260 3日村
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なん……だと……!?
[パリ──ン。 サイラスの眼鏡がちょうど割れた頃。 電気鼠≪黄色い悪魔≫ですら追いつけないような速さで拳が放たれる。 球を二つに割りコートに到達する…まさに無我の境地≪ETIZEN≫に至る技を持ち、魔法すらも自在に操る姿は氷の皇帝≪エンペラー≫]
やっぱり、 間に合わなかったか。
[風穴を作り上げた拳に振るわれるまま落下した身体は吹き飛んでいく。 どこへ向かうかは知らぬまま、萎れた花の栞と共に地に伏せた]
(100) 2016/12/08(Thu) 00時半頃
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覚えてないのね、バルメロス。 うふふ、いいのよ。 わたしは豊穣の女神≪Δημήτηρ,Dēmētēr≫。 もう、思い出さしてくれなくても、いいの…───
[だから、もう一度。せめてもう一度だけ、あの暖かい腕で抱きしめてほしいのだと。本当の願いを口にはせず、少女は慈愛の微笑みを見せる。 否定を続ける本能と理解を得た思考は齟齬を繰り返して、一つの結果に辿り着く。結局は、猫の言った通りなのだ。 遥か昔、バルメロスが地下に降りた時、本当は彼>>38に「もうあいつは戻ってこない」と告げられた時から、真の願い≪もう一度愛してほしい≫は叶わないことなど、心の奥底では理解して居たのだ。]
(101) 2016/12/08(Thu) 00時半頃
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[約束した丘は、あの楽園は、もう、何処にも]**
(102) 2016/12/08(Thu) 00時半頃
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────いいのよ、バルメロス。何も思い出さなくて。 あなたは、真に世界を救いなさい。 それがわたしの、女神としての最後の言葉と…祝福です。
[最後は、叱責するように。混乱する彼>>98に畳み掛ける。 そして、あなたに。]
(103) 2016/12/08(Thu) 00時半頃
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わたしの中のあなたに、最後の眠りを。
ごめんなさい、しめおん、たなとす、そして ────おやすみなさい、バルメロス。 あいしていたわ。
(104) 2016/12/08(Thu) 00時半頃
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[ 英雄からそっと手を離すと、
────おちる、 おちる
崖の下 ]
(105) 2016/12/08(Thu) 00時半頃
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───剣?女神…? ちょっと待て、どうして…君が…、
[身を乗り出してきた少女の唇が、額に添えられる>>96。 ふわりと甘い香りが鼻腔を擽り、ゆっくりと意識が混濁する。 青年《トレイル》の身体はがくりと糸が切れたように倒れ、その意識は少女の玩具箱の中へと沈んでいった]
(106) 2016/12/08(Thu) 00時半頃
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[黒い青年は負傷している。左腕の損傷が激しいのを、レティーシャは気づいている。 できれば、彼の元に行って治癒魔法をかけたい―――それが人形としての今の己だ。救護に特化された殺人人形だ。役目は果たさなければならない。
然し、女神を‟救う”のも神父様から頂いた最初で最後の‟命令”でもある。
溢れるErākōdoは、女神の存在を否定している。 …否定してしまっているのだ。
雛罌粟は、慰めと思いやりを意味する 雛罌粟は、陽気で優しい乙女を意味する
雛罌粟は――――‟別れの悲しみ”を意味する。 眠れなくなった貴女を癒す為に、眠りの実の蜜を。
彼女を、救わなければ≪眠らさなければ≫]
それは、いけません―――デメテル様!
[だが、広い視野を見る人形の視界に、あの青年>>100の姿が―――]
(107) 2016/12/08(Thu) 00時半頃
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[ 世界樹から放り出された体は、軽く 軽く 花のように。
落ちた先から祝福の花が、雛罌粟達が散ってゆく。 開かれる大地に、ゆっくりとその体は包み込まれて──
ぐしゃり ]
(108) 2016/12/08(Thu) 00時半頃
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[ 散った実は柘榴の粒。
女神の体は呆気なく、地面に取り込まれて ────そして、門が開かれる。 ]
(109) 2016/12/08(Thu) 00時半頃
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────沈んだ世界の中心≪Ocutopusの心臓≫
(110) 2016/12/08(Thu) 00時半頃
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[ 少女を喪う世界樹はまるで後を追うように、走る、疾る。 幹を割って現れたそれは、地下への扉。 その奥に見える────世界の心臓≪コア≫。]
──ごめんね、ふたりとも。 わたし、堕ちてもめがみだったわ。 あとは、おねがい。
[ そうして幻想的な理想郷≪Waltz of the forest≫は青い希望の鳥と共に、消え去った。 残るのは雛罌粟の花弁、柘榴の粒と────あの時、彼にあげた雛罌粟の栞の、もう片割れ。]**
(111) 2016/12/08(Thu) 00時半頃
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[地に叩きつけたクシャミは虫の息で、僕が最後のしめをしなくても、彼が操ったはずの時間が…もしくは旧友のタナトスが、死をもたらすだろう。そう悟った。
やっと一息つきデメテルの方を眺める。]
ふぅ…遅かったか。
[ひらひら。落ちていくとわかっていた。それでも幸福≪デメテル≫に手をのばそうとして…。
やめた。]
(112) 2016/12/08(Thu) 00時半頃
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おやすみ。小さな幸福。
[崖の近くに咲く花はなんだろうか。彼岸花のようなピンクの花が痛く目に染み付いた]**
(113) 2016/12/08(Thu) 00時半頃
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あぁ、精々可愛らしく人形劇≪踊って≫やるサ。
[そうつぶやく声は誰にも聞き取られず空に溶けた]
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[ ハンプティ・ダンプティ
割れた卵≪あのころのしあわせ≫は 二度と元には戻らない。 ]**
(114) 2016/12/08(Thu) 00時半頃
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Humpty Dumpty sat on a wall,
Humpty Dumpty had a great fall.
All the king's horses and all the king's men
Couldn't put Humpty together a gain…
[彼…シメオンとガーディと出会ったのは遥か昔だ。
わたしが、独りぼっちで泣いていた時に、手を差し伸べてくれた。
わたしにとっての、長い時間を──それこそ、バルメロスより長く過ごした、家族のような存在に。
消えゆく意識の中、満足そうな笑みを浮かべた。 ]
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[それは己が迷ってしまった所為なのだろうか?
力なく、宙を浮いた黒い青年の姿>>100 己は彼の名前すら知らない。 でも、己を導いた存在であることは、変わらない。
止めようとした矢先に、その身を投げた女神の姿。>>105 ―――そんな、眠り”を望んでいたのですか? Erākōdoの赤い文字が消えていく。まるでそれが本来”だといわんばかりに。]
(115) 2016/12/08(Thu) 01時半頃
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[堕ちていく二つの身体。動くことなど できなかった。]
(116) 2016/12/08(Thu) 01時半頃
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