82 謝肉祭の聖なる贄
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[本来ならば、人に似せた姿はもうすこし若い――おそらく人間でいうならば、40を過ぎ50近い程度のもの。
己にはどの位に姿が変わっているかはわからないが。同胞の精を吸えば、回復もはやかろう。
酒の口移し時に引き寄せられれば、目を細めて。口内の酒がなくなっても、舐めたり啄んだりなどしたか。
熱を帯びたそれに指を絡めれば、手の中での精の放出を促すか]
贄の味見をするか?
ならば、私は邪魔になるな。
[茶の同胞と金糸の贄のやり取りに、同胞の下肢にある熱へ絡めていた手を引き。
ぺろり、と己の指を舐めた。
自身も熱を帯びており、風の熱をもっと欲しいとは思っているが。
人間相手と違い、同胞には無理を強いるつもりはない。
茶の同胞が贄に手を伸ばすようであれば、その膝から降りて褐色の贄を椅子に、余興と同胞たちの様子を眺めるだろう]
[構えているのは、己の方。
銀灰と娘との冷たいくちづけも、交わされた命令の内容も、白金の記憶には無かったが。
ふたりで在る様から、それとない雰囲気程度のものは、何処かで察していたのかもしれない。
そして何より。
離れていても伝わる、しかも先よりも確かに濃く感じられる香は
かつて辱められ怯えを抱かされた小さな神の、確りとした心持を蝕むものだった。]
この贄を。
喰いたいものはいるか。
[金髪の贄を見据えたまま、低い囁きを。]
………………………
………… あ のコ 、 ぼく は
………… ぼく が 、
[途切れ途切れの幼い声は、怯えを孕みながら、しかし確かに零れていた。]
[別に今、何かしら粗相やら狼藉やらをはたらいた訳でもあるまいに。
低い囁きを聞き、香をもまた感じ取っていた小さな躰は。
何時かの記憶がぶり返しでもしたように、裂かれるような、
穿たれるような、剥がれるような、そんな痛みを鈍く抱いていた。
それでも、そのか細い声は、洩れていた。]
いちいちびくつくな。
[と冷淡に無理難題を吹っかける。
若い輩が怯えるほど虐待したのは当の本人なのを棚に上げている。]
では喰え。
そして、答えを聞け。
誰かが喰うのであれば。
[銀灰の囁きが聞こえれば。
笑みを浮かべてそう応じた。
先ほどの未成熟な贄と違い、成熟し引き締まった贄は、雨師たる大神の好むところ]
もっとも。誰か、独り占めしたいと言うものがあるなら、遠慮するが。
[返ってきた声に、結局またびくついてしまう。
うっかりすれば贄たちにもこの心持が覚られてしまいかねない程の、緊張。]
…………… こた え 。
[辛うじて、といったところで落ち着きを取り戻そうとしながら、
先程の贄との遣り取りを、思い返す。]
[あの青の奥にあるものを確かめたくて、他の輩に渡せばどうなるかと、手放したのが失策であったらしい。
だが、ちいさい輩の勇を奮っての言葉とあれば]
主が我の顔色を窺うたびに、此方の方が情けなくなってくるわ。
辱められたを恨むなら、むしろ怒れ。
堂々としておれ。
[冷酷な言葉投げつけるが、それは彼なりの詫び、なのかも知れぬ。]
[独り占め、という語に、答える余裕が無い、まま]
そん、な、
…………… は い 。
ごめん なさ い 。
[その冷たい言葉を詫びだと捉えられる程、白金の心は育ってはいない。
けれど心は刃向えず、是を返す。
それでも結局相変わらずの、堂々とできていない声色ではあったのだが。]
[相変わらずに返って来る情けない返答に、ふんと鼻を鳴らした。]
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>>65
[白金の大神様へどうにか酌をし。 その飲む様子を伺っていたところ。
徐に囁かれた「具合悪い」の言葉に。 先ほど茶色の大神様と話していた金髪の青年。 彼は確か薬草と所縁のある家の者だったと思い出すが。 銀灰の主の相手をしており、知恵を借りるのは無理だろうか。
膝枕については少し考えこんだ後。]
私の膝でよろしければ。
ですが、それ以上のお戯れをお望みならば。 銀灰色の主よりどうしても拒めない時には。 自ら命を断つよう命を受けております。 何卒、ご容赦くださいませ。
[膝をつき、頭をさげた。]
(90) 2012/03/16(Fri) 22時半頃
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[静かに呼吸してじわりと溜まってきた熱を逃がそうとする。
まだ外からは見えねど、黒衣の下では抑えきれぬものが形を成しつつあった。]
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[白金の大神様は膝枕をしたかどうか。
間もなく、ただならぬ気配を漂わせ。 銀灰色の主と金髪の青年の方へ向かった。
膝をついて座ったまま、酒瓶と盃のそばに取り残され。 その三者を固唾を呑んで見守っていた。]
(95) 2012/03/16(Fri) 22時半頃
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[強くなった花蜜の香をうっそりと身に纏う。
食欲とないまぜになった情欲がじわじわと身のうちを蝕み、苦痛なほどだ。
今また贄が喰われるを見れば、もう歯止めは利かぬ。]
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[獣の唸り声が白金の大神様から聞こえた後。
どうにか事態は落ち着いたのだろうか?
もしかしたら、金髪の青年は自分のように。 すでに主に望みたい大神様がいるのではないかと。 ぼんやりと思う。 そんなような気がするだけなのかも知れないが。]
(102) 2012/03/16(Fri) 23時頃
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>>100
[白金の大神様と金髪の青年から離れ。 こちらを見た銀灰色の主の顔は笑っていたか? その表情に思わず安堵の溜息が。]
(107) 2012/03/16(Fri) 23時半頃
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――だそうだ。
[肩を竦め皮肉な笑いを浮かべる。
内実餓えに苦しみ切羽詰っていても、まだこのスタンスを崩すつもりはないらしい。]
フフフッ…それほどに気に入ったのならば、仕方あるまいな。
[白金の同胞が宣言するのを聞いて、愉しそうに笑う]
[忌々しく恐ろしく恥ずかしく、恨めしい記憶呼び起こす香。
けれどそれにも、怒れ、堂々とあれ、と半ば無意識に意志して。
今。小さな勇気から勢いづいたおおかみには、既におそれは無かった。]
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>>109
[銀灰色の主の手招きを見て。 すくっと立ち上がると駆けつけた。]
(111) 2012/03/16(Fri) 23時半頃
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[とつとつと脈打つ、娘の心臓の音に耳を傾ける。
この熱くやわらかい肉を引き裂きたいと、じりじりとその身を焦がされながら。]
[年長の同胞たちのこえは、耳に触れども。
アクアマリンに囚われた小さなおおかみからは反応は返らない。]
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>>117
……あっ、主様?
[瞬きもせず見つめていた銀灰色の主に。 いきなり抱き上げられ。 充分に育ちきったとは思えない胸に。 顔を押し当てられて、しばし戸惑うが。 両腕でそっと抱きしめた。]
(122) 2012/03/17(Sat) 00時頃
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[早鐘のように高鳴る心臓の音は。 多分、聞こえているだろう。]
(125) 2012/03/17(Sat) 00時頃
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