──回想:いつかの世界線──
ねこちゃん、また来てくれたの?
[高く蒼い空の下、少女と男が二人、腕を揺らして歩いている。
緩く繋がれた手のひらに戯れるように少女はきゃらきゃらと笑い、男はそれに応えるよう、緩く笑みを浮かべた。
いつかの世界線。猫と少女≪まだ異分子ではなかった女神≫は友人であった。
少女は英雄と導きの猫を豊穣の神として慈しみ、英雄の友らをその深緑の大地へと迎えた。本来、少女の本分は繁栄と命の祝福にある。
世界樹の中心は、祝福を与えるに相応しい場所であった。]
そうだわ、ねこちゃん。
あなたにこれをあげる。
前にお話ししてくれたでしょう、あなたが何度も繰り返しているって。
わたしにはよくわからないけど、あなたが辛くないように。
いつでもあなたが優しく、楽しくあれるよう。
[そうして猫の手に握らせたものが雛罌粟の栞≪アーティファクト:生命の祝福(めがみのほほえみ)≫であった。]
(133) 2016/12/03(Sat) 23時頃