―a year later 〜銀の皿〜ー
[ 赤ん坊をその手に抱かせると、父親は重さに驚いたように僅かに眉を上げた。
どこか恐る恐るといった風情で壊れ物を捧げ持つような仕草に、愛しげに目を細めて。
無意識に胸元を飾る赤い花のブローチに指で触れた。]
――大きくなったでしょ?
子供の成長なんてあっという間なんだから。
そうそう。まめに帰って来て顔見せないと、「おっさん誰?」って言われても知らないわよ。
[ 楽しそうと笑って、提げていた袋を持つ。
寄り添うように傍らを歩いて、店内へと戻ろうと。
見上げたヘクターの穏やかな微笑に、自分のそれを映すように。
絡み合った視線を下ろせば、二人に覗き込まれた赤ん坊は瑞々しい若草色の眸を開いていた。
くぷりと笑い声を上げるテッドの手の平をそっと撫でれば、幸せを掴もうとするように、小さな指はふわりと握られた。]
(76) tayu 2010/07/10(Sat) 22時頃