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そうですわね。もし我々が犬であるのならば。
[部屋を去る際、そんなことを言い放った。
おそらくこの男は、己を犬とも見ていないだろう。犬よりももっと下等なものかもしれないとは考えつつも、投げかける視線は相変わらず鋭いものだ。]
今はご挨拶のみ、と申し上げた通りでございますわ。
サービスはまた、いずれ。
[それはおおよそ奴隷らしからぬ言葉だろう。
だが、そう簡単に屈服することはない生物(或いは"creature")は、主人になるやもしれぬ者にすぐ傅くという手段は取らぬのだ。
目の前の者が、己を飼い馴らせる者か否か。
飼い馴らされるのに値する者にならば、買われても構わない。寝首をかいて「主人」を蹂躙する立場になれるのならば、それはまことに僥倖だ。
ただ、そのどちらにもなれぬ者に買われることだけは御免なのだ。主人につられて己まで無価値になる筋合いは無い。]
貴方様とは、またいずれお話しとうございますわ。
……「もし貴方様がお望みになるならば」。
[交える言葉こそ少ないものの、この男は危険な臭いがする。買われるか(或いは買われたいか)どうかは別として、女はそれがひどく愉快だと感じていた。]
(272) 2010/04/07(Wed) 13時頃