[ゴーグルディスプレイを仕舞い、漏れ出したウォッシャー液を素直に拭われつつ、すんすんと鼻を鳴らす]
そっか、やっぱり地球の景色なんだ。
地球のどっかに、この草原はあったんだね……。
[記憶の中の景色を、共有する人がいる。
それは安堵に近い高揚を自分にもたらして、トルドヴィンの言葉にこくこくと頷いた]
……俺さ、最初に「脱出ポッドで降下する」って話を聞いた時、それでそのまま、新天地の研究所からも逃げちまおうと思ってたんだ。
[物扱いの生活に戻るのが嫌で。逃げて、新天地を気ままに生きるのも悪くないと。
パラディソに残ると決めた時から、その考えは既に捨てていたけれど]
でもやっぱり俺、ちゃんと研究所に行く。
そこでトルドヴィンのお母さんみたいな人にも会えるかもしれないし。
それに俺、新天地で似た景色を見るだけじゃなくて、堂々と地球にもこの景色を探しに行きたい。
[芽生える小さな決意。その先は眩く感じられて。
ウォッシャー液で目元は滲んでぐしゃぐしゃだけど、トルドヴィンを見上げて満面の笑みを向けた**]
(13) 2013/08/02(Fri) 02時半頃