310 【R18】拗らせ病にチョコレヱト【片恋RP】
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― バレンタイン1週間前・ひとりきりの夜に ―
[探し人は見つかったか、あるいは。それから時間の経った深夜、デスクの前に腰掛けると、パソコンの電源を入れた。パスワードを入力した先のフォルダには、原稿やそれに伴う資料の一部が入っている。資料は紙の方が便利なこともあるが、データも検索の容易さという面も含めなかなか侮れない。しかし今、用があるのはこちらではなかった。カーソルは仕事用のフォルダを素通りし、その先、その奥、もっと深い階層へと潜っていく。
二重にかけられたパスワードを解除すると、『新しいフォルダ』と書かれた無名がひとつだけあった。マウスを滑らせ、指先で二度ノックする。
――その中には、恋があった。
001・002……とナンバリングだけが記されたファイルたちが何行にも渡って続いている。一番若い番号は10年以上前のものだった。母機が壊れても、何度も何度も引き継いできた想いの形だ。
一番新しいファイルを開く。眼鏡の奥にある瞳が恍惚に染まった。興奮に震える指がキーに触れて、バチリ、バチリ。 爆ぜる火花に似た音だけが響いている。]*
(2) 2021/02/14(Sun) 00時頃
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― 翌日朝・『202号室』前 ―
[夜が明けて、昨日よりも遅い朝。いつもなら就寝の迫る時間だが、今日はそうもいかない。 相変わらず空の冷蔵庫を確認し、空の腹を抱えて外に出る。手には原稿用紙をちぎった小さなメモが握られていた。そこには「202号室」と細身の文字が書かれている。引き戸を閉め、テープで固定すれば、何ともお粗末な部屋番号プレートの出来上がりだ。
以前、管理人である如月に部屋番号を記載してほしいと頼まれたことがある。どうやら配達員が引き戸の我が家を部屋だと認識できず、荷物を隣の203号室に届けてしまいそうになることがあったらしい。 その時はそんなのは1回きりだと軽くあしらったのだが、2回目はそう遠くない内に訪れた。
203号室の住人である三上はどうしたのだったか。当人からか、あるいは如月から迷子の段ボールを受け取って以降、荷物が届く日にはこうして簡易的に部屋番号を主張するようにしている。]
(3) 2021/02/14(Sun) 00時頃
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[プレートくらいなら手間ではありませんからね、と言われた。管理人としての立派な気遣いだ。それは己のためより、隣人である三上や大田のためだろう。彼女は正しい。 しかし、己は理解した上でそれを拒否した。]
俺は、此処がいいんですよ。
[あの時と同じ返答を口の中でくり返し、『朧の間』と書かれた木の板を見上げる。 ここがリノベーションされてどれくらい経っただろうか。少なくとも10年と少しの間、『朧の間』は自身だけのものだった。]*
(4) 2021/02/14(Sun) 00時頃
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地下軌道 エフは、メモを貼った。
2021/02/14(Sun) 00時半頃
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[ちょっとした回顧を終えて我に返ると、次に思案するのは荷物が届くまでの時間の潰し方だ。
到着は昼すぎから夕方でまだしばらく余裕がある。先に寝るという選択肢もあったが、途中で起こされるのはできれば避けたいところだ。それに一度目は未遂とはいえ二度目があった以上、三度目がないと言い切れる根拠はなかった。 三度目というのは本懐を遂げることもあるが、同じ轍を踏むこともある。謂わば別れ道なのだ。
選択肢を吟味していると、ふと以前のことを思い出し、三上宅と反対を向いた。202号室と間違えられることはない、2階の一番端。 もうひとりの隣人は役者をしているらしい。らしい、というのは彼が以前、チケットを手に声をかけてきた>>0:129ことがあるからだ。]
(11) 2021/02/14(Sun) 00時半頃
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[その時はちょうど〆切が迫っていて、内容を詳しく聞かないままに購入を了承していた。もし余裕があったなら、迷わず断っていたかもしれない。ある意味タイミングが良かったのだろう。 〆切を乗り越えた後、覚えのないチケットが資料の隙間から出てきた時は迷ったが、気分転換にと劇場に足を運んだ。舞台に立つ隣人の姿を見て、ようやく入手経路を思い出したなんてこともあったのだったか。
以降も〆切後タイミングがあえば舞台に足を運んでいる。 逆を言えば、仕事の執筆中は一切赴かなかった。つまり最近はすっかり足が遠のいていたのだが、さて、今は公演中だったか。
常連なんて烏滸がましいレベルの気まぐれな観客は、戸に寄りかかったまま思考を回顧から思案へと移した。]*
(12) 2021/02/14(Sun) 01時頃
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地下軌道 エフは、メモを貼った。
2021/02/14(Sun) 01時頃
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― 2階・202号室前 ―
[思案していた先の扉が開くとは思わず、ついまじまじと登場人物>>19を見つめてしまった。]
あァ、それは、まァ、そう。 さすがに2日まともなモン食わないと力抜けてきてね。
[部屋を出た一番の目的は買い出しではないが、それもまた必要なことではあった。ここ2日の食事が見知らぬ誰かの蜜柑1個となるとさすがの人間様も調子が悪くなってくるらしい。昼すぎ――今日届く荷物は昨晩注文した大量のレトルトセットだ――まで粘るのは厳しそうだと思っていた。 ちなみにデリバリーは一度で一食程度しか用意できないため、あまり利用することはない。ほら、毎回メモ貼るの面倒だし。]
そっちは……風呂ってとこか。
[手元にあるのは着替えだろうと推測できた。視線をそこに向け、根拠を示す。 こういった世間話を続けるのは、己にとって珍しいことだ。時折チケットを購入するというイベントがあるおかげで、大田とはここの住人の中でも会話する機会が多い。それでも顔を合わせる回数は常識からすれば、一切多くはない>>20のだが。]
(78) 2021/02/14(Sun) 16時頃
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……あァ、そう。今回はご縁がなかったな。 何の役だったんだっけ。たまに聞こえてたけど。
[己の職業を自ら明かすことはないが、別に秘密にしている訳でもない。必要がないから話さないだけだ。管理人である如月には事前に説明してある。家からほとんど出ず、稀に外出したと思えばド深夜なんて不審の塊だろう。共同生活において最低限の信用は重要だ。如月にも何かあれば職業を明かしていいと伝えてある。
大田が彼女から話を聞いたと知ったのは、廊下ですれ違った何てことない日だったか。記憶に残る特徴もない。強いて言うなら、雨が降っていたような気がする。 初めて舞台を鑑賞した後も、それから時折足を運ぶようになっても、己は感想を語らない。ただ行ける時に行き、行かない時は行かない。控室に顔を出すこともなく、アフタートーク含め幕が完全に閉じてから席を立つだけだ。
彼に脚本の評価を尋ねられた時>>20は、変わったことを聞くのだなと思った。合点がいったのは、小説について触れられた時だ。理由も想像できる範囲であった。あの管理人は、変わらぬ表情の下で住人をよく見ている。]
(79) 2021/02/14(Sun) 16時頃
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[――表情の変化が乏しいのは、目の前の彼もそうだ。舞台上を除いて、彼の表情筋が大きく動いたのを見たことがない気がする。 習慣めいた挨拶をする姿>>21を無言で見つめた。]
笑うことってあるの。
[それは水底から生まれた気泡のように、一瞬にして表出した疑問だった。脈絡のない言葉に最初に驚いたのは己の方だったかもしれない。片眉が僅かに跳ねた。]
……いや。 この前デカい図鑑落としたんだけど聞こえた? 早朝近くだったから、寝てたとは思うんだけど。
だから、まァ、別にいいよ。慣れたし。 お互い様でしょ。
[フォローというには些か足りない淡白さで、ひとつ前の言葉を塗り潰そうとする。否定も訂正もしない。正すものでもない。だから、黙殺する。]
(80) 2021/02/14(Sun) 16時頃
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夢を追いかけるってのは大変だねェ。 ま、今のうちに金稼いどくんだな。
[脚本の評価や書いている小説について尋ねられた時も、明確な答えは返さなかった。己が彼に関わるのは、チケットの売買とたまの世間話くらいだったか。ならば、それに準じよう。 意地の悪い一言を別れの挨拶にすると、何もなければその場を離れ、階段の方へ向かおうとした。]*
(81) 2021/02/14(Sun) 16時頃
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地下軌道 エフは、メモを貼った。
2021/02/14(Sun) 16時頃
エフは、レイはもう出勤したのだろうかと、姿の見えない廊下を眺めた。
2021/02/14(Sun) 16時半頃
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― 『軌道』 ―
[書籍化の話が出たのは、年が明けてすぐのことだった。 担当との打ち合わせはメールがほとんどだ。時々ボイスチャットで会議することもあるが、直接会う機会なんて滅多にない。そんな中、新年一発目だからと会社に呼び出された。
亀のマークが目印の書甲羅社は都心との中間にある。久々の電車に疲れ果てた姿で訪れると、年若い担当に満面の笑みで迎えられた。特別小柄ではないのだが、背後に小型犬が幻視できる。 そして告げられた話に、己はどんな表情をしていたのだろう。向かいの表情が曇った。]
別に、嫌な訳じゃないさ。 予想してなかっただけで。
[SNSも活用していない己には、感想が届く機会は少ない。ごく稀に出版社宛に届いたメールが転送されることがあるが、辺境のHPでメールアドレスを探してまで感想を送る猛者はそういないのだ。実感がない。 知らない才能を己に見出している様子の彼にお世辞はいいと一蹴するには、あまりにもまっすぐな目をしている。作家の気分を上げることも担当の仕事だというのなら、彼はきっと優秀なのだろう。背後の犬がドヤ顔しているような気がした。]
(102) 2021/02/14(Sun) 18時頃
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でも、そんな予算あるの。 この弱小出版社に。
[これは仕事だ。あるかも分からない才能だけでは成り立たない。必要なのは元手と、それを回収できる見込みだ。
話題にも上がらない作品を書店で見ただけで手に取る人間が、どれだけいるだろう。数億冊の中からたった一冊に選ばれる奇跡が、何度あるだろう。 今求められているのは奇跡を数回起こすことではなく、当たり前を何万回も繰り返させることだ。
それは彼も理解していた様子で、待ってましたと言わんばかりに企画書を出した。]
……Vtuber朗読企画?
[要するに関わりのないジャンルと組むことで、新たな客層を獲得しようという試みだろう。 とある会社>>76が主催するもののようで、候補のひとつとして会議にあげられるらしい。採用されれば、広大なネットの海に見知らぬ者の声で物語が放流される訳だ。話題性は十分。PRとして効果的だろう。]
(103) 2021/02/14(Sun) 18時頃
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なるほどね。それで呼び出された訳か。 ……いいよ、別に。好きにして。
[作品そのものを用いる以上、作家本人の許可がなければ進められないプロジェクトなのだろう。許諾すると、担当の青年は安堵の喜びに彩られた表情を浮かべた。 だからどこぞの誰か>>75が口にしたことと同じ懸念は、歯の裏にくっついたままだ。]
(104) 2021/02/14(Sun) 18時頃
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[幼馴染みの男女が共に成長していく中で芽生える恋。 友人がいる。ライバルがいる。障害もすれ違いもある。
恋は、結ばれなければならないものか。 恋は、伝えなければならないものか。 決められたものだけが、恋なのか。
ならばこの胸に残る痛みは、何だというのか。
物語は終盤に差し掛かり、抱え続けた恋心を ついに相手へ伝える場面が迫っている。
まるで最初からそうなることが決まっていたかのように 引き寄せられていく。 ここまで来たら、足を止めてもその先へ行き着くだろう。
人はそれを、運命と呼ぶのかもしれない。]
(105) 2021/02/14(Sun) 18時頃
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[――そんな、どこにでもあるような、まるい話。 角も、棘も、どこにもない。ありきたりだ、と思う。 男が作品に落とす視線は、いつも冷め切っていた。]
(106) 2021/02/14(Sun) 18時頃
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[口元が落ち着かずタバコに手を伸ばそうとしたところで、小さく舌打ちをした。その程度の抵抗では、懸念は口内にしがみついたままだ。 担当が苦笑して灰皿を勧めたが、手で制して首を振る。]
いい。人前では吸わないから。
[実際、シャツの胸ポケットは空だ。宙に浮いたままの手の着地点を探すように、担当の手元にある資料を示す。]
それ。朗読者候補? ちょーだい。
[アバターらしき写真とプロフィールが載っている。この中の誰かが己の世界に声を授けるのかもしれない。そもそも選ばれた場合の話だが。取らぬ狸のなんとやらだ。 数枚に及ぶ資料を眺めた後、三度折り畳んで空白の胸ポケットに押し込んだ。]*
(107) 2021/02/14(Sun) 18時頃
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[それから2ヶ月程過ぎ、ついに選考会議が始まるらしいと昨晩届いたメールで知った。あの時言われたもうひとつの条件は、未だ満たされていないままだというのに。
――ペンネームを決めましょう。
Fなんてアルファベットでは、作者名が数多の言葉に埋没してしまう。先生らしい名前をお願いしますね、なんて無茶を言うものだ。 別に識別さえできれば、適当でもいいだろう。
そう思うのに、何度も開かれた形跡のある三度折られた紙の前で、返信用のメール欄はずっとまっさらなままだ。
何でもいいはずだ。何でもいいはずなのに。 己はまだ、自分に名前をつけることができないでいる。]*
(109) 2021/02/14(Sun) 18時半頃
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地下軌道 エフは、メモを貼った。
2021/02/14(Sun) 18時半頃
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― 2階・202号室前 ―
そーね。 冷蔵庫に直接物が届けば、わざわざ出なくてすむし。
[彼>>97の意見には、一歩ずらした同意を返した。 “人”と比べれば食に興味がない方だが、”彼“に比べればまだ人間味がある食欲を有しているつもりだ。 まるでロボットだな。とは、続く話に飲み込まれた干渉である。]
あァ、思い出した。人食い狼の話だっけ。 じゃあ人間役の方か。
[役の説明を受け>>98、芋づる式に部屋越しに聞こえた糾弾する声を思い出した。 前情報なしで観る舞台は、彼のセリフをピースのように当てはめながら鑑賞することも多い。 あの声がどんな顔で発せられているのかは、壁を挟んでは知り得ないことだ。]
(121) 2021/02/14(Sun) 19時半頃
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[そんなことを考えていたから、本来留まるはずの干渉が一滴落ちてしまったのだろう。 片眉分の驚きさえ彼>>99の表情にはない。こちらもそれ以上反応しなければ、両者の間で黒点はなかったものとして扱われる。新たな雪が降り積もれば、いずれ完全に存在をなくしてしまうのだろう。 面のような顔を前に、こちらから目を逸らした。]
ハ、生憎とお淑やかでね。 ご期待に応えることはできそうにないかな。
[舞台上で誰かが乗り移ったような彼を見ていると、火事についても本気で気づかないのではないかと思えてくる。 彼の世界があって、外界からの何もかもを遮断しているかのようだ。]
(122) 2021/02/14(Sun) 19時半頃
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君も大概引きこもりだよねェ。
……ヤバい時は壁三発。 あとは自分で気づくといい。
[皮の下を覗く技術も気持ちもなく、彼の返答が遅れた理由を理解できないまま、背中にかけられた声>>101へ乱雑に片手を上げた。 観劇の後と同じく、振り返ることはない。]*
(123) 2021/02/14(Sun) 19時半頃
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― 海辺 ―
[日が昇り、昼が近づく。冬の晴れ間はまだどこか薄暗く感じた。空が近いからだろうか。潮風に流れていく千々の雲を眺めながら、海沿いの道を歩く。観光スポットからはやや外れた場所だからか、車通りはないに等しい。
そんな外れの砂浜に人影>>84があれば、嫌でも気づくというものだ。木を隠すのが森の中ならば、人を目立たせるのは無人の砂浜だろう。
思わず足を止め、元来た道を戻ろうかと爪先に力を込める。しかし目的のコンビニはこちらにあるのだ。商店街のカフェにしようか。逡巡と躊躇は傍目に見れば一瞬だった。]
……ハァ。
[足先は前でも後ろでもなく、斜め前へ向く。長らく磨かれていない革靴が、砂浜へと沈んだ。]
木登りの次は寒中水泳でもするの。
[十歩は離れた場所から声をかけた。もし波の音にかき消されるようならあと一歩、もう一歩。半分の五歩にでもなれば、声だけでなくタバコの匂いが存在を伝えるだろう。
マフラーを巻いて、コートのポケットに両手を入れて。革靴に収まった両足を踏みしめたまま、素足のデキるオンナを見下ろしている。]**
(129) 2021/02/14(Sun) 20時頃
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地下軌道 エフは、メモを貼った。
2021/02/14(Sun) 20時頃
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[10年以上ここに住んでいるが、海辺に足を運ぶことはそう多くはなかった。そも外に出ることが少ないのに、わざわざ窓から一望できる海に行くなんて貴重な機会を無駄にするようなものだ。 おかげで革靴では砂浜が歩きにくいことも忘れていた。足の長さに比べ、歩調は明らかに遅い。
そういえば、昨日慌てん坊>>0:114が話していたのはこの辺りのことだろうか。 飛びかかるボスに心当たりはないと思っていたのだが、ふと、あの犬のことだと気づいた。昨晩のイレギュラーが浮かぶ。]
(141) 2021/02/14(Sun) 22時頃
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― 前日・日没頃:202号室の窓際 ―
[賀東荘の前の道はぽつりぽつりと街灯が立ち並ぶばかりで、灯り自体はそう多くない。日が沈めば、途端道の先を見通せなくなる場所もある。
犬の鳴き声>>51が聞こえた。人影がある。 重ねた日常に、見失っていた時間を知る。
それだけだった。一方的な役目を終えた影ふたつは、いつもと変わらずその場を通りすぎていくのだと思っていた。 シルエットが止まる。暗闇に慣れた目には、その顔がこちらを向いたように見えた。手が上がる。揺れる。間違いなく、こちらを見ている。
こちらから手を振り返すことはしなかった。ただその形を一瞥していると分かるくらい静止した後、壁から背を離し、窓を閉じた。 残りの蜜柑を一気に口へと放る。喉の奥でひしゃげた呻き声をあげた。]*
(142) 2021/02/14(Sun) 22時頃
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― 現在・海辺 ―
[五歩分の距離が詰まり、声>>136が聞こえたところで思考を現実へ戻した。 座ったまま振り向いた美人はスマホを何か操作していたようだったが、上からとはいえその手元は見えない。]
へえ。
[素足であることは、背中ひとつでは隠せないのだが。挨拶と豆知識、そのふたつをたった二文字で片づけてしまうと、不躾な視線を傍に置かれたヒールと布の塊に向ける。]
冬なんですよね。
[同意するように言葉を繰り返した。 彼女がこのシェアハウスに住むようになって数年が経つだろうか。数件隣の彼女との交流がないに等しかったのは、ひとえに生活時間の違いが大きい。ここ2日が珍しいのだ。 もしこれまでも何度も顔を合わせる機会があったなら、木登りや寒中水泳に並ぶ何かを目撃することがあったのかもしれない。 バケツを頭から被り、徐々に濡れて色が変わっていくのを眺めている気分だった。]
……風邪ひくぞ。
[たっぷりの沈黙の後、それだけ告げて踵を返す。腹が弱々しく鳴いたからだ。寄り道している場合ではなかったし、きっと必要もなかった。くそ。 靴底をぎゅいぎゅいいわせて砂浜を脱出しようと足を動かす。]*
(143) 2021/02/14(Sun) 22時頃
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地下軌道 エフは、メモを貼った。
2021/02/14(Sun) 22時頃
エフは、ヨスガに話の続きを促した。
2021/02/14(Sun) 23時半頃
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[嘗めてはいませんが、ちょっと呆れました。
子どもの頃に褒められたことは大人になっても褒められていいと思うが、子どもの頃にできたことが大人になっても変わらずできる訳じゃない。 木登りも、冬の水遊びも、雪を素手で触って痒くなるのも、公園のブランコでどこまで遠くに飛べるか競争するのも。 酒やタバコ、車の運転など多くのことを許されるようになった分、大人には許されなくなったことだ。 と、思っている。
彼女について一番よく知っているのは、廊下ですれ違う時の背景と釣り合わない程の完璧さだったから。 これは2日に渡って突飛な行動を目撃してしまった己の、身勝手な落胆なのだ。]
(168) 2021/02/15(Mon) 00時半頃
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[自然と溢れたため息には、自分への自嘲も混じっていた。 好き勝手言われた彼女>>160>>161は言葉を失っているようだったが、所詮知り合いにも満たない男の一言などすぐに忘れてしまうだろう。 さっさと温かくしてくれればそれでいいと、背後から聞こえた声>>162にも振り返ることはなかった。]
――は?
[ >>163ばしゃん、 ]
[なかったはずなのに。 予想外の音が、予定を狂わせる。]
(169) 2021/02/15(Mon) 00時半頃
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[落ち着いた色のジャケットが中身を失って、砂の上に伏した。その向こう、穏やかな波模様に一箇所、真白い泡が立っている。 直前までそこにいた女の姿は見当たらない。]
ばっ……!
[思わず駆け出していた。躊躇より先に足先を海に突っ込むと、革靴の隙間から容赦なく海水が押し寄せてくる。途端、一歩が格段に重くなった。両足に錘をつけたような心地で膝の辺りまで海水に浸かる。ほら見ろ。冷たいじゃないか。 寒さに頭がバグったのか、このタイミングで昔彼女が扉に向かってヘドバンしていた>>165のを思い出した。]
ハ、昔からヤバいオンナじゃないか。
[忘れていたのか、わざと置いてきたのかはわからない。そんなことはどうでもいい。 一番泡立っている場所を探しながら、口元には皮肉めいた笑みが浮かんでいた。]
(170) 2021/02/15(Mon) 00時半頃
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……やっぱり、全然似てないわ。アンタ。
(171) 2021/02/15(Mon) 00時半頃
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[それからすぐ、彼女>>164の頭は海面に現れたのだったか。暫くそのまま眺めていたが、元気よく泳ぐ姿に安堵よりも脱力感が湧き上がってきた。 ざぶざぶと豪快な音を立てながら岸へ戻り、靴を逆さまにする。靴下も絞り、海水を追い出した靴に詰め込んだ。]
冬なんだよなァ。
[結局、さっきの彼女と同じ状態になってしまった。足元がずぶ濡れな分、こちらの方が分が悪いかもしれない。優勝はバケツを被るより全身ずぶ濡れになった今の彼女だが。 足裏に貼りつく砂の感触に眉を顰めながら、砂の上に残ったジャケットを見下ろした。裾が僅かに濡れたコートとマフラーをその隣に落とす。冬の潮風に舌打ちしながら、今度こそその場を後にした。]*
(174) 2021/02/15(Mon) 00時半頃
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[家が海から近くて良かった。とは、こんな場面で使うものではないだろう。 裾を捲り上げた足で帰宅を果たすと(当然裸足だ)、如月は変化の乏しい表情ながら明らかにこちらを見ていた。やめろ。今は見るな。 結局また目的地には辿り着けないまま階段を登っていく。木の床には暫く裸足の足跡が残っていたかもしれない。]
はァ……。
[全身適当に着替えて、足先はタオルで雑に拭って。全部洗濯カゴに放り込む。今から風呂に入る気にはならなかった。身体が重い。 そのままベッドへ倒れ込むと、荷物の到着を知らせる声が聞こえるまで意識を飛ばした。]**
(176) 2021/02/15(Mon) 00時半頃
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地下軌道 エフは、メモを貼った。
2021/02/15(Mon) 00時半頃
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[初恋は幼稚園の頃、同じ組の女の子に。 ――ということになっている。
その子の大事にしていたぬいぐるみを何度も奪っては泣かせていたらしい。大人たちは相手の気を引きたかっただけなのだと相手の親に説明と謝罪を重ね、当の女の子からはこれでもかと嫌われた。
本当は、あの子のぬいぐるみが欲しかっただけだ。]
(208) 2021/02/15(Mon) 18時半頃
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[それに気づいたが母が、後日こっそり同じデザインのぬいぐるみを買い与えてくれたが、物言わぬ瞳を見ても何の感情も生まれなかった。
これじゃない。これじゃあ意味がない。 どこに行くにも手を引いて、くたびれた毛並みを丁寧に梳き、眠る時に抱きしめ、何度も名前を呼んだ。アレがいい。
ただ、欲しかった。 そんなものを恋と呼ばないでほしい。
子どもであれば許されることが許されなくなった頃、誰かを泣かすような愚行をくり返すことはなくなっていた。]
(209) 2021/02/15(Mon) 18時半頃
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[己の異質に気づいたのは、もう少し大人に近づいてからのことだ。
小学校の先生が結婚すると聞いて、好きになるのが遅すぎたと嘆いたことがある。 中学で一番人気の誰かより、隣のクラスの女の子とこっそり付き合っているクラスメイトが好きだった。 いつも恋する相手とタイミングが悪いのだと、友人に嘆いていた。
高校の時に好きだったのは女子バスケ部の先輩だ。友人の応援に駆り出された時に一目惚れした。同時に、その人が男子バスケ部のキャプテンに恋をしていることも分かった。見上げる瞳も、弾む声も、上気する頬も、相手だけに与えられるすべてがこの場の何より美しかったからだ。
それでも構わなかった。いつものことだ。友人の応援と称して体育館へ赴いては不自然にならない程度に隣へ視線をやり、後ろ姿を眺めていた。
頸の綺麗な人だった。体育館2階の窓から差し込んだ光が汗の滲む肌を照らす様を見るのが好きだった。キャプテンと話す度に特別とろける唇に胸が痛んだけれど、それでも十分幸せだったから、今以上のことを望むつもりはなかった。]
(210) 2021/02/15(Mon) 18時半頃
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[彼女から告白を受けたのは半年が過ぎた頃だ。 最初はドッキリかと思ったし、キャプテンと何かあったのかと疑った。相手は首を横に振り、ただ好きになったのだと言った。
恋ってそういうものでしょう。そう言ってこちらを見る瞳はずっと手に入らないと諦め、求めてきたものだ。 運もタイミングも悪い自分に幸運が訪れたのだと頷いて、
――その日の内に別れた。]
(211) 2021/02/15(Mon) 18時半頃
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[見上げる瞳は正面から見ると中央に寄り過ぎていたし、 弾む声は近すぎる距離では耳障りな高さだった。 上気する頬は思ったより荒れていて、 別れを告げた後の唇は怒りに震え、噛み締められていた。
――もし、あの子がぬいぐるみへ興味をなくしていたら、 己は手にあるソレをどう思ったのだろう。
あの子が愛したぬいぐるみだから魅力的だったのだ。 あの子の心がぬいぐるみに向いていたから惹かれたのだ。 別の誰かのものだったから、欲しかったのだ。
左の頬が熱い。どこかへ駆けていく相手の後ろ姿を見ても、胸には喜びも痛みも訪れなかった。 怒っていたのだろう。泣いていただろうか。見ていなかったものを知る術はない。]
(212) 2021/02/15(Mon) 18時半頃
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[別の誰かのものだから美しい。欲しいと思う。 しかし手に入れてしまえば、それはもう誰かのものではない。己のものだ。何の価値もなくなってしまう。
どうか、別の誰かを見ていてほしい。愛してほしい。 手に入らないことを理解し、求め痛む胸に、 何より 恋 を実感するのだから。
10年以上を経てようやく認めた初恋は、同時に己の歪さを自覚する理由たり得てしまったのだ。]*
(213) 2021/02/15(Mon) 18時半頃
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― 夕方頃・202号室 ―
[遠くから声が聞こえる。目を開けると見慣れた木目が見えた。徐々に覚醒する意識が声の主の目的を理解する。]
あ゛い。
[足に力を込めようとすると、肌が引き攣る感覚がした。それにどことなく磯臭い気もする。理由に思い至り、誰もいない部屋で渋面をつくった。そのまま引き戸を開け、若干怯えている様子の配達員から荷物を受け取る。]
……お疲れさま。
[段ボールは巨大で、中身がレトルト中心となれば重量もそこそこあった。階段を上るのも一苦労だっただろう。歪でも常識はある。労いの言葉をかけると、配達員は幾分か表情を和らげ、一礼して去っていった。その頭が階段の下に消えるのを待ってから息を吐く。]
まずは風呂……いや、飯か。 とりあえず水開けて……あァ、もういいな。
[引き戸に貼りつけていた原稿用紙を剥がす。そのまま隣の203号室へ視線を向けた。思い返すのは今朝の出来事だ。]
(216) 2021/02/15(Mon) 18時半頃
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― 朝・202号室前 ―
[203号室の三上>>184と顔を合わせたのは、大田>>19と鉢合わせるより前だっただろうか。賀東荘の住人は朝から活動を始める者が多いらしい。彼の視線が己を越え、後ろの戸に向くのが分かった。]
まァ、そんなところ。
[部屋番号プレートをつける気がない以上、今後も貫くつもりの対応を応急処置と呼んでいいのかは迷うところだが、そこは重要ではないだろう。一言と共に頷く。]
今回は前よりデカいから、間違わないかもしれんがね。
[先日注文したのも水やレトルト食品といったものだった。いつもならまとめ買いするところだが、注文数を間違え、小包程度に収まってしまったのがまずかった。三上>>185が疑問を抱く前に受け取らせてしまい、我が家の食料は空っぽだ。 喫茶店の店主を務める彼とは生活時間がまったく合わず、管理人の如月を通して荷物を受け取ったのだったか。そのお詫びの焼き菓子もまた、如月を通じて贈られた。だから、荷物の件について直接話すのはこれが初めてかもしれない。]
(218) 2021/02/15(Mon) 18時半頃
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ハ。そこまでさせるなら、さすがに部屋番号つけるよ。 俺の小っぽけなこだわりに、 三上さんを巻き込む訳にはいかないしね。
[彼は今日も店に行くのだろうか。自身がここに越してきた10年以上前は、あの店は老人が経営していた。いつの間にかバイトの青年が店主に変わっていて、それが隣人であると気づいたのはいつだっただろう。 外出の少なさと活動時間の関係で訪れる機会は少ない。それでもプロットが詰まった時などは、昔も今も角の席を陣取って長時間粘ることがごくごく稀にあった。]
いってらっしゃい、二代目。
[洗面所の方へ向かう背>>186に、少し早めの見送りを伝えたのだった。]*
(220) 2021/02/15(Mon) 18時半頃
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― 夕方頃・202号室 ―
[段ボールを簡易キッチンの足元へ運ぶ。適当にガムテープを引き剥がすと、水のペットボトルを一本取り出した。ぼんやりした身体の中心を水が通り抜けていくのが分かる。 乾燥わかめの気持ちを味わいながらずるずると座り込み、膝に頭を押し当て、身体の底から息を吐き出した。
懐かしい夢を見た。 最近はとんと見なくなっていたが、原因は想像がつく。
――美しいものを、見たからだ。]
(222) 2021/02/15(Mon) 18時半頃
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― 回想:2年前・恋に落ちた日 ―
[賀東荘のロビーはいつも管理人である如月によって様々な花が生けられ、その時々によって色を変えるが、唯一同じ色を湛える場所がある。玄関を抜けた先、中央から少し逸れて風や日光が直接当たらないそこ>>114には、1年中冬が訪れていた。 入居当時からある絵画らしいが、残念ながら記憶にない。その存在を知ったのは2年前、視線の案内を受けてからだ。
熱のない瞳>>117だった。 ともすれば興味がないようにも思える。
それなのにどうしようもなく目が離せないのは、いつも己の世界に入り込む印象のある彼が、相手の世界に引き寄せられているように見えるからだろう。
真正面から見据えればまた感じることがあるのかもしれないが、それは叶えられない。 元より、己を定めてまっすぐ見つめられるのは苦手>>122>>142なのだ。]
(224) 2021/02/15(Mon) 18時半頃
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[永遠に目を逸らさないでほしいと思った。 絶対に振り向かないでほしいと思った。
だから、これは確かに 恋 なのだ。]*
(225) 2021/02/15(Mon) 19時頃
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― 昼頃・賀東荘ロビー ―
[海から戻って来た時、ロビーには如月のほかに大田>>177の姿もあった。またあの絵画を見ていたのだろう。遭遇自体は少ないが、彼の定位置くらいは分かる。
己のせいで、彼の視線が逸れたことが気に食わなかった。 無意識の了承>>12がいけなかったのか。 望まぬ干渉を自ら投じてしまった>>80ことが悪いのか。 理由はなんであれ、自業自得の結果だ。
美しいまま、欲望と痛みだけを与えてほしいのに。
苛立ちは子ども染みた行為に男を促す。突き刺さる視線も耳に届いた疑問>>178も気づかないフリをして、一度も視線を向けることなく階段に足をかけた。]*
(226) 2021/02/15(Mon) 19時頃
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― 夕方頃・202号室 ―
[いつの間にか水はペットボトルの半分まで減っていた。いつまでも座り込んでいる訳にはいかない。タオルで拭っただけの膝下は、乾いた潮で今にもひび割れそうだった。
窓の外を見る。海には誰かいただろうか。少なくとも、日中とはいえ真冬に海に飛び込んだヤバいヤツ>>164はもういないはずだ。 荷物も見当たらないようだったから、あのまま海から戻れなくなったなんてことはなかったのだろう。救出者>>223の存在は知る由もない。
勝手に入ったのだから、勝手に帰るのもこちらの自由だ。それでも安堵が吐息に滲む。舌打ちをした。]
(227) 2021/02/15(Mon) 19時頃
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[圷の家は地方の地主で、祖父の代に立ち上げた会社が成功し、そこそこの企業となった。今は父が跡を継ぎ、祖父に劣らぬ手腕で事業を拡大しているらしい。 らしい、というのは己が一切関わっていないからで、関わっていないのは、生まれた時にはもう8歳上の兄が後継に決まっていたからだ。
不満はなかった。もしかしたら幼い頃には何かしらの抵抗をしたのかもしれないが、少なくとも物心ついてから反発した記憶がない。 諦めているのかと憤る人がいた。賢いねと感心する人もいた。しかしそのどちらでもなかった。
兄は優秀な人で、その上でできた人間だった。期待を一心に受けるのは重圧だろうに、適度にガス抜きもできる器用さを持っていた。何より、弟である己に優しかったのだ。
憧れだった。己の歪を自覚して以降、兄の完璧さは時として劣等感を煽ったが、それでも兄を厭う理由にはならなかった。 背筋を伸ばし堂々と歩く姿は、どうしようもない己の誇りだった。]
(228) 2021/02/15(Mon) 19時頃
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[――敷波は、兄に少しだけ似ていた。 似ている、と思っていた。
この膝下は表層の皮しか見ていなかった自分への報いだ。 しかし全身を濡らした彼女には何の罪もない。海岸に残してきたコートとマフラー>>174は、身勝手な男の捻くれた謝罪の形なのだ。]**
(229) 2021/02/15(Mon) 19時頃
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地下軌道 エフは、メモを貼った。
2021/02/15(Mon) 19時頃
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― 夕暮れ・男湯 ―
[夕方の温泉は空いていた。 日中働く社会人は残業と定時の狭間で戦っている頃だろうし、昼間に利用した誰かがいたとしても、既に出た後だろう。旅館時代から引き継がれている男湯の暖簾をくぐる。
塩まみれの足を洗いながら、まるで自分が塩の塊になったような心地がした。このまま湯を当て続けていれば、いつか全部溶けてなくなってしまうのではないか――。
なんて、考えるような繊細さは持ち合わせていない。 黙々と己の惨敗を洗い流し、清めた身体を湯に沈めた。]
(262) 2021/02/15(Mon) 22時頃
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[意識していなければ聞こえなかった疑問>>240は、答える側が受け取らない限り何にもなれないまま消えていく。残るのは、名前のない痛みと一瞬だけ出逢えた甘露の景色だ。
静かな目が額縁の内側だけを捉え、離さない。彼と彼の視線が繋ぐ絵画。ふたりきりの世界はまるでひとつの作品だ。あの瞬間、あの場所は永遠になる。
この2年で、何度遭遇できただろう。もっと外に出れば遭遇する機会が増えるという心を嗜める。彼に近づけばより鮮明に触れられると囁く頭を否定した。 飢えるくらいでいい。渇いて焦がれるくらいがいい。遠く冷えた線引きの向こう、届かない相手を想うこの時間の何と幸せなことか。
欲しいのに、手に入らない。 だからずっと欲しいままでいられる。 彼らが完結した永遠なら、己の恋は未完の恒久なのだ。]
……たまんないね。
[湯気に充てられたか、吐く息が湿り気を帯びた。生唾を飲み込んだ喉が上下する。震える足先で湯を脱し、その場を離れた。]*
(263) 2021/02/15(Mon) 22時頃
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― 夜・2階廊下 ―
[長湯している間に、すっかり日が沈んでしまったようだ。大きくとられた窓の向こうは黒く塗りつぶされつつあり、犬と共に通りすぎる男も体温を奪うだけの海ももう見えない。
髪もろくに乾かさないせいで、肩にかけたタオルが湿っていく。耳の縁に垂れる水はすっかり冷え切っていた。ベタつくサンダルを剥がすようにゆっくりとした歩調で自室へ向かっていると、小柄な影>>239が視界に入ったのだったか。
手には己がここ2日辿り着くことすらできなかったコンビニの袋がある。 そういえば、春日井>>0:41がバレンタインフェアをやっているなんて話していた。彼女のご多分に漏れずチョコレートでも仕入れてきたのだろうか。思わずまじまじと手元を見つめてしまった。]*
(265) 2021/02/15(Mon) 22時頃
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地下軌道 エフは、メモを貼った。
2021/02/15(Mon) 22時半頃
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― 夜・2階廊下→202号室 ―
[205号室の彼女とは、結局すれ違う以上のことはなかったのだったか。
両隣の大田・三上ならともかく、数部屋先ともなれば、たとえ近くとも付き合いは減る。それでも自宅で仕事をしているのか、出勤する社会人とは遭遇しない時間に姿を見かけることもあったかもしれない。
今日はそれが常識的な夜の時間だった。それだけのこと。 コンビニ袋の中身は不明なまま、自室の戸を引く。]
……。
[着替えやらを適当に放った後、すぐデスクへ腰掛けた。 息が荒くなるのが分かる。震える指で何度も打ったパスワードを繰り返し、深層へと潜っていった。 新しいファイルを作成する辺りになると、脳の奥から熱が溢れ出るような感覚に眩暈がした。潤んで揺れる瞳を落ち着かせるように、何度か深呼吸する。]
(310) 2021/02/16(Tue) 00時頃
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[キーボードは音が大きいタイプのものを好んだ。その方が打ち込んでいる感覚が強いし、火花に似た音がいい。何度か打ち心地を確かめるように、適当なキーを叩いた。
1つ古いファイルは暫く前のもので、観劇した時の話が描かれている。「COFFEE NARUMI」で偶然あった日>>289の話もあれば、壁越しに聞こえた台詞について書かれたものもあった。 文体もバラバラで、エッセイのような時もあれば、たった数行で途切れたような散文も並ぶ。 その中でも共通して熱量が高いのは、あの絵と彼を見た時の文章だ。
彼の世界ごと、恋を文字に閉じ込めてしまおう。
長い夜になる。ざらつく喉を唾液が通り過ぎていった。 眼鏡のレンズに、電子光が反射している。]*
(311) 2021/02/16(Tue) 00時頃
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地下軌道 エフは、メモを貼った。
2021/02/16(Tue) 00時頃
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