[そそのかす言葉も、今はもう嘘か本心か区別がつかない。
確かに舞台上で酷い仕打ちを受けずに済んだのは彼のおかげで。
もしかしたら、本当に一緒に引き取ろうと思っていてくれたのかもしれない。
そんな思考まで巡り出す始末。
その思考が浅はか以外のなにものでもない事を知れる程、胸の内は穏やかではない。
金の瞳が此方へと向けられて。
声をかけられても、巧く返す事が出来ない。
灰青の男が立ち上がり、コツ、と私達の方へと歩み寄る。
肩に手をあてられると、身体がびくりとはねた。
男が誘う先は――――]
―――〜〜…っ。
[更に顔が熱くなって頬が紅潮していく。
眉を下げた顔で此方を見る青年に返せたのは。
潤んだ瞳と、は、とひとつ零れた吐息。
青年が熱を取り戻していた事は知らないが、此方もまた同じく。
鼓動が速くなって、身体が熱を帯び始めていた。]
(50) 2010/04/06(Tue) 04時頃