308 【R18】忙しい人のためのゾンビ村【RP村】
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[今来た方じゃない。 反対側の、暗闇の方から。]
……誰か、いるのか?
[俺の声が暗いトンネルの中に反響する。
それを合図にしたかのように、 バタバタバタとその音は大きくなり、 こちらへ近づいてくる。
――――足音だ。
それも、一人や二人じゃない。 こちらに向かって走ってくる。 何が? わからない。]
(43) 2020/10/25(Sun) 23時頃
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[けど、こんな真っ暗闇に、人がいるか? もしもいるなら。 俺の呼びかけに、返事ぐらいするんじゃないか?
冷静に考えようとする頭とは裏腹に 心臓がバクバクバクバクと、 人生最大級の音を奏でる。
懐中電灯はそちらへ向け、少しよろめきながらも 慌てて元の場所へ戻ろうと踵を返す。
さっきは慎重に乗り越えていた車をよじ登り、 踏みつけ、飛び降りて、急いで走る。走る。]
(44) 2020/10/25(Sun) 23時頃
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[ガァン!!]
[何かが車にぶつかったような音が 俺の後ろから響いてきた。 続いて呻き声、よじ登るような音。 後ろを振り向ける余裕なんてない。 鍬を途中で放り出し、懐中電灯だけを片手に、 音で距離を判断しながら、 もつれそうになる足をひたすら前へ前へ。 ライトをつけたままのバンにようやく乗り込むと、 急いでドアを閉め、キーを回した。 つかない。]
くそ、こんな時に……!
[一度元の位置に戻して、またキーを回す。 一回、二回、三回、かかった! ほっとして顔を上げた瞬間。]
(45) 2020/10/25(Sun) 23時半頃
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[ バンッ! ]
(46) 2020/10/25(Sun) 23時半頃
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[血まみれの手のひらを、 フロントガラスにたたきつけられた。]
ひっ!
[慌ててギアをバックにいれ、アクセルを踏みつける。 フロントにいたソイツは、 よろめくように車から離れたが、 ライトに照らされたトラックの向こうで、 こちらに向かってこようとしている ヤツらの姿が見えた。何体もいる。 ハンドルを回して、その勢いのまま車をUターンさせ 一気に加速した。 バックミラーを確認するが、後ろは暗すぎて何も見えない。]
(47) 2020/10/25(Sun) 23時半頃
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[放水を続ける消防隊。 包囲をすり抜けてくるゾンビを、機動隊が射殺してゆく。]
……大人って、スゲェな。
(48) 2020/10/25(Sun) 23時半頃
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大丈夫、大丈夫だ……。
[走って逃げることができたという投稿も見た。 車の速度には追い付けないはずだ。 そう言い聞かせ、手形のついたフロントガラスを見すえ アクセルを踏み続ける。
ようやく、入り口から差し込む太陽の光が見えた時には、 生き返ったような心地がした。
フロントガラスについた血を、 ワイパーとシャワーで洗い落としながら、 自宅まで、そのまま車を走らせ続けた。]
(49) 2020/10/25(Sun) 23時半頃
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[捜索の旅の1日目は、こうして空振りに終わった。**]
(50) 2020/10/25(Sun) 23時半頃
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〇〇高速道は、〇×インターのあたりで、
事故が起きたみたいで、通れなくなっています。
△△トンネルも、事故があったみたいで、
中は真っ暗で、ゾンビが何体かいました。
危険なので、近づかないように、ご注意ください(+o+)
[そんな書き込みが、
誰かの役に立つのかはわからないけれど。
情報がないよりはマシだろうと思って、投稿した。]
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[ ふかふかのラグマットは猫もお気に入りだった。 頭をぐちゃぐちゃにした"それ"の汁は その毛足に吸われて下の床まで届いていない。 ラグマットの端を持ち上げ、端から"それ"を 丁寧に巻いていった。
ベランダへ続く掃き出し窓を開け、 引きずるようにラグごと"それ"を引っ張り出す。 本当はベランダから投げ捨てたかったが、 一人では到底無理そうだった。]
(51) 2020/10/25(Sun) 23時半頃
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「おまーりしゃんがんばえーー!!」 「しょーぼーししゃんがんばってーー!!」
[ちっちゃな子たちが、窓から必死の声援をおくっていた。 土木関係の人達も校庭に出て、限られた資材でのバリケード造りをはじめた。]
「手が空いてる人ら、窓から椅子と机、投げてよこせ!」
[重機で押して、バリケードの材料にするらしい。 ダチどもと顔を見合わせ、頷き、片っ端から机と椅子を投げ落とした。 ……ちょっと楽しかった。]
(52) 2020/10/25(Sun) 23時半頃
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[ ベランダから下を見下ろし息をつく。 あちこちに呻き声を上げる"それ"がいた。]
うるせえ、死ね!
[ 言った後で気づいた。 あいつらもう死んでるな。 少し面白くなって一人声を殺し笑う。]
(53) 2020/10/25(Sun) 23時半頃
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[ そうして──アーサーと向き合いたくて 私は部屋に戻った。 掃き出し窓の雨戸を締めると、 台所の小窓から差し込む光だけになり 部屋は夕暮れの明るさになった。 そして玄関のドアに鍵をかけ、チェーンをかけ、 誰にも邪魔されない時間を作った。
アーサーを持ち上げる。 布団の上に残る血を少し眺め、 その後お気に入りの毛布で丁寧に包んだ。
ごめんね。 守れなくてごめん。 ご飯をあげられなくてごめん。 あの時追いつけなくてごめん。]
(54) 2020/10/25(Sun) 23時半頃
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[ そのまま薄い黄色のキャリーに入れる。 お気に入りのおもちゃも入れた。 いつも枕にしていたぬいぐるみも。
丁寧にキャリーを埋め尽くした後、扉を締め──
掛け布団のシーツを引き裂いて、 しっかりと外側から二重に包んだ。
アーサーが"それ"に成り果てても、 その動きを封じられるように。]
(55) 2020/10/25(Sun) 23時半頃
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[ アーサーを包み終わり、私は台所の床下収納を開けた。 台風や地震など万が一のときに備えて入れた 非常袋と食糧、水、キャットフード。 2リットルのペットボトルを開けて、 ごぶごぶと水を飲む。 少し焦げ臭いにおいはしたが、飲む。 半分ほど飲み干したところで缶詰のビスケットを 開けてかき込んだ。
持ち出し袋の中の非常用モバイルバッテリーに 煤けたケーブルを差して諦めながらスマホを繋ぐと 充電中のマークが画面に灯った。]
───っし!
[ そうして私は、数日ぶりに世界の全景を見た。]
(56) 2020/10/26(Mon) 00時頃
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