[空になった手のひらは所在なく、腕を組んで江津子の手並みを拝見することとなる。
見返りが欲しくて捕まえたわけではないが、卵を、と言われれば遠慮をする性質でもないし、江津子も気にはしないだろう。
こういうのはお互い様だ。決まった価格の金銭でやり取りするのでなければ、恩は売れる時に売ったほうがよい。
仲良しこよしなんてするつもりは毛頭ないが、閉じた村で心穏やかに過ごすためには、それなりに良好な関係を保っていかなければならない]
いやいや、 江津子さんの技こそ、腕ってもんさ
鶏を絞めるのは誰にでも出来るかもしれねぇが
それでもどうだい、
あんたが絞めた肉は一味違う
[声にするつもりはないが、江津子はやはりどうにも年増だ。
若い頃ならまだしも、今時分「そんな気」は起きないが、なかなかどうして―――赤に濡れる姿こそは、女らしい。いつも思う。勿論それも、声にするつもりはない]
(55) 2017/11/23(Thu) 18時頃