102 あの、秋の日
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気づけばそこは、10年前の秋の日。
秋休み帰省組がいなくなり、いつもよりも閑散とした寮。
さて、あなたはどこにいるのでしょう……?
(#0) 2012/09/22(Sat) 00時頃
[頼りになるルームメイト。
けれど、さっきはなんだか様子がおかしかった。
さっき? さっきって、いつ?]
……本当は、覚えてるんやわ。
[覚えている。知っている。
これが夢だということも。
本当は、今生きているのが10年後だということも。
……タイムカプセルに、何を入れたのかも]
みんな、忘れてしもてんなぁ。
[それは、とても、寂しい。
この時間は、かけがえのないものだったのに]
私を、高く運んで行け
魂の大きな国へ
さあ―――――
[ああ、よく憶えている。
繰り返し歌ったこの曲と。
タイムカプセルに埋めた、あの想いを。]
永遠の 夏の、
[――違う。
もう、夏は過ぎ去った。
涼しい秋風は制服の襟を撫で、金糸と首筋をなぞっては遊ぶ。それは身体を通り抜け、歌声を乗せて、遠くへと。]
……夢、みたい。
[人影少ない寮。
落ちた瓦礫と、台風一過の空の色。
少女と女性の声が、重なった。]
夢、やもん。
[どこからか聞こえた声に、ぽやんとした声を返したのは、無意識]
……あれ?
ゲコ。
[生徒会長の眼差し。
あの眼差しを、別の角度で見た覚えがある。
慌しく携帯電話を片手に、個室を出て行った]
個室?
……夢、?
[舞うケープ、軒先にくゆる紫煙。
お久しぶりですと、言葉にした唇。
どこかでもう一度“夢”と、聞こえた、気がした**]
[ヨーランダは、可愛い。
"あんな風"に無理しなくたって、十分可愛いと思うのに**]
[歌いたかったのだ。
ずっと、歌いたいと思っていた。
一人ではなく、誰かと。
その誰かは―――――]
……そっか、
過去形、なんだ。
[胸に抱きし憧憬は、過ぎし日を懐かしむように。
この中庭も、寮も、そして少女も]
全部、夢なんだ。
戻りたかった、過去なんだ……。
[あの日、タイムカプセルに閉じ込めた想いを。
同窓会が鍵となり、導いたのだろうか。]
昔はこんなんで、どきどきしてんなぁ。
せやけどほんまに、変わってへんというか……進歩があらへんの。
[困惑している自分と重なるかのように、懐かしんでいる自分がいる]
バーニー先輩、ほんっと……
変わってない。
[居酒屋の軒先で見つけた彼は、歳月を経てやはり大人の男性になっていたけれど。
こうしてみれば、なんら変わっていないように思える。
くすくすと、少女ではない声が漏れる。
ああこの懐かしき、良き思い出を
共有してくれる誰かはいないのだろうか――]
人間なんてねぇ、そうそう変わるもんやないんよねぇ……。
わかってたつもりやったけど、改めてしみじみ思うわぁ……。
[どこからか聞こえた声に、同意する。
二つに重なった自分の片方が、不思議そうに首を傾げた]
んー……?
[夢みたいと言う声に、夢やもんと返した]
んん……?
[ああ、もしかして、これは]
……んー?
[自分だけの夢では、ない?]
……誰か、いるん?
………え、
[刹那、声が引っくり返る。
相槌を打たれたような、気がした。
果てさてそれは、己が幻想か。或いは。
今度は問いかけられたような、気がしたので]
あ、あなたを快適な睡眠へ誘う、
聖川レティーシャです。
……って、何一人で言ってるんだ……。
[子守唄を無理やり歌おうと同級生らに吹き込んでいた残念キャッチフレーズを口にした。]
あ〜レティに快適な睡眠に誘われてしもたんか〜。
お陰さまで楽しませてもろてるよ〜。
[のほほーんと返事する。きっと名乗るまでもなくこちらが誰かは伝わるだろうと]
いやだな、どうしよう。
寝言聞かれてたら恥ずかしくてお嫁に
……、
……、
……。
……はぁ!?
ちょっと、ええ、クラリッサ先輩ですか!?
びっくりしました、私だけじゃなかったのですね。よかった……。
[普段の大人しさはどこへやら、はっきりと聞こえた返答に思わず取り乱し声を荒げる。飛び跳ねた金髪の少女も思わず目を丸くしていたなどとは気が付かない。]
先輩と私の、二人……なんですか、ね。
それにしては当時より、はっきり会う人と、会わない人が多いですけれど……。
[当時の寮にはもう少し残っている生徒がいたような気がする。そこら辺の記憶は曖昧だったが、それにしても先ほどから会う面々は、同窓会で顔を合わせたばかりのメンバーばかりで]
だって、夢やもん。
[にこにこと、当たり前のように答えた]
別にうちらは過去に帰ってきたわけやないねんし。
同窓会で会った人らの印象が強いに決まってるんやから、その人たちばっかり出てきはっても当たり前やと思わへん?
[クラリッサは不思議をすんなり受け入れている。
だって、夢なんだから]
………………。
[夢だと、きっぱりと彼女は言う。
そうなのだ、それが現実。帰ろうと思えど帰ることは出来ない事実。
けれど、すぐに言葉は出てこなかった。
先輩が卒業して、そして少女が卒業して。
大学を出て、仕事をして。
素直に大人になったと、思い込んでいたのに。
心の底に残る、澱のような。
そんな少女の心が疼く。]
クラリッサ先輩は、
[彼女の問いかけには未だ答えずして]
タイムカプセルのこと、憶えてますよね?
埋めましたよね、……皆さんで。
[皆が忘れていた、その事実を確かめるように**]
ほんまはね、覚えてるんよ、全部。
[柔らかい声で、レティーシャに肯定の返事を返す]
タイムカプセルのこともね、中に何を入れたんかも、全部。
忘れるわけ、あらへんやん?
[だから、言い出した。水を向けてみた]
みんなはどうなんかなぁって、ちょっととぼけてみたんやけど。
[本当は、期待していた。自分は○○を入れた、そんな返事が返ってくることを。
そうしたら、ああそう、うちはあれを入れたんやった、なんて返事しようと――――]
せやけど……、
みんな、忘れてしもてたんやね……。
[柔らかな声は、寂しげに響く**]
10年、ですよ。
10年。
……長いですけど、そんなに長くなかったとも、思います。
[寂しげな声音に、淡々と紡いでいく。
クラリッサと同じく、皆は忘れていないと、思っていた。]
皆さんも夢、見ているのでしょうか。
それで思い出してくれたら、いいですね。
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