60 ─昨夜、薔薇の木の下で。
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[草露に濡れた服が、火照った肌を冷やしていく。 互い荒い息も収まらぬまま、重なった身体だけがとても熱かった。
身勝手で乱暴な行為の筈だったのに、腕の中の下級生は満足そうな笑みを浮かべていて、どんな表情を向ければいいのか、わからなくなってしまった。
怖かったのか、それともそんなにされても幸せそうな彼に苛立ってしまったのか。 気だるげに横たわる彼をそのままに、足早に立ち去ったのは…自分でもどうかしていたに違いない。]
(113) 2011/08/03(Wed) 10時頃
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[濡れた身体で寮へと戻り、熱いシャワーを浴びに行った。 穢れをすべて洗い流したかったのだろう。体を洗うのは念入りに。
湯が滲みた傷口と、行為の最中に付けられた背中の赤い爪痕。 そこから荊棘模様が僅かに広がっていることに、当人はまだ気づいていなかった。
誰かがそれを見ていたかもしれない。 人々か、それとも中庭の花の精たちか…]
(114) 2011/08/03(Wed) 10時半頃
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[バスローブを着たまま、洗濯機を回していたのは、 ルーカスがシャワールームに現れた頃。 濡れたままの髪をタオルで乾かしながら、ぼんやりとランドリー前のベンチに座っていた。]
…あぁ、おはよ。 晴れたみたいだね。
[変な時間に寝てしまったせいか、こんな時間に起きているのは珍しかったかもしれない。 たぶん部屋に戻れば、昼まで眠ってしまいそうだけれど。]
(126) 2011/08/03(Wed) 11時頃
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早く上がってくれて助かったよ。 …雨降りは、苦手だから。
[天候が悪くなると、持病の頭痛が酷くなるから。 雨上がりのさわやかな日は気分もすっきりして好きかもしれない。]
頭痛いから薬飲んで寝てたら、変な時間に起きちゃって。 洗濯物干したら、二度寝しようかな…
[横切る彼が目の前を通ったときに、ふわりと薔薇の香りが漂ったか。]
(128) 2011/08/03(Wed) 11時半頃
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[アイツらが卒業したおかげで、悪夢から覚めたと思っていた。 それでも時折フラッシュバックのように疼くものを抑えきれず耐えられなくて、誰とでも寝るという彼と、幾度か枕を共にしたこともある。
そこに心がないのは互いに承知の上。 利害関係が一致した、それだけのことだから。
愛してるという言葉を信じられない自分にとって、彼は居心地のいい相手だったかもしれない。
丁度止まる洗濯機。 お先に、とひと声かけて、その場を離れた。]
(129) 2011/08/03(Wed) 11時半頃
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…恋、なんか。
[夢うつつに聞いた囁き声に、ポツリと零す言の葉一つ。
恋なんか信じない。 思いなど信じない。
どうせ全て、搾取するための口実に違いない。
肌を傷つけた棘は、ゆっくりと蔦模様で侵食していくけれど、 心にはきっと、とっくの間に、抜けない棘が刺されていたんだ。]
(*8) 2011/08/03(Wed) 21時頃
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[シャワーへ行くルームメイトとは自室に帰る途中で丁度行きあって、 おはようとおやすみを互いに交わしたか。 晴天の下に干した洗濯物も、薔薇の仄かな移り香を残している。
けだるい体が目覚めるのは、おそらく日が高くなりかけた頃。 それまでは、白いシーツの上に長い髪を乱して眠っていた。
薔薇の刺で裂かれた右腕の傷は塞がらず、点々と白いシーツに赤が滲む。 その周りに広がり始めた蔓荊棘の痣は、あの後輩の鮮やかな赤ではなく、どす黒く青みを帯びている。 まだそれは、一見打ち身でもしたかのように見える程度、か。]
(191) 2011/08/03(Wed) 21時頃
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[咲かせて欲しいという声が、甘い毒のように魂に沁み込む。]
踏み躙り、無残に散らしても…お前の糧にはなるか?
[自分の身体が覚えたのは、行為という名の搾取だけ。 優しく愛でる触れ合いすら、獲物を絡めとる罠としか見れない。
そんな心無い陵辱さえ、快楽に摩り替えることでやり過ごしてきたから。 昨夜後輩が腕の中で見せたあの表情は、自分には理解の出来無いものだった。]
(*12) 2011/08/03(Wed) 22時頃
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[ざわりと胸の奥、黒い蔦が蠢いた。]
(*15) 2011/08/03(Wed) 22時頃
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…ノックス……?
[混線するように聞こえてきた声に、半覚醒状態の意識は困惑した。
それは偶然なのか、必然なのか。 互いに共通しているかもしれないのは、病弱な身体か、何処か歪んだものを抱えていた精神か。 どちらが薔薇の精に都合が良かったのだろう。]
(*16) 2011/08/03(Wed) 22時頃
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…訳が分からないが……
[残念ながら、気にせずあっさり受け入れるようなおめでたい脳味噌では無かったため、やはり困惑の色が濃い。
けれどそんな違和感も、芳しく濃厚な薔薇の香りが溶かしていく。 心の芯に灯る衝動。 欲しいのは、刹那の快楽。
…本当に、それだけ?]
(*18) 2011/08/03(Wed) 23時頃
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……んっ…?
[ベッドの上で身じろぎながら、思わず漏れた声は意外なほどに甘かった。
寝ぼけ眼に降り注ぐ夏の日差しが、瞼越しに赤く見えていた。 眩しげに幾度か瞬き、目を開ける。
消え去った頭痛と共に、昨夜の事はまるで夢だったかのよう。 けれど、じわりと滲む腕の傷が、昨夜の行為を鮮やかに思い起こさせた。]
…何、やってんだ…、俺。
[ランディはちゃんと部屋に戻ったのだろうか? 喘ぎ疲れ涸れ果てた声で途切れ途切れに、大丈夫だよ…、とは言っていたけど。]
(212) 2011/08/03(Wed) 23時頃
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…あ。
ランディ…は?
[心配そうに問う言葉がこちらに向けられたのは、 何故だか彼も…同じ匂いがしたからかもしれない。]
(*19) 2011/08/03(Wed) 23時頃
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[まだ少し怠かったけれど、とりあえず身支度だけは整える。 夏物の半袖の開襟シャツと、スラックス。 長い髪はまだ生乾きだったから、手櫛で整えて緩く一纏めに結わえた。
髪を伸ばし始めたのはいつからだっただろう。 「貴方に憧れて…」 そんなことを打ち明けた後輩の姿が脳裏をよぎった。]
(227) 2011/08/03(Wed) 23時半頃
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…眠っ、て…?
[胸の奥が、なんだかチリリとした。]
大丈夫だ、って…
[自分で部屋まで帰れると言っていたかいないか…都合よく勝手に解釈しただけなのだろうか。
置き去りにしてしまったのは何故なのか、何故そんなことを後悔しているのか。
わからない、けれど… 脳裏をよぎる光景は、だるくて痛む身体を引きずって、とぼとぼと部屋へ帰る自分の姿。 そのあと…たぶん4日くらいは、晴れていたのに授業を休み、 校庭を走りまわるクラスメイトを窓から虚ろに眺めていたのだっけ。。]
(*22) 2011/08/03(Wed) 23時半頃
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…おい、どうした?
[自分以上に病弱な彼のことだ。 異変が聞こえれば流石に少し狼狽えたか。]
(*25) 2011/08/04(Thu) 00時頃
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[色々と気がかりが多すぎて、居ても立っても居られずに、 靴下を履くのも忘れて部屋を出る。
ピッパとイアンが屋内へ入ってくる頃だっただろうか。]
(243) 2011/08/04(Thu) 00時頃
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[二人の距離が、いつもより少し近しいように見えて、訝しげに首を傾げた。 シャワー室前のランドリーへ消えていくのを見れば、そちらへ向かうのはやめたらしい。]
…ランディ、居るのか? [声を潜めて、後輩の部屋をノックした。
昨夜、あんなひどい事をしたくせに、自分は一体何をしているのやら…]
(245) 2011/08/04(Thu) 00時頃
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[ランドリーへ消えていく後ろ姿に感じたものは、きっと見間違いだったのだろうと思った。
薔薇の毒に侵されて変質した感性が、何かを感じ取っていたとは気づかずに。 再度のノックに返答はなく、開けるぞ。と短く告げてそっとドアを開く。
陽射し挿し込むベッドに、キラキラと艷めく銀髪が見えた。 自分の色褪せたものとは違う色。
寝顔に安堵を覚えたけれど、それと同時に罪悪感も胸にこみ上げてきていて、中へは入れず…そっとドアを閉めた。
眠り姫が錘に刺されたように、長い眠りに落ちていたなんて…まだ今は気づかない。]
(256) 2011/08/04(Thu) 00時頃
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ヴェスパタインは、廊下に漂う匂いに気づき、あぁまたやったのか…と誰かのせいにした。
2011/08/04(Thu) 00時頃
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…おい、ディーンお前また……
って、違うの?
[熱くなるようなものには触るなと言い聞かせたはずだったから、説教でもするつもりで食堂に顔を出し…
犯人はディーンではないと知って、ひどく意外そうな顔をした。]
(269) 2011/08/04(Thu) 00時半頃
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火事にはならなかったが、火傷は…何回した?
[ボソリと言い訳めいた事を返すルームメイトに、はぁ…とため息ひとつ。
食堂へ踏み込むと、薔薇の香は更に濃密になる。 その香りに反応して、疼いたのは荊棘の棘に裂かれた傷。 七分袖の開襟シャツでは、袖口からちらりと見えるかもしれない。
そういえばまだ…手当をしていなかった。]
(279) 2011/08/04(Thu) 00時半頃
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[牛乳と、作りおきの茹で野菜サラダと、食パンは焼かずにそのまま。
…と、大サイズのマヨネーズのボトルを冷蔵庫から取り出して、窓辺の席へ。
ゆるキャラっぽい顔が落書きされたマヨネーズはマイボトル。 とりあえずそれがあればあとはなんでもいいらしい。]
(288) 2011/08/04(Thu) 01時頃
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…ん?
あぁ、後で…行く。
[ディーンの囁く声にこくんと頷きながら、食パンにマヨネーズをにゅるった。]
(290) 2011/08/04(Thu) 01時頃
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ヴェスパタインは、ぽろぽろ食べこぼす小動物の様子に和んだ。
2011/08/04(Thu) 01時半頃
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[ヤニクの視線には気づかぬまま、些か常軌を逸した量のマヨネーズが積み上げられた食パンを口へと運ぶ。 とろみのあるやわらかな白濁が唇を汚し、節くれだった長い指先へと零れて滴る。 指を濡らしたそれを赤い舌でちろりと舐めとる様は、見る者によっては扇情的に映るか。
それとも、偏食というか、むしろ変食の域にまで達している味覚に、見てるほうが胸焼けするかもしれない。 本人は本人で、これで御満悦なのだから救いようがないけれど。]
(430) 2011/08/04(Thu) 23時半頃
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[食堂に満ちる薔薇の香に当てられてか、出ていくもの達の姿を訝しげに見つつ… 自分も、量自体はそれほどの分量でもない食事を平らげて片付けた。
傷は、じわりと沁みいるように疼く。 それは胸の奥をキュウと締め付け、魂に小さな焔を燈すよう。]
(431) 2011/08/04(Thu) 23時半頃
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……ハ……。 [内にこもった熱は、吐息に混じって唇から零れた。
衝動に絡みつくように浮かぶ感情が眉潜めるようなものなのは、 きっと、力尽くで押し込められて、歪みねじ曲がっているからなのだろう。
殆どの"相手"が、「綺麗だ」と「愛している」と耳元で囁きながら身体を重ね、通り過ぎていった。 そんなものなんてきっと、宥め賺して食いものにする為のトリーツにに過ぎないとしか思えなかった。
薔薇の呪いに囚われた魂は、煽られた欲を持て余す。 いっそ自分も…心にも無い愛を囁いて、身勝手な欲望を誰かにぶちまけてしまおうか。]
(435) 2011/08/05(Fri) 00時頃
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…何を、考えている。
[額を押さえて、ゆるりと頭を振った。 どうかしている。…きっと昨夜から。
昨夜、あの薔薇の木の下で…ランディに見つめられてから。
おかしい。何かがおかしい。 今はもう…自分の感情すら、信用できなくなってしまった。
ずきりと痛むのは、薔薇の棘に引き裂かれた傷。 見ればその周囲もなんだか鬱血したような色味を帯びていた。]
流石に…消毒しないと拙いか。
[ルームメイトの心配そうな忠告を思い出して、医務室へと赴く。]
(441) 2011/08/05(Fri) 00時頃
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ヴェスパタインは、食器を下げに厨房に入ろうとして………、目を伏せると隅に置いて立ち去ったようだ。
2011/08/05(Fri) 00時頃
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キスなんて別に…なんてことないだろうに。
心地良いのは認めるが。
[いくども穢れ、自ら穢しもした唇に、特別な思い入れなんてこれっぽっちもない。 粘膜に張り巡らされた敏感な神経が、そこにはあるだけだ。]
(*29) 2011/08/05(Fri) 00時頃
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[傷口を押さえた指は、真新しい赤に少し汚れた。 足早に医務室へと向かう廊下…]
…セシル、さん? [崩折れるように壁に凭れて座り込む姿は、先輩と呼ぶにはあまりに可憐な姿。
無自覚な薔薇の香りは、二人の間にふわりと流れた。]
(450) 2011/08/05(Fri) 00時半頃
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…何処か気分でも?
[どうせ元々医務室へ向かうつもりだったのだ。 ついでに連れて行くくらいは…と、そう思って手を差し伸べる。
節くれた長い指は、弦を爪弾く趣味のせいで固い。]
(454) 2011/08/05(Fri) 00時半頃
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