21 潮騒人狼伝説
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[気がついた時には、希薄な存在となって。 男は”其処”に佇んでいた。
ふわり、と。
望めば身体は宙へと浮かぶ]
―――…そうか。 俺は……死んだのか。
[痛みも苦しみも。何も感じなかった。 ただ血に濡れる身体が熱くて、冷たかった。
それはあっけなく訪れた、独りの終わり――]
(+0) 2010/07/23(Fri) 02時半頃
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[希薄な存在のまま、ゆらゆらと佇んでいれば、 ぴたりと。足にしがみ付く”なにか”に気づく]
……ゾーイ、か?
[金色の髪を持つ少女が、こくりと頷く]
そうか。 大分待たせちまった、な。
[節くれだった男の指先は、頷く金へと伸ばされ。 くしゃりと撫ぜた]
(+1) 2010/07/23(Fri) 02時半頃
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[そう謂えば。 いつかもこうして、金の髪を撫ぜたなと。 少女を撫でながら、男は追憶に意識を飛ばす]
ああ、そうだ……。 俺は。 お前の頭を撫ぜるのが、好きだったんだ。
[脳裏に浮かぶのは、ヤニ臭いと顔を顰めた金色]
俺は風見に……、 ゾーイの姿を重ねていたから。
(+2) 2010/07/23(Fri) 03時頃
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[気遣わしげに見上げる少女を、 なんでもないよと撫ぜて。その幼い身体を抱き上げる]
赤い髪のお姉ちゃんが先に来ていただろう?
[抱きかかえた稚い顔が、こくりと頷く]
お前を喪って。 死んだようになってた父さんを、慰めてくれた人なんだ。
何処にいるか、教えてくれるか?
(+3) 2010/07/23(Fri) 03時頃
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[あっち…と指差す幼い手]
良い子だ……。
[ぽんぽんと、背中を撫ぜて。 男は指差す方向へ、ふわりと舞う。
その先にいる赤い蝶は、きっと男を待っているだろうから]
(+4) 2010/07/23(Fri) 03時頃
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― おそらくは現実と虚構の狭間 ―
……ここは?
[周りを見る。 光差さぬ暗い森の中。懐かしい匂いがする]
『うぅ……うえっ……』
[遠くで少女のすすり泣く声が聞こえる]
誰だろう。この声、どこかで聞き覚えがあるような気がする。
(+5) 2010/07/23(Fri) 11時半頃
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『ぐじっ やだ、やだよ。 ビーくん……しんじゃ、やだよう』
ビーくん? ビーくんって、誰だっけ。どっかで聞いたこと、ある。
ああ、確か小さい頃、仲のよかった子がそんな名前だったか。 カービーだか、トビーだか……
『ごめんなさい……ごめんなさい……ぐじっ ごめんなさい……ごめんなさい……』
(+6) 2010/07/23(Fri) 11時半頃
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[声のする方へ、ゆっくりと近づく。 枯れ葉を踏みしめる音はやけに鮮明で、かえって現実感を喪失させる]
……紅葉? 今はそんな季節なんだ。
[一面に広がる、鮮やかな、赤。 その中に時折散らされた彩り、白、桃色、黒。
そしてその中央に配置されているのは、流れるような金色]
(+7) 2010/07/23(Fri) 11時半頃
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[金色の少女は地面にぺたりと座り、 涙が溢れ出る目を、両手で擦っている]
『ごめんなさい……ぐじっ……ごめんなさい たべちゃって……ごめんなさい……』
[指の間から覗く眸の色は、 血に染まったような、赤。 記憶の遡行は、そこで一度途切れた**]
(+8) 2010/07/23(Fri) 11時半頃
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[男は娘を腕に抱いたまま、その指し示す方へと進む。 何処か不思議な面持ちを持つ建物の中へ入ると、 水盤を覗きこむ赤い髪の後ろ姿が見えて]
……随分と、待たせちまったな。 あの晩、迎えに行ってやれなくて……すまん。
[男の声に振り返る蝶。 特徴的なぷっくりとした唇を数回、動かした後。 飛び込んでくるその身体を、もう片方の腕で抱きとめ]
……ん。
[男は言葉短く。 自分の胸で泣く女の背を、抱きとめた腕で撫でた]
(+9) 2010/07/23(Fri) 13時半頃
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[――……お姉ちゃん、どうして泣いてるの?
幼い口調で、ぽんぽんと。 小さな手が、赤い髪を撫ぜる。
男は口元に苦笑いを浮かべて]
それは……。 父さんがな、約束を守れなかったからなんだ。 約束を守れなくて……それで。
[父さんは悪い父さんだな…と。 自嘲するように続けて。
暫くの間はゾーイと二人、 泣きじゃくるタバサを宥め続ける*だろう*]
(+10) 2010/07/23(Fri) 13時半頃
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[そうしてタバサが落ち着けば、 今しがたまで彼女が見ていた水盤へ沈む視線。
緩く波打つ水盤は、 丁度伽藍堂の眼窩を覗きこむ青年の背中を移していて]
――……。
[彼を信じると謂った、もう一人の青年を思い出す]
(+11) 2010/07/23(Fri) 15時半頃
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たぬき……、間違えるなよ。
お前が本当に世良を友だと思うのなら、 お前が為すべき事は一緒に堕ちてやる事じゃねえ。
世良を正し、救ってやることだ。 人の世界に――……。
[呟く声はきっと届かない。 それでも呟いてしまうのは、願っているから。
彼らが後悔しない選択を選ぶ事を]
(+12) 2010/07/23(Fri) 15時半頃
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[ぴょんっと。 抱きかかえていた男の腕から、ゾーイが飛び降りる]
……ん、どうした?
[その様を見守っていると、 少女は水盤の中に腕を入れて。 そこに映るサイモンの荷物の鉛筆に触れる。
それは、音もなく地面へと落ちて]
―――……ふふ。 あはははははは。
[一瞬の沈黙の後、男は笑い声を上げた]
(+13) 2010/07/23(Fri) 15時半頃
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気づいてくれると良いな。 ゾーイのメッセージに。誰か、そう…誰か。
[男の大きな手が、ゾーイの柔らかな金糸を撫ぜる。 あとは、赤い蝶と娘と三人で。
地上の様子を見守るのみ――**]
(+14) 2010/07/23(Fri) 15時半頃
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― ここではないどこか ―
お、おなか空いた…
[ここにきてから食べ続けてるはずなのに、何故かお腹が空く]
餓鬼道って確かこういう世界じゃなかったっけ… 食べても食べてもお腹がいっぱいにならないっていう…
[ぶるっと体を身震い]
(+15) 2010/07/23(Fri) 22時頃
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[アオイに力なく手を振りながら]
…うん。お願いします…
(+16) 2010/07/23(Fri) 22時半頃
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[タバサと二人、水盤に映る皆のやり取りを見ながら、 男は酷く重い息を吐いた]
…………盲信ってやつは、怖いな。
[がり、っと髪を一つ掻くと 周りで遊んでいた少女が振り向き、気遣わしげに見上げた。
もう一度さっきみたいにする?と尋ねられて、首を振り]
いや、いい。 もうこれはあいつ等の問題だから、な。
……それよりも、煙草が欲しいな。
[ついいつもの癖で、胸のポケットを探って仕舞うものの、 その指先は空を切るだけで。 何処かにないものかと周りを見渡せど、あるはずもなく。
男はもう一度、溜息を*吐いた*]
(+17) 2010/07/24(Sat) 02時頃
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……これは、罰なんだ。
人狼の血を持って生まれてきたことへの。 本能に抗えずに、人を殺めたことへの。 ……弱い私への。だから……。
[自分を殺した後輩の形相を思い出しては ひとり膝を抱えて、丸くなっている]
いいよね。ここでずっとこうしてても。 もう、誰も傷付けないから。 何かを、誰かを、望んだり……しないから……
[涙声の合間に、いくつかの嗚咽を漏らす]
(+18) 2010/07/24(Sat) 08時半頃
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……。
……誰?
[幾許かの時が流れた後。 近くで聞こえた誰何の声が、自分に対して向けられたものだと 認識できるまで幾秒か。顔をあげることなく、蹲ったまま]
知ら ない。
[消え入りそうな声を紡いで、首を振る。 頭の後ろで束ねられた黄金の尻尾が、力なく揺れた]
(+19) 2010/07/24(Sat) 08時半頃
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……。
……。
[アチャポに促され、立ち上がる。 目に生気はなく、肩を落とし猫背のまま、足を動かす。 かけられた声に対しては、そちらを見ようともせず 肯定とも拒絶とも取れる、沈黙を貫いていた**]
(+20) 2010/07/24(Sat) 08時半頃
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