[乙坂>>95の言葉にデザートへの期待を膨らませながらも、今は目の前の料理に釘づけだ。
裏声の挨拶には目を柔らかく細めることで返事をして、それから暫くはパスタとの真剣勝負。
一戦交えた後の口からは短い言葉しかでなかったが、彼のいつもよりも幼く見える笑顔を見る限り、気持ちは伝わったようだった。
それからは、一定のペースでパスタを口に運ぶ。
一口は大きくはないが小さくもなく。決して急いでいる様子ではないものの、皿の中身がすいすいと口の中に消えてしまったのはそう遠くない時間だった。
途中、近くのカウンターからフォークの高い音が聞こえたり>>73、扉が開いて>>75外の空気を感じた時には一度視線を向けることはあったが、それ以外で手を休めることはなかった。
これは、戦いなのだ。料理と――時間との。
左腕にある細身の腕時計を視線の端で追う。]
(105) 2019/11/23(Sat) 00時頃