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【人】 発明家 源蔵村でいくものが、弔いをおろそかにして、どうする (108) 2017/11/30(Thu) 02時半頃 |
まだ、豚に食べられている**
―― 最期 ――
……あ、
[からん、と櫻子の脳髄を掬った匙を床に落とす。
胸を押さえる。苦しい。頭が真っ白になる。
どこか遠くで志乃の笑い声を聞いた気がした。
気付いたときには、顔面を思い切り蹴られ、
無様に床に転がっていた。
痛みさえ、もう、感じない]
ちが……わた……
[私の言葉は、形を結ぶことはない。
志乃の台詞を否定しようにも、唇が震えて、
掠れた囁きしか漏らすことができなかった]
[不意に、身体が軽くなる。温かな感触。
あれほど焦がれた父に抱かれていることに気付くのに
しばしの時間を要した。
父の問いが、私の耳朶を優しくくすぐった。
首肯しようにも、もう指一本動かすことができない]
……とう……さ……、
[つ、と一筋の涙が頬を伝う。
父の期待に応えることができなかった。
姉の自慢の妹でいることはできなかった。
――自分は、出来損ないの巫女であった]
[寒くて、つらくて、悔しくて、悲しくて、寂しくて。
でも、その事実は覆しようがなくって。
涙は止まることがない。
今はただ、父の温かさに縋りたかった。
幼子のように親のぬくもりを求め、
最後の力を振り絞り、冷えつつある唇を震わせた]
……わた……、と……よか、
[喉から漏れる細い息にも似たその囁きは、
父の耳に届いたかは分からない。
けれど、伝えなければならなかったのだ。
私が再び生まれ変われるかは分からない。
だからどうしても、死ぬ前に、今伝えなければ。
そっと瞳を閉じる。
父のぬくもりを感じながら、私は意識を手放した]
(――私は、父さんの娘に生まれて、良かった*)
―― 風 ――
[びゅうびゅうと、肌に突き刺すような鋭い風が
音を立てて村を駆け巡るのでございます]
許さない。
赦さない。
ユルサナイ。
ゆるさない。
[巫女の怨嗟は風となって、吹きすさびます。
きっとその声が、誰かの耳に届くことはないでしょう]
[不意に、その風が形を結びます。
そこにいたのは黒衣の巫女でございました。
彼女は自分自身を弔っているのです。
瞳から血の涙を流しながら、
乾いた唇から漏れるのは怨嗟の言葉。
幽鬼のごとき形相で、
自分を殺めた生者の女に囁くのでございます
……私がニセモノ?
あははははは、おかしい。
そう信じたいだけなのね。可哀相な志乃。
[その艶めかしい指先が、志乃の頬をなぞります]
[生前の慈悲深き姿は其処にはなく
ただ呪いを吐き続ける悪霊がありました]
あなたが普通に死ねると思わないことね。
のろってやる、のろってやる、のろってやる。
祟り続けて呪い殺してやる。
死した魂すら輪廻転生させてやるものか。
絶対に、ゆるさない――……
[そうして吹きすさぶ風に、巫女の声は溶けてゆき
やがてその姿は霧散したのでございます*]
―― 光 ――
ねえ、どうして姉さんは
そんなに怖いお顔をしているの?
[
その少女の姿は、誰の目に映ることもありません。
巫女になる前のゆりの姿。
姉とふたりでひとつだった頃。
人生でいちばん幸せだったときのうつしみ。
そして今は過ぎ去りし残像。
くるくると少女は表情を変えながら、
届かない言葉を姉に送り続けるのです]
おかしな姉さん。
何をそんなに怒っているのかしら。
何をそんなに悲しんでいるのかしら。
姉さんは笑っているのがいちばんだわ。
だって巫女さまはいつも笑っているものでしょう?
[その声は、何も知らぬ少女そのもので]
私は、姉さんの笑顔が好きだわ。
[向日葵のような笑顔は誰に届くこともなく、
そして風に吹かれるがまま
光のように一瞬で霧散するのです**]
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―― 風 ――
ああ、どこにいるのかしら。
ずっと探しているのに。
私の可愛い可愛い櫻子――……
[風が村に吹きすさびます。
そこに混じるのは子を探す母の声。
慈悲深き女の声**]
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【人】 樫の樹の子ら リツ―畑― (109) 2017/11/30(Thu) 19時半頃 |
【人】 樫の樹の子ら リツ 今日は集会場に来てないようだったから迎えに来たんだ (110) 2017/11/30(Thu) 19時半頃 |
【人】 FSM団 ミナカタ ー 薬師の弟子の話 − (111) 2017/11/30(Thu) 21時頃 |
【人】 FSM団 ミナカタ[誰に?と重ねても、木漏れ陽の様な微笑を (113) 2017/11/30(Thu) 21時頃 |
― ―
『……次の者、前へ』
――――――――はい
『お主の名は、テ…………
??テレジア?? 加藤 江津子だと?』
――――――――はい
『……内議に入る故、沙汰があるまで、
いったん、ちょっと戻っておれ』
――――――――――――えっ
― ―
―夜/豚小屋―
[気がつくと この場所に立ちすくみ、
豚に貪られる自分の亡骸を見つめていた
荒い鼻息と咀嚼音に埋もれながら、
抜け殻となった自分の体が、家畜に押される度に、
ゆさり、ゆさりと小さく揺れている]
……運命の時が、訪れたのですね
[自分が死んでいることは理解できた
ミナカタに殺されたことも、覚えていた
その後、一瞬、妙な光景に触れたような気もするけれど、
それはきっと、ただの幻覚だったのだろう
自分は死んで、異なるものとして今ここに――――]
容さん ご無事でしょうか
[今すぐ、任に戻り探さなければと思った
ゆりにも、命の失敗を告げるとともに、
ミナカタという脅威がいることを報告しなければならない
若いリツは、今、どうしていることだろう
血気盛んな彼
彼に身にも危険が及ぶのかもしれない
ですが、きっともう、何もできないんですよね
[貪られていく肉体が、それを証明している
きっともう、何かを伝えることも、
誰かと触れ合うことも、できないのだろう、と]
ごゆっくり、お召し上がりください
[豚たちにそう告げて、小屋の隅に座り込む
これが敬意>>*15だとは思わなかったが、
今さらじたばたと足掻いたところで、
何かが変わるとも、思えない
ただ、これから先を生きる者たちに、祈りを捧げる]
みなさん、どうかご無事で
[体から離れることも、不思議とできず
だから、せめてこの言葉と共に両手を組み、
1人、長い、長い夜を過ごしたのだった*]
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【人】 琴弾き 志乃 うん、お腹空いて……。 (117) 2017/11/30(Thu) 22時頃 |
【人】 琴弾き 志乃 ……どうしてって…… (118) 2017/11/30(Thu) 22時頃 |
―翌朝/豚小屋―
[朝日が差し込み、辺りが明るくなってから、
どれほど経った頃だろう
昨夜からまだなお続く豚の貪食っぷりに、
さすがに恐怖すらを感じはじめてきた頃、
人の気配を感じ、すくりと立ち上がった]
おはようございます 進さん
どうなんでしょうか……
私も、まだその段階まで行っていないようなので……
[返ってくる……というよりも、
一方的に告げられたような言葉に、苦笑する]
いえ、お応えはしているんですが、
届いてはいないようなんです
[言葉は失った様子だったけれど、
話す内容から、彼が常ならぬ存在なのだろう、
ということは感じ取れた
昨夜、容はミナカタの方へ向かおうとしたとは思えない
もしかしたら、下手人として儀式の対象となったのは、
彼だったのかもしれない]
進さん 御髪(おぐし)が少し、乱れておりますよ
昨夜、寝方が悪かった
[そう告げてみたけれど、結局応えは返ってこなくて、
自分を運ぶために人を呼びに行く後姿
苦笑のままで、見送ったのだった*]
【人】 紅客連盟 イスルギ― 回想・腕の中、命の散る時 ― (120) 2017/11/30(Thu) 22時頃 |
【人】 紅客連盟 イスルギ 愛してやれたかもしれない、などと。 (121) 2017/11/30(Thu) 22時頃 |
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