191 忘却の箱
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お針子 ジリヤは、メモを貼った。
2014/09/06(Sat) 23時半頃
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──……ッ!
[息が詰まる。花の香りに締め付けられていた時とは異なる、他の力によって。
身長は相手の方が高く、自然と踵を浮かせながら。
相手の声を聞きながら、頭の中で反芻させる。 そのことに意味があるのかは分からない。けれど。]
け、さ……? 俺は…。わ、からない。
[視線を泳がす。胸が苦しいのは何故か。それも分からない。瞳は硝子玉のように相手を映しては、ただ見上げる。]
………分からねぇよ…。
[それでも胸が締め付けられるように痛むのは何故だろうか。熱に浮かされたような、視界。 揺れる花の匂いが妙に鼻を刺激して。]
(147) 2014/09/06(Sat) 23時半頃
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返せ、なんて…言われ、ても。 ……俺は、俺しか、…。
──知ら、ない。
[一言。
けれど一度揺れた瞳で彼を羨むように見つめる。 理由は分からない。きっと忘れてしまった。 だというのに、声が掠れてしまう。 頬を掴まれてしまったのなら、それは尚更で。]
──…シーシャ。
[相手の望むままに、示された名を呼ぶ。 馴染む音。子供のように、何度か舌で転がしては、呼んでみて。
上から降り注ぐ温かい雫>>144が、男の頬に落ちた。]
(148) 2014/09/07(Sun) 00時頃
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俺は、俺を…忘れたく、なんか、 …なかった。
[“忘れないで” 同じように肩を掴まれながら手渡された一本。 何よりも愛していたそれを持っていればきっと、きっとまた思い出すだろうと。
だが、思い出したとしても、それは結局記憶ではなく、記録でしかないのだと。 そう気付いたのは、いつからだったか。]
…だから、だから捨てたんだ。 何もかも。捨てて。そうすればきっと。また誰かを忘れた自分を自分なん、だって…。
思わずに、済んだ、のに。
[言葉は途切れて。 硝子玉は静かに揺れる。 ふわふわと揺れる意識の中、足元に根を下ろす蕾が、確かに一度震えて。]
(149) 2014/09/07(Sun) 00時頃
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…おやすみなさい
[足首に新たな花を咲かせようとしていた青年が 別れ際に残したものと同じ言葉が口を吐く>>117
耳でその声を聞いていない 唇がわずかに動いたことすら気づいていない
しかし、きっと"あの時"に 自分は彼女と交わした最後の言葉もそれだった
朧げながら、忘れていたはずの記憶の欠片が蘇り それと共に目から何かが零れてゆく それすらも、"あの時"と全く同じように]
(150) 2014/09/07(Sun) 00時頃
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──…あんたのせいだよ。
俺は、…俺を忘れたく、…なかった。
[枯れた根のような睫毛を伏せる。 はくり、と息を吐いて。]
“バイバイ、シーシャ”
[笑みが零れ、つま先の蕾が芽吹く。 花はそのまま、静かに微睡む。]*
(151) 2014/09/07(Sun) 00時頃
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[――聞こえた烈しい言葉>>145に、身を竦める。『怖い』。 …怖い、のは …なんで?だって。このひとはいいひとで。 ……あんな… あんな なんだっけ?
遠く遠くに置き去りにしてきたもの。 喧噪。暴力。 何故それが向けられていたのかは憶えていない。 だけど、確かに… それがあったことは なぜか、憶えている。
…だけど。その次に聞こえてきた声は…… さっきのような。声で。 >>146 だから、疑問を持たない。その豹変めいた反応にも。]
(152) 2014/09/07(Sun) 00時頃
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[ごくり。と、差し出された水を嚥下して。 『びっくりしたね』そう、聞けば。 にへ、と、驚愕と酸味で受けたダメージ分力の引かれた笑顔で返す]
…シーシャにはこのぐらいがおいしいのかも、ね。
[確か、以前聞いたような気がする。味覚が彼からなくなってる。とか。ないのであれば、おいしいもなにもないのだが。きっとそう言う事なんだと得心して。 口直しに、と差し出されたジャムとマーガリンの乗せられたパンの耳。]
ありがとう。…ズリエル、やさしいね。
[そう言って、にこりと笑って、それをもらった]
(153) 2014/09/07(Sun) 00時頃
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シー坊も、そろそろ絵を見に来る頃かね。
さあどの絵を描こうか。 この黒と青の花は、ペラジーのお嬢ちゃんだな。 今日はまだ会ってなかったな。おはよう。
そうだ、クリスのお嬢ちゃんに見せる中庭の絵はどこだったか。
[重ねられたキャンバスを、一枚。また一枚を眺めながら。 ふと、横に倒れた人物画が目に入った。>>0:53]
(154) 2014/09/07(Sun) 00時頃
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……あのこは、歌が好きだったね。 そうだろう、マーチェ。
[顔のない未完成の絵。 片膝をついて倒れたキャンバスに描かれたその輪郭を。 もうほとんど動かない右手の指先でなぞり、微笑む。
もう、顔も忘れてしまったというのに。 ただ感覚だけが覚えている、愛おしさが溢れるままに。
枯れ木のような右腕に、黄色の花が咲く。 一つ、また一つ。 倒れた絵の上に、顔を埋める様に花弁が落ちる。]
(155) 2014/09/07(Sun) 00時頃
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[ノックの音に、ゆるりと顔を持ち上げる。>>141 聞こえて来た声に目を細め。]
セシルの坊やかい? どうぞ、開いてるよ。
[クリスが一緒だとしても、穏やかにその名を呼んで招く声を掛け。 扉を開けて招き入れようと立ち上がろうとして。
足が、動かないことを知る。]
(156) 2014/09/07(Sun) 00時頃
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[目を瞬かせ。 落ちた花弁の量にようやく気付けば、再び傍らのキャンバスへと視線を戻し。 目尻にくしゃりと皺を寄せた。]
(157) 2014/09/07(Sun) 00時頃
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[ ハラリ、 ヒラリ、 ]
(158) 2014/09/07(Sun) 00時頃
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[絵に伸ばそうとした左手は届いただろうか。
扉の外の声が遠くなっていく。 ゆっくりと視界に靄がかかる中。
顔のない絵の中の 『彼女』 が微笑んだ気がした。]
(159) 2014/09/07(Sun) 00時頃
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[一向に開かない扉。 待ちくたびれたか異変に気付いたか。 彼が扉を開ければ、サァ、と白い風と共に舞う黄色の花弁が頬を撫ぜるだろう。
そこには彼が部屋を訪れた時のまま。 仲間外れの未完成の絵が床に倒れて。
ただ、違うのは。
絵に散らばる黄色の花弁と。 まるでその絵に額のように、蔓の巻きつく枯れ木と。
画材の匂いに混じる、淡い花の香りだけ。*]
(160) 2014/09/07(Sun) 00時頃
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…おやすみなさい
[中庭の花々に視線を移して呟いた]
雪の女王様…
[まだ開かれていない物語と 枯れも萎れもしない紫のスイトピーを手に 書庫へ向かった
あそこなら、多分誰もいないだろうから*]
(161) 2014/09/07(Sun) 00時頃
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