― 兵舎 ―
『現在の状況に異変はありません。ですが師団長である貴方が
いるといないとでは、皆の覇気が違うのは以前も申し上げたとおりです。
無理にとは申しませんが、なるべく早く戻ってきてください。
僕としては無事に戻ってきていただければそれでいいのですが。
で、では。以上です』
[通信は一方的に切れた。慌てて切った感じがしたのには首を傾げただけ。
思うとすれば、何かがあったのでなければいいという懸念ぐらいなものだった。
通信機をポケットにつっこみ、兵舎から出る。
訓練場の方に目を向けて、ゲイルからもらった試薬を試すならここかと思った。
万が一を考えたら誰かに立ち会ってもらった方がいいのかもしれない。
通りを昨晩と同じパンツに、重ねたシャツを羽織った姿で歩く。
胸元は広く開けられていて、シルバーのチェーンの先にドッグタグが揺れる。
その下には一部刺青が見えていて、おまけに体躯もいい。
タグに彫られた牙を剥いた剣歯虎が、密かに威圧感を付け足していた]
(276) 2011/03/24(Thu) 13時頃