――if・あったかもしれないこと――
[陸地について、大抵の船員のやることといえば、抱え込んだ戦利品の換金と、その金で酒と女とその他諸々の必需品を買うことだ。
絶望色の船がもぬけの殻になるまで、皆が皆散り散りになる。
一晩しても次の夜まで帰ってこないようなのがいる中で、己はといえば数時間を陸地で過ごして、酒の一瓶か二瓶抱えて戻るのが常のこと。
後は備蓄と船員の人数の確認をし、気が向けば甲板を隅まで掃除していた。これだけ人がいなくなれば、ずいぶん仕事も捗るというものだった。
だから、船に戻ってくるのは早い方で、盗みに入るような鼠も逃しやしなかった。
そんなことだから、白羽の矢が立った。]
……はぁ。
[敬愛す絶望の道化曰く、料理人が酒場で酔いつぶれていると。
介抱して連れ帰れというのが本日の命令のようだ。
普段ならば道化の言葉には即答ではいと返すところなのだが、あまりに呆れる内容に、気の抜けたような返事が口から出てしまった。]
(40) mmsk 2014/12/19(Fri) 00時頃