216 宵闇駆けるは天つ星
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力、などと。
そんな大層なものは持ち合わせておりませぬ。
[僅かに首を傾けて、妖は男を見遣る。
口許には笑みを湛えたままに]
おやまぁ、物好きな御方。
……そこまで仰るのでしたら。
[僅かに気が逸れるのも感じたか、深まる。
切りかかってくる刃に向けて、片方の腕を翻し――]
[けれど何も起こらなかった]
あらあら。
[こちらに無防備に背中を向ける男。
片腕を掲げたまま、首を傾げて見つめる。
襲いかかる事はしなかった]
これは大変。
[その周囲に小さな結界が生み出されるのを、そこに垣間見えた絶望の表情を、
妖はただ笑って見ていた]
[亀吉の返答>>+40に、嗚呼、と声を零す。
物騒であっても手当てが優先、と気が急いていて、己らに宿るモノの相性をすっかり忘れていた]
ほぃじゃあ縛るだけ縛るけぇ。
[勿論薬も塗り圧迫してとなるが、薬が足りなくても縛る心算で。
手は借りぬ、となるならば任せてしまう心算だ*]
いえ、本当は冷やせた方が良いンですが。
[向けられた言葉にはゆると首を横に振り。
喉の火傷は痛そうに顔を顰めつつ、其方の処置は彼に任せた。
己の意志外で発動した結界の負担は身体を重く感じさせる。
無理矢理にねじ伏せた星の本性は胸の裡で燻ってはいるけれど、もう飲まれる心算はない。]
…ちょっと足りないかもしれません。
あ、でも先刻旦那と話してた妖に薬草の場所を聞いたンで、ひとっ走り行ってきます。
[軟膏がなくなりそうだと気付いた頃合いに声を掛けられれば、そんな風に返して。
男はちらと兄弟子の様子を見やった後に林の方へと全力で駆け出す。
その間に疵口を焼くかという話をしていたとは知らず。]
お待たせしましたァっ。
[師匠から薬草の種類は教わっていたので、林に行けば目的の薬草は見つかった。
採って来た薬草を手持ちの火打ち石でつぶし、疵口に宛がう。
そうして手甲を外すと小袖の先を裂いて、当て布をした後にぐるりと巻き付けて固定した。]
亀兄さんも、失礼しますよ。
[まだ彼と戦った妖は傍にいただろうか。
片腕が獣性を色濃く残すそれとなった彼女をちらと見て、黙って一礼する。
それは兄弟子を殺さないでくれた礼。彼らの関係は男は知らない。
己が闇星に飲まれる云々の話も結界の中でははっきりとは聞き取れず。
了解を得られたならば、先ずは肩に出来た傷の処置をしようと。*]
―少し前―
[微笑みを湛えたままの妖は己の調子を崩さぬまま。
気が昂ぶったまま振るった刀は、彼女を屠る為というよりは己が星の本性を振り払う為のもの。
彼女の力がどんなものであるのかは分からないまま、突進する形となった。
師匠が見ていたならば、この阿呆が、と云った事だろう。
女怪の細腕が応じるように翻される。]
[陽炎の主と思しき女怪は気が逸れて背を晒した男に一撃食らわせたりはしなかった。
ひどく狼狽した男にはそれに気付く余裕はなかったが。*]
[手当についての亀吉の返答>>+41には、そうけぇ、と返すに留め。
薬草取りから戻って来た青年の手際の良さに感嘆の声を零す。
手当てに慣れているようであるため、細かい部分は任せ、余四朗はこの場に残る妖に視線を投げた]
[どちらも止めを刺そうとしなかった者達であるため余四朗も手は出さないが、警戒だけは緩めない。
尤も、余四朗も満身創痍であるため、何かあった時に対処しきれるかは甚だ疑問ではあるが*]
[素直にそうだと答えてはくれない、どこか拗ねたような響き帯びる、声。>>+34
まるで聞き分けのない子供を相手しているようだ、と、ふと思う。
もっともそんなこと実際には言ってはやらないのだけれど]
………… ふっ
[宣言かました後ふいと視線そらしてしまった青年を小さな笑い声だけが追う。>>+35
浮かべた笑顔は常より穏やかなもの]
[さて、とりあえずひとまず休むと決めたものの、
多少気になるのは芙蓉のこと。
朽葉色だった髪は白く染まり、力をずいぶんと消耗したことがうかがえる]
海、………か。
[おそらくはそこにいる妖に用があるのだろう、
見慣れぬ退魔の者が通ってきた場所に向かってから、
彼女の気配は弾かれたようにこの場から消えていた。
追いかける気はなく、ただそちらの方に視線を向けるだけ]
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