191 忘却の箱
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[中庭で見つけた青い鳥を撫でてから おもむろに、一輪だけそっと手折る
ドレスの袖口の紫の花を拾い上げ 二輪を合わせて、口づけた
廊下に視線を移せば、金色の妖精は 見知った顔の青年と何かを二人で話してて>>5:45
青年の様子を見れば>>5:51 まるで、遠足を前に喜ぶ子どものよう そのまま、二人は楽しげにどこかへ向かった]
(0) Arianrhod 2014/09/13(Sat) 01時頃
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…先生、この花を咲かせた方の「物語」は どんなものでしょうか? どこかにありますか?
[その後、診察室のスティーブンに 花が増えたことを伝えてから、そう問うと
>>3:154>>3:156 誰へともなく宛てた言葉の記された 一冊の手帳を手渡され、それに目を通す]
ありがとう、ございます
[返す時、>>0紫と青の二輪を添えて]
(1) Arianrhod 2014/09/13(Sat) 01時半頃
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これをそのページに挟んでください 栞代わりの押し花に…素敵でしょ?
[と、小首を傾げた]
あと、さっき廊下で金色の妖精さんと もうひとり…誰だったかしら?
二人がとっても楽しそうだったの 遠足でも行くのかしら?
[それに彼が慌てるようならほほ笑み返して こうたしなめておく]
(2) Arianrhod 2014/09/13(Sat) 01時半頃
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多分、大丈夫な気がするわ だって…おうちに帰るまでが「遠足」でしょ?
[珍しく、くすりと笑いながら*]
(3) Arianrhod 2014/09/13(Sat) 01時半頃
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[その晩、中庭に若い林檎の木が増えた 人の姿の頃の名残りを探すなら 両腕を伸ばした姿に見えなくもない
その左手と思わしき枝の先には 宿り木とはまた違う紫苑が生い咲いて まるでアメジストの婚約指輪のごとく>>5:86
それから程なく屋上からひとり 花を咲かせて、羽ばたいた
その宿主がかつて原書の「雪の女王」を 差し出したのを>>5:71>>5:72覚えているのは 書庫に飾られた絵の花たちだけ*]
(4) Arianrhod 2014/09/13(Sat) 02時頃
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[その時は、突然訪れた 朝、目覚めてすぐに机の上に活けていた花を 書き終えた日記のページにしっかり挟んだ
その足は、迷うことなく階段へ 最上階に作られた、天窓のあるペントハウスへ
白く塗られた金属の螺旋階段を登って目指す ぐるりと円を描いて上へ上へと向かう様は さながら、天へ伸びゆく蔓のごとく]
(5) Arianrhod 2014/09/13(Sat) 04時頃
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ご機嫌よう…気紛れな蝶々さん
[天窓の部屋についたなら、ふわりとほほ笑み ひらりと舞う蝶へ手を延ばす
翡翠に似た碧の羽をはためかせ 宙に舞っていた蝶は、その指先に留まった
指先には棘のある蔓が螺旋を描いて絡まって 葉と、いくつもの蕾が現れて 天へ向かって伸びてゆく
陽の光を浴びて、葉は広がり 蕾は膨らみ色づき開いてゆく
その色は、目が覚めるような深い青]
(6) Arianrhod 2014/09/13(Sat) 04時頃
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…夢が叶う?
[初めて咲いた、青い薔薇は空のような色だった その花が咲いた時 ひととして生きる希望がなくなった
母や自分や飼っていた黒猫の名前すら それぞれ、混ざり平然と呼び間違う父親
彼にとって自分以外は全て同じ 自分の望みを叶える道具、ただ家にいて 彼の望むがままに笑えばいいだけのお人形
そうあれと、自分や母の言葉などないのだと 心身への暴力を与えていい聞かせていた日常は この病で、皮肉な崩壊を迎えた]
(7) Arianrhod 2014/09/13(Sat) 04時半頃
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[母は吹雪の夜に白い薔薇となった それを看取ってすぐのこと 青い薔薇は咲き、花弁は風に散っていった
次に咲いた薄桃色の薔薇は 何がきっかけで咲いて枯れたか すでに、誰にも分からない]
(8) Arianrhod 2014/09/13(Sat) 05時頃
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[その次に咲いた黒い薔薇は 父を手にかけたと同時に根腐れを起こして消えた
自分が生まれた時から死んでいるのだと 自分は生を受けたことから その家で生きていくのに必要なものは全て 自身が与えたもの 故に生きていない、生きる権利すらないお人形
だから、心すらも持つ権利などないのだといい放ち 従わない母や自分へ、平然と暴力でねじ伏せていた
どこかの誰かの借り物の論理で自身を纏い 価値観すらも、お仕着せだけの身勝手な
──すでに記憶からも葬り去った男と共に]
(9) Arianrhod 2014/09/13(Sat) 05時頃
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[その後に赤い薔薇が芽吹き咲いたのは ここに来る少し前
憂い、嘆き、憎悪、怒り、それから絶望 黒い薔薇と共にそれらも失って 年老いた黒猫と穏やかな日々が訪れてから
しかし、母はとうに亡くしていたし 父親からは、それを受け取れなかった故に それを知ることは出来ず、与えることも出来ず
花は咲き切ることが叶わず 芽生えるその時を待つしかなかった]
(10) Arianrhod 2014/09/13(Sat) 05時半頃
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今日はとても気分がいいの
[指先の蝶に語りかける]
空は青いし、気持ちいいわ
[天窓から降り注ぐ陽射しを浴びて 伸びをする猫のように、あくびをひとつ]
ふふっ、お行儀悪いけど
[腰を下ろしてから、ころんと横になる 指先から離れた蝶は見下ろすように飛ぶ]
(11) Arianrhod 2014/09/13(Sat) 05時半頃
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[蝶を見つめたのは、ほんの一瞬 そっと目を閉じて口ずさむのは書庫で歌った恋の唄]
Parsley, sage, rosemary and thyme…
[唄は少しずつ、記憶から薄れてゆき 螺子の切れたオルゴールのように旋律は緩やかに それも途切れた頃合いに、ぽつりとつぶやいた
そのつぶやきを聞いていたのは──碧い蝶々だけ*]
(12) Arianrhod 2014/09/13(Sat) 05時半頃
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[左手に赤い花、右手には藍の花 心臓の位置から紫の花を咲かせた蔓薔薇が ペントハウスに現れた日
『ご機嫌よう、私の青い鳥』
最後にそう書かれ 紫のスイトピーが挟まれた日記帳が 宿主の部屋から発見される
その日記帳は、今は書庫で眠る 誰かに、読まれるのを*待つ「物語」として*]
(13) Arianrhod 2014/09/13(Sat) 06時頃
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