308 【R18】忙しい人のためのゾンビ村【RP村】
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[生き残りの人間は、居ないわけではなかった。 生きるために安全な土地を探す者も居れば、 安らかに命を絶てる場所を探す者も居た。 自分の家族がまだ生きていると信じて、 危険を顧みずにあちこちを回っている人も居た。
僕達は、生き残りの人に会うたびに、 自分たち以外の人間と話せるのが嬉しくて。 荒れた廃墟から発掘してきた食料を交換しながら 色んな話をしたし自分たちも惜しみなく情報を渡した。
情報交換を嫌がる人はいなかったけれど 皆、ここまで生き抜くために苦労してきたらしく 例外は無く、服は汚れ、憔悴しきった様子だった。]
(85) kaomozi 2020/10/27(Tue) 22時半頃
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[けれど。僅かな希望を胸に、 今まで通って来た道について尋ねれば。 全ての人は暗い目で、口を揃えて言ったのだ。]
(86) kaomozi 2020/10/27(Tue) 22時半頃
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[あの頃の平和はもう、どこにもないのだと。]
(87) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時頃
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[僕が拾った男の子は、名を理央と言った。 毎日、学校が終わったら17時になるまで、 友達と時間いっぱいまで遊ぶような子だったようだ。
僕のことを臆病者と馬鹿にしては笑ったり いつも強気で、ゾンビに挑発したりもしてたけど。 段々、生き残りの人間に会うことも少なくなり、 この世界はもう滅びるだけだと悟ってしまって。
両親や兄弟がどこかで生きている……と、 そう信じることも出来なくなってしまった彼は バイクで走っている最中に、 僕の背中に顔を押し付けて、声をあげて泣き出した。]
(88) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時頃
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[満点の星空の中。 僕は、周りにゾンビが居ないことを確かめ、 その場にバイクを止める。]
「もう、皆、ぞんびになっちゃったの? かーちゃんも、とーちゃんも、 にぃちゃんも、けーたくんも、さやちゃんも」
[背中から聞こえる問いかけの答えは、 もう、彼自身、知っているんだろう。
そのまま黙ってしまった彼を見やって、 どう答えるべきかと、考える。
嘘を言いたくは、無かった。 でも……なら、どうすればいい。]
(89) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時頃
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[冷えた風が、僕達の身体を撫でていく。
今もきっと家の中に居る兄貴を想う。 懐かしいと思ってしまうことが酷く哀しい。 僕の母親も父親も、もう。 ゾンビになってしまった。 もう、会うことはできないけれど。
(皆…………か。)
皆に共通して言えることが……あるじゃないか。 僕はバイクを下りると、理央の頭を撫ぜた。]
(90) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時頃
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…………理央。 いいもの、みせてあげるよ。 [ポケットから取り出したのは僕のスマホだ。 電源をつけても、電波を拾う気配は全くない。 ……電波についてはとっくに諦めていたし、 僕が見せたかったのは、そんな事実じゃない。
あるアプリを立ち上げて、彼に渡す。 理央は、怪訝そうな顔で僕を見たけれど、 スマホを受け取り、画面をのぞきこんだ。]
(91) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時頃
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[最初こそ、不思議そうにしてたけれど 段々と、食い入るようにそれを見つめる。 指先は画面をスクロールして行く。 それもだんだん、早くなって。
「がんばれ」とか「すごい、」とか そんな声も聞こえるようになっていき―――]
(92) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時頃
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[……端末に保存されていたSNSのログを 最後まで見終わった直後だ。 >>4:*18僕の発言のあたりで 先に進まなくなった画面に痺れをきらして]
「皆は……皆は、どうなったの!? まだ……負けてない人が、いるの?」
[もう更新されなくなったタイムラインの 続きが見たいと、興奮した様子で僕にせがむ。
「えーちゃん、絵、上手いんだね」 それから、ライブラリを勝手に開いて 保存されてた僕の絵に夢中になり始めた理央に 僕は笑って言ったんだ。]
(93) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時頃
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……ねぇ、理央。 僕の両親も、兄貴も。 理央の知ってる人も…… もうどこにもいないかもしれない。 でも。世界のどこかには――― まだ、さっき見た投稿の人達みたいに 頑張ってる人がいるかもしれない。 ほら。理央の前で、僕はまだ生きてるだろ? ……"世界中の皆"がゾンビになった訳じゃない。 まだ僕達は、生きてる。 それなら―――
(94) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時頃
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『―――僕達は僕達の生きた証を、世界に遺し続けよう。 後を通る人が、今の理央みたいに勇気を貰えるように。
大丈夫。皆じゃないよ。 僕は、ゾンビにはならない。 ずっと、理央と一緒にいてあげるから。 』
[できるかどうかわからない約束だなんて そんなことは、考えてなかった。
ただ、僕がそうしたいから、言った。 ただそれだけのことで。]
(95) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時頃
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[最初に理央と会った時のような、 情けなく震えた声なんかじゃなく。 強く凛とした声に。 彼は目をごしごしと擦って、強く頷いた。]
(96) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時半頃
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[それからは、理央の提案で。 立ち寄った町から、ゾンビに襲われかけながらも 水や食料やガソリンの他に、 生き延びるには到底節つようなものを漁って来た。]
(97) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時半頃
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[それはゾンビの濁った血の色よりも明るい、赤。] [澄み渡る晴れやかな空のような、青。] [眩しい日の光のような、黄色に。] [焼け焦げることも血を浴びることもなく生える、緑。]
(98) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時半頃
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[バイクが走り去った後には、 滅びゆくこの世界に似合わない、色が残る。
色とりどりのスプレーを使って描かれたそれは 雨にも風にも負けることなく、 永い、永い間、残り続けるだろう。]
(99) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時半頃
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[ 僕達は ゾンビに負けない ]
[ひび割れたコンクリートには そんな言葉が大きく描かれていて。
その横に、子供らしく力強いタッチの なんでも倒せそうな、怪獣と どこまでも走っていけそうなバイクの絵は
色んな場所に、色んな色で。時には形を変えて]
(100) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時半頃
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[彼らの生きた足跡のように、残って居た。]**
(101) kaomozi 2020/10/27(Tue) 23時半頃
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