
[薔薇の精にも天敵が居ることなど知らぬ少年は、そっと手に手を重ねる。薔薇の花が、ふわりと香った。]
(75) 2011/08/07(Sun) 15時頃
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いばら?
[握られた手の強さに、少年は怯える。薔薇の精も、また。]
やだっ! 離して!!
[暴れ藻掻き、薔薇の香を一層強くまき散らす。まだ足りない、まだこんなところで散るわけにはいかないのだと。]
助けて!!
(77) 2011/08/07(Sun) 15時半頃
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[情欲だとか罪だとか、露悪的な言葉に嫌悪感が増す。手を掴まれたまま、必死でサイモンから顔を遠ざけた。]
そういう風に言わないでっ! 僕はただ、妖精を助けたいだけだ!
[罪を自覚しないというなら、少年こそがそうだろう。 依存を恋と置き換えて。異常を異常と捉えずに。 いつだって自分の立ち位置を見誤る。]
(82) 2011/08/07(Sun) 16時頃
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犠牲なんてないよ、みんな眠るだけだもの!!
[甘い毒が残す傷に思い及ばず、少年は反論する。 折ってしまうぞと言う脅しに、ぞくりと鳥肌立てて。
手が離されるやいなや、一目散に駆けだした。]
『あのこはダメだ』 『どうにかしないと』
『はやく、はやく、』
[廊下に駆け込んで、はぁはぁと荒い息をつく。掴まれた腕に残ったうっすらとした赤い痕が嫌で、ズボンでごしごしと擦った。]
(88) 2011/08/07(Sun) 17時頃
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っ、ヤニクせんぱい……。
[人の気配に敏感に反応する姿は、いつもの小動物のような。]
『手当してくれる子だ』
[薔薇の精は少しほっとしたようだった。]
(89) 2011/08/07(Sun) 17時頃
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えっと……フィリップ先輩が倒れたみたい、だけど、僕は見てないです。
[いつもの癖で、胸の辺りで自分を守るように手を組んで、ふるりと首を振る。]
サイモン先輩が……。
[腕の痕を見咎められてびくりと。言葉を濁せば、大まかなところは伝わるだろうか。 そういえばまだ、フィリップに犯された後シャワーも浴びられていない。]
(92) 2011/08/07(Sun) 18時頃
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[近寄らないほうがと言われ、こくりと頷く。自分だって近寄りたくはない。]
ザック先輩がいてくれればいいのに。
[ぽつりと呟いたのは、彼を信じているからで。そのうち黒ミサの生け贄にされる予定だなんて知らないから。]
『まだ足りない』
『もっと頂戴』
ふぁ……!
[薔薇の香が強くて、一瞬くらりとバランスを崩した。]
(96) 2011/08/07(Sun) 18時半頃
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/* もしかしなくても:自分の引き出しには不遜がない
逃避とか依存とか劣等感とかその辺引きたかったよ……!
(-31) 2011/08/07(Sun) 18時半頃
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……あつい、
[薔薇が気に入っている相手のせいか、腕が触れただけで身体が反応してしまい、びくりと跳ねる。触れてもいないのに立ち上がってしまっているのがわかって、顔をかっと赤くした。]
ごめん、なさい……!
(102) 2011/08/07(Sun) 19時頃
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[かすめただけの指にまた熱を呼び起こされて、けれどそこに強引さは欠片もないから少しだけ落ち着けた。]
あっ……!!
[顔が、今度は羞恥で赤くなる。いろいろなことが起こりすぎて忘れていたけれど、本当は水だけ飲んで部屋に戻るつもりだったから、しわくちゃの服もそのままだ。]
っ、シャワー浴びてきます!
[逃げ出すように走り去る。彼の笑みの意味を知るには、少年はまだ幼すぎた。]
(108) 2011/08/07(Sun) 19時半頃
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ジョージは、薔薇の香りをまき散らしながら自室の方へ走ってゆく
2011/08/07(Sun) 19時半頃
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──シャワールーム──
[一旦自室に着替えを取りに行き、急いでシャワールームに移動する。 丁寧にシャボンを泡立て洗えば、狭いシャワールームはあっという間に薔薇の香りに満たされた。]
……っはぁ、
[温かなお湯が触れれば幼いそこはたやすく反応を示す。けれど公共のスペースで慰めるのは躊躇われて、結局手は伸ばされない。]
『はやく。もっと貰わなきゃ』
『消されてしまう前に』
『疑われてしまう前に』
[それは、生き餌の鮮度を保ちたい薔薇の思惑かも知れなかったけれど。]
……喉、かわいた。
[よく跳ねる巻き毛はタオルで拭くだけでカールを取り戻す。暑いからと整えるのもそこそこに、食堂へ向かった。]
(116) 2011/08/07(Sun) 20時半頃
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──食堂──
[パントリーを目に入れないように、意識して扉を開ける。ふわりとコーヒーのいい香りを感じた。]
アディンセル先輩。
[ぺこりと頭を下げてから、共用のグラスの入った棚を開ける。少し埃の被ったそれを水でゆすいで、オレンジジュースを注いで。]
鳥……そっか、フィリップ先輩寝てるから。
[空いているテーブルの、隣の席を選んで座った。]
(117) 2011/08/07(Sun) 21時頃
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聞いたんです。
[素直に答えるけれど、青磁を見つめ返せずに、視線は手の中におちる。]
その、ええと……さっき。ヤニク先輩に。
[誤魔化そうと取り繕えば取り繕うほど、エメラルドはうろうろと揺らめいた。]
(122) 2011/08/07(Sun) 21時頃
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[悪いことをしているなんて思っていない。 けれど、知られてはいけないという思いは確かにそこに。]
っ! ……違うんだ。
[隠しきれないと察して口を開いた。]
僕……フィリップ先輩に、フィリパ先輩にキスしたとこ、見られて、 黙ってて欲しかったらって、襲われて……! それで、そのあと……。
[自分でも驚くほど自然に口から出たのは、巧妙な言葉。嘘ではない、けれど真実でもない。
思い出したのは、恐怖ではなく快楽だった。]
(130) 2011/08/07(Sun) 21時半頃
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や……!!
[肩を掴まれて、漏れ出た悲鳴は嬌声に近い。]
わかんない、お化けみたいな声が聞こえて…… 倒れて、怖くて、逃げちゃったもん……!
『そうだよこの子は何も知らない』
『かわいそうなただの被害者』
[薔薇の精は洗脳するかのように囁きかける。少年がほころびを出さぬようにと。それが正しいのだと錯覚するようにと。 潤んだエメラルドが眼鏡の奥から青磁を見上げた。]
(138) 2011/08/07(Sun) 22時頃
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[ゆるりと首を振る。気にしていないと示すように。]
せんぱい、熱い……。
[目を伏せても、もぞりと内股をすりあわせる様は、今まで彼の前を通り過ぎていった者たちと同じ、なのだろうか。 フィリップとのことを口に出せば思いの外ショックで。寂しさなのか熱なのかわからなくなって、ただ誰かに縋りたい気持ちを久々に思い出していた。]
(142) 2011/08/07(Sun) 22時半頃
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……抱っこして。
[口をついた言葉は、ひどく幼かった。]
(147) 2011/08/07(Sun) 23時頃
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[暖かな腕に抱きしめられる。それはひどく心地よくて。]
……僕、嘘つくの、ほんとは得意なんだ。
[小さく小さく呟いた。 いい子でない方が、何も出来ない方が、構ってもらえると気づいたのはいつだったろう。演技の筈だったそれは、いつしか癖になり、気づけば本当に何も出来なくなっていたけれど。
何を言い出すのかと薔薇の精は眉をひそめて、一瞬目を伏せ、もう一度あげたときにはもう、身体の主導権は入れ替わる。]
アディンセル先輩、もっと、欲しい。
[自分からぎゅっと抱きついた。]
(153) 2011/08/07(Sun) 23時頃
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抱いて欲しい。 先輩の好きにして。気持ちいいの、教えて。
[薔薇の精の強請る様は、少年にもっと素直になれとそそのかすよう。 ただ温もりを求める思いを踏みにじって、罪を誘った。]
(158) 2011/08/07(Sun) 23時半頃
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/*迷走なう。
(-53) 2011/08/07(Sun) 23時半頃
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『想いのままに』
『望みのままに』
『恋を頂戴』
『想いを頂戴』
『君の命の欠片を頂戴』
(*5) 2011/08/07(Sun) 23時半頃
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先輩も、そんな顔、するんだ……。
[学年が離れすぎていてあまり知る間柄ではないけれど、それ故に、真面目な人だと思っていて。]
条件……?
[首を傾げて、こくりと頷く。その中身を知れば温もりを欲しがる依り代は嫌がるのだろうけれど。]
誰かの部屋に行くのって、あんまりなかったから、嬉しいな。
[寄り添うようにして、これから普通のゲームででも遊んで貰うような、無邪気な笑みを浮かべた。]
(165) 2011/08/08(Mon) 00時頃
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……薔薇は、咲きたがってるから。
[薔薇の精ではなく、少年が答えたのは、名前を呼ばれたから。]
僕は、好きな香り。
[強すぎるとは思っていない。情欲を呼び覚ますものだとも気づいていない。 それは、薔薇の精の依り代であるゆえの決定的な違い。]
(172) 2011/08/08(Mon) 00時頃
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……お邪魔します。
[少し緊張して、おずおずと足を踏み入れる。言われたとおりベッドに掛ければ、どの部屋も同じ筈のベッドはやはりどこか違う気がした。]
それ、なんですか?
[ちらりと見えたレターボックス、お菓子かなにかの箱にしては扱いが丁寧に思えて、なんとなしに尋ねてみる。ただ黙って待つのが落ち着かなかっただけだけの質問。 覚えたばかりの快楽を欲しがって、薔薇の蜜に侵された身体は熱い吐息を漏らした。]
(181) 2011/08/08(Mon) 00時半頃
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……好きなように、するといいんだ。
[快楽に堕ちた心が、状況など気にせずに返す。]
(*8) 2011/08/08(Mon) 00時半頃
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