[両親が演奏旅行でいないので、普段のお世話をしてくれるメイドの目を盗み、私は自宅を飛び出しました。
自室には「魔女の呪いを解いてきます」という書き置きを残してきたので、きっと大丈夫でしょう。
宝石のネックレスをポケットに入れて、私はオズワルドに会いに行きました。
もし依頼をするのなら、屋根の上の猫を追いかけにいってくれるような探偵さんがいいなと思って、前々から探してあったのです。
私なんかをお客として扱ってくれるか分かりませんでしたが、勇気を振り絞りました。
ネックレスを差し出した時の、彼の探るような眼差し……。思い出すだけで心臓が口から飛び出そうです。]
わ、わたしの、です。
っ父は有名なピアニスト、なんです。何でも、買ってくれるんです。
[練習してきたうそをつきました。贅沢なんてしたことありません。
つっかえながらの言葉に、果たして彼は何を思ったのでしょう。
それでも彼はそれ以上に訊ねる事はなく、依頼を引き受けてくださいました。]
(151) 2013/10/03(Thu) 23時半頃