86 「磊落の斑猫亭」より
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記者 イアンは、メモを貼った。
helmut 2012/04/18(Wed) 00時頃
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―回想(>>3:+0>>3:+1>>3:+2)―
[眠れぬ獣の耳がピクと反応を示す。 静まり返った廊下から足音が聞こえた。 伏せていた獣はのそりと立ち上がり 音と気配を消して部屋を抜け出す。 階段を下りてゆくのが誰なのかは知らなかった。 ひたりひたり、距離をつめてゆく。 地下に続く階段をゆくその人物が何かに気付いたように 顔を上げるのが、夜目利く双眸に映りこむ]
――…ッ!
[気取られたと思うと同時に前足が地を蹴る。 大きく裂けた獣の口が急所である喉に喰らいついた。 鋭い牙を突き立てた所で其れがラルフであったことを知る。 音になりきらぬ悲鳴は喉を潰してしまったからか]
(0) helmut 2012/04/18(Wed) 01時半頃
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[口腔を満たす鮮血の甘さに酔うように 豊かな毛並みもつ獣がクツリと喉を鳴らした。 愉悦の色を湛え弧を描く双眸も この暗さでは彼には見えぬだろうか。 見えたとしても獣とイアンを繋げる要素は少ない。 あるとすれば、喉を鳴らし笑う、あの音と声くらい。 飢えと渇きを満たそうと獣の舌がラルフの傷口をなぞりゆく]
――…。
[コクリと嚥下する音が地下に響いた]
(1) helmut 2012/04/18(Wed) 01時半頃
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ラルフ。 夜更けに一人で出歩くと人狼に襲われるよ。
[ラルフを解放した獣が人の言葉でそう囁く。 転げ落ちてゆく彼の耳に届くはイアンの声。 獣は物言わぬ獲物の姿を暫し見下ろして 薄い笑みを浮かべてみせた**]
(2) helmut 2012/04/18(Wed) 01時半頃
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―回想―
[この村を出て一年が経った頃。 夢見草が咲くこの時期に斑猫亭を訪れた。 宿の女主人に戻ってきたことをからかわれもしたが 花を見にきただけだと言い張ってやり過ごした。 姉であるピッパに恋人が出来たという噂はそのとき耳にした。 女主人に詳しく教えて欲しいと頼めば ジェフという名の男がそうなのだと彼女は言った]
――…ああ。 そういえばそんな名の男が居たっけ。
[その程度の認識だった。 けれどその時から、ジェフを意識するようになる]
(3) helmut 2012/04/18(Wed) 02時半頃
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[ジェフがどんな人間なのか知る為に 村のおばさま方の井戸端会議に混じり情報を集めた。 姉さんの恋人が気になるんだね、と笑われてしまったけれど 否定はせずに曖昧に笑っていた]
二人は、仲、いいんですね。
[話しを聞き終えればそう感想を漏らして 彼女らに礼の言葉を向けた]
(4) helmut 2012/04/18(Wed) 02時半頃
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[何も考えず村を歩いていれば いつのまにか実家の前にきていた。 門の前で男は立ち尽くす]
姉さん、まだ怒ってるかな。
[其処から家の中までは窺い知れない。 ふるりと首を振り]
恋人が出来たんだから 僕のことなんてもう忘れてるかな。
[肩を竦め自嘲的な笑みを浮かべ、男は立ち去る]
(5) helmut 2012/04/18(Wed) 02時半頃
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[毎年毎年、欠かさず夢見草が咲く度、故郷に帰る。 実家にいる家族に会いにはいかなかった。 遠目に実家を眺め懐かしむくらい。
十年目の今年も例年通りのはずだった。 家族の無事を確認して会わずに帰るつもりだった。 或る日、実家の前に二つの人影を見た。 姉であるピッパと親しげな男の姿がイアンの双眸に映りこむ]
嗚呼。
[ジェフの顔は知っていたけれど 彼が姉の恋人であることも知っていたけれど 実際二人が並んでいる姿をみるのは初めてだった]
確かに似合いの二人だな。
[感情のこもらぬ言葉がその口から零れる]
(6) helmut 2012/04/18(Wed) 02時半頃
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[芽生えた殺意。
ジェフとヒューが人狼に襲われるのは
その夜のことだった――**]
(7) helmut 2012/04/18(Wed) 02時半頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
helmut 2012/04/18(Wed) 02時半頃
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―磊落の斑猫亭/受付―
[ピッパの手にあるナイフが煌く。 風を切りヒューの喉を裂いた銀が 彼女の細く白い喉元に突き刺さる。
イアンにとっては悪夢のような光景だった。 夢であったならどれほどよかったか知れない]
――姉さん!!
[周りに人がいるのも構わずその名を叫んだ]
(28) helmut 2012/04/18(Wed) 23時半頃
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[床に倒れ、伏したピッパの傍らに膝をつき、仰向けに抱き支える]
姉さん、如何して
[ナイフを抜けば更に血が溢れるだろうと知れるから それに触れることは出来なかった。 今にも泣きそうに歪んだ顔が姉に向けられる]
こんな莫迦な真似するなんて 如何かしてる……ッ 自分で死を選ぶなんて
……なん、で
[考えれば分かるはずの疑問。 考えたくなくて分かりたくなくて分からないふりをして問う言葉を繰り返した]
(29) helmut 2012/04/18(Wed) 23時半頃
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……逝くな!
姉さん、逝っちゃダメだ。
[悲愴な面持ちで縋る想いで 白から赤に染まりゆく姉の躯を抱き締めた**]
(30) helmut 2012/04/18(Wed) 23時半頃
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[男の左手がピッパのナイフを握り締める。 薄い皮膚は容易く裂けて 人狼の血が銀を伝い人間の血と混じりあう]
――…、
[近くで同胞らしき存在が女を狩る音が聞こえていたが 全く気に留めぬ様子で姉だけを見詰めていた。 ぬくもりが徐々に失われてゆくを感じる。 きょうだいなのだから同じだけの治癒力があれば良いのに。 そんなことを思いながらナイフを引き抜き 男はピッパの首筋に顔をうずめた]
(35) helmut 2012/04/19(Thu) 00時頃
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[ぴちゃ、と濡れた音が耳朶に触れる。 獣がするように傷口を舐めるは 傷負うた者を癒したいと思うがゆえ]
折角、また会えたのに こんな形で別れるなんて
イヤだよ、 姉さん……
[顔をあげて嗚咽を堪えながら呼びかける。 男の眸から零れた一滴がピッパの頬へと落ちた**]
(36) helmut 2012/04/19(Thu) 00時頃
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[磊落の斑猫亭は死の匂いに満ちていた。 食餌を終えたペラジーが再び人へと戻り 聞きなれた片言が聞こえる]
――居ない。
[ぽつ、と同じ言葉を繰り返し]
まだ衛士が見張ってる。 出ていくなら十分気をつけて。 旅の無事を祈ってる。
[東の国で彼女が待ち人に会える事を願う**]
(39) helmut 2012/04/19(Thu) 02時頃
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―回想/召集が掛かる数日前―
[薄暗い森の中。 姉の恋人である男が部下を連れて歩いていた。 森の奥へ入っていくその後ろを ひと際大きな狼が息を潜めてついてゆく。
一人ならば問題ないが 二人ならば騒ぎになる可能性が高くなる。 分かっていてもこれ以上の機会は廻ってこないだろう。
前をゆく二人が崖近くに差し掛かるタイミングで 狼は茂みから飛び出し他を威圧するように哮る。
二人の表情を見据えた獣が 嗤った]
(40) helmut 2012/04/19(Thu) 22時頃
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[逃げ出す獲物が二手に別れる。 ジェフがヒューと呼んでいた彼を追い掛けた。 足を縺れさせた彼の背に飛び掛り地に押し倒す。 その体に鋭い爪が浅い傷をつけた。 逃げようともがく男の抵抗に、怯んだ振りして一旦離れる。 そのまま先に行けば、崖がある。
狼は、早く行け、と追い立てるように、大きく吼えた]
(41) helmut 2012/04/19(Thu) 22時頃
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[男が崖にのまれるのと 背後で茂みが揺れる音がするのと同時だった。
獣が部下を追うのに気付いたジェフが 部下を助けるため、駆けつけたらしかった。
獲物がわざわざやってきた事に 狼は嗜虐的な笑みを浮かべた]
(42) helmut 2012/04/19(Thu) 22時頃
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――…真っ直ぐ村に走れば 若しかしたら助かったかもしれないのに。
莫迦だなァ。
[狼は嘲笑を滲ませ語りかける。 獲物は酷く驚いたようだった。 “人狼”と獲物が呟くを見て 狼は彼に飛び掛り凶器にしかなりえぬ爪が肩を抉る。 ぎらつく狼の双眸は獲物を見据え 半ば開かれた口の間から鋭い牙を覗かせる]
彼女の弟が態々挨拶に来たのに あんな風に逃げるなんて酷いよ、義兄さん。
[囁きはからかうような響きの中に憎悪が入り混じる]
(43) helmut 2012/04/19(Thu) 22時頃
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[逃げられぬように足を潰す。 痛みに耐えかねたかくぐもる悲鳴が喉から漏れていた。 腕に喰らいつき眼差しを獲物の顔に向けた。 甚振るように喰い込む牙と肉の赤を見せ付けて]
この手が姉さんに触れていたと思うと――…
虫唾が走る。
[獲物の啼き声を聞きながら反対の腕も同じように絶つ]
(44) helmut 2012/04/19(Thu) 22時頃
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まだ、始まったばかり。 十年分の“挨拶”――… もちろん、受けて呉れるよね。
[漸く手に入れた玩具を 事切れるまで甚振り続ける。
やがて其処に残されるは 原型を留めぬ襤褸のようになった姉の恋人だったモノ**]
(45) helmut 2012/04/19(Thu) 22時頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
helmut 2012/04/19(Thu) 22時頃
イアンは、ラディスラヴァと猫に和んだ。
helmut 2012/04/19(Thu) 23時半頃
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