[日の差した様に顔いっぱい、輝かせて笑った少女がこちらへ歩み寄って、来る。
あぁ、と反射的に顔を隠そうとしたが、傍に寄っても朗らかなままの声。タオルに伸ばした手が空を切った。]
シーシャ…さ………
[少女が口にした名前のリズムが、さっ、と意識を内側に戻せば、痩せた男がミシンケースの向こう側からひょいと、顔を出す]
…シーシャさんの、お友達さん?
は、はい…そう、初めまして、で、ズリエルです。
仲良…え?
[屈託の無い笑み、色素の濃い肌に浮かぶ嬉しそうな––––肌の、色…
……以前、臓から発生した莟が咲き破った、腹の縫合痕。
それが微かにつっぱった感覚。新たな花が咲いた感覚では、無い。ご飯食べたせいかな、と感覚を誤摩化す様に軽く掌で払う]
仲良くって…えーっと、どうすればいいん、だろ?
[背丈も年齢もかなり離れている少女を相手におどおどとする大男。
思わず足下に下がった目線は、靴に焦点を定める前に、胸元に揺れる漆黒の花を微かに映した。]
(98) 2014/09/06(Sat) 17時半頃