296 ゴールイン・フライデー
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─ Die Zeit heilt alle Wunden. ─
[朝から念入りに剃刀をあて、皺ひとつないシャツに袖を通す。フォーマルな革靴は少々ミスマッチな服装だったが、構わず履いた。
妻との結婚式の為に用意したそれは、当時の稼ぎに不釣り合いなものであったが、この先──最低でも娘の結婚式まで、ありとあらゆるハレの日に履くからいいんだ、なんて奮発したもの。
結局、小学校の卒業式を迎える前に出番を無くしてしまったが、なんとなく捨てられずにいた。 あの時の誓いに嘘はないし、靴に罪は無い。]
(37) 2019/05/22(Wed) 02時頃
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[数年ぶりの逢瀬を果たした土曜日。 始めはぎこちない空気も、財布兼荷物代わりとして付き添ううち、少しずつ会話も増える。 下調べしてきたと、彼女の選んだトラットリアに入る頃には足と咽喉、それから財布が悲鳴を上げていた。]
こんなとこまで変わっちまったんかねえ……
[誕生日を祝い終え、娘をホテルに送り届けて帰宅すると、どっと疲れが襲ってくる。 買った時にはぴったりだったのに、重労働を重ねるうちに足指が変形したのだろう。踵が擦れ、小指と共に真っ赤に腫れている。 合わなくなってしまった靴と足は、家族そのもののよう。
コース料理はどれも美味かった。タヴェルナの方が舌に合うと感じたのが本音だが、娘を連れて行くことはできない。 世話になっているマリアンヌやキャサリンに紹介したくとも、知られたくない相手もいる。]
(38) 2019/05/22(Wed) 02時頃
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[──莫迦らしい。 同居はしていなくとも成人する歳の娘がいると知れたら、なんて心配する必要なんてあるのか?萎びたオッサンだという時点で、同性だと言う時点で対象外だろうに。 それに、隠したからといって、娘と妻の存在は消えやしないし、消したいわけでもない。
ごろりとベッドの上に転がり、胸ポケットに潜めていたハンカチを取り出す。 鼻先を寄せればまだ、仄かに感じる香水は昨日、あの人が背後を通り過ぎた瞬間に香ったものと同じ。]
(39) 2019/05/22(Wed) 02時頃
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[タヴェルナでの食事中、あの人の気配が近づく度に、背中が茹でたオマール海老のように丸くなるのが常で、全神経を集中させているから、気づけたのだろう。
微かに漂う、いつもと違う香り。 これまでは感じたとて、酒やニンニクといった大衆的なものだけだったのに。猫を飼う以外にも何か変化があったのか。気になろうと訊ねることなぞできる筈もなく、気にするあまり、食事の味も遠くなったが──もっと衝撃的な出来事は、帰り際に起こった。
落としたのでは?と、封を切られたばかりの煙草と共に、キャサリンがハンカチを差し出した時、元より不調を引き摺り、反応の鈍い頭は自然と受け取って、覚えのある香りに、指が強張る。
もしかしたら、あの人が落としたものじゃないか。 もしかしたら、大事なハンカチじゃないか。 もしかしたら、────。
巡る想像の答えは持越に、いざとなれば来週、勘違いだったと返せばいいと。 つい、つい。煙草ごと持ち帰ってしまった。 魔が差したとしか言いようがない。]
(40) 2019/05/22(Wed) 02時半頃
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──…は、は…莫迦みてえ
[むしろ変態だと裡で詰ると同時に、気づいてしまった。 こんな愚行を犯すほど、惹かれていること。 ただの常連客として、酒飲み友達となるだけでは屹度もう、満足できないこと。
だって、同じ煙草をあの人が持っていたと知るだけで、こんなにも苦しい。唇を食んだらどんな味がするのか、想像しただけで呼吸が浅くなる。 見るからに体温が高そうな肌に触れられたら────なんて独り善がりな妄想で穢していることを知られたら。
考えるだけで心臓が潰れそうに痛くて、息が詰まる。]
(41) 2019/05/22(Wed) 02時半頃
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[それは、15の夏の終わり。 あの子と会えなくなった時に感じたのと同じ痛み。]**
(42) 2019/05/22(Wed) 02時半頃
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[週末に摂りすぎたカロリーのお陰か、それともやたらと落ち着く香りのお陰か。粘り強そうに思えた風邪はすっかり良くなり、靴擦れも足を引き摺らぬほどに回復した。
いつも通り、ラジオを時計とBGM代わりに身体を動かす。]
ん、…っし、これで大丈夫。 どうだ? 前よりずっと滑らかになっただろ あと50年…とまではいかねえが。大事にしろよ
[工務店に何故か持ち込まれる、自転車修理。 この辺の連中はそんなこと気にしちゃいないようだった。店主もまた、こうした些細な依頼をこなすことが営業に繋がるなんて宣う具合。
それが建前だということには気づいている。 技術も経験も半端な男に、少しでも多く仕事を与える口実であろうことも。]
(73) 2019/05/22(Wed) 22時半頃
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[集中していても自然と耳に吸いこまれる男の声もまた、いつも通り穏やかなものだった。 少し前だったか、珍しく苛立ちを隠さず、声を荒げていたこともあったか。 確か、恋の始まりに関する投稿が切欠で。]
…あんたみたいな誠実な奴なら 50年どころか100年でも添い遂げそうだよな
[先週、娘を迎えに行く前に流れていた、家族を思う歌、その前のコメントを思い浮かべての独白は、皮肉ではなく羨望だ。実際、腹の底では別のナニカを飼っていようと、それをきちんと隠して、相手を思いやることができそうだと。
それでいて、譲れないことはきちんと主張できるんだろう。 少なくとも客の一人をこっそり目で追い掛けて、同じ空間にいるだけで満足、なんて恋愛下手の印象は窺えない。]
(74) 2019/05/22(Wed) 22時半頃
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[何か悩みでもあるなら相談してみたら、と。揶揄まじりに水を向ける同僚に、大仰に肩を竦めてみせ。]
べ、……っつに。んなもんねえし だいたいその、なんつうの? ラジオネームとか考えるの恥ずかしくねえ?
いや本名出す方がずっと気まずいけどよ……
[そうだ。此奴に話せる悩みなんて、ない。 このまま静かに燻らせて、いつか、時間がその灯を消してくれるのを待つだけだと。とうに結論が出ている恋の相談なんてして何になる。
──公共の電波に想いを乗せて、万が一にでも素性が知れたらどうする。そんなリスクを払う勇気がありゃ、こそこそ女々しい片思いなんぞ続けていない。]
(87) 2019/05/22(Wed) 23時頃
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[そんな捻くれた思考を思いっきりぶん殴られた気がした。
長いようであっという間に訪れる金曜日。 今夜もまた、あの人に会えるだろうか、なんてそわつきながらロッカーで着替えを済ませていた最中のこと。
ノイズ混じり、不明瞭に届く声に混じるのは、ただの同情なんかじゃない。真摯で、一途で、悲痛な想いに胸を貫かれる心地で、その場に立ち尽くす。]
あ──……、 …くそ
[悩みなんてなさそうに思えた男もまた、同じような切ない想いを抱えていたことに驚いた。しかも相手が同性、だと。その上でどうしようもない想いを率直に伝えられる勇気と情熱と、誠実さが耳と胸に痛い。
彼が思う相手がどこの誰だか知る由もないが、贅沢な奴だと思う。 人の気も知らないで、もしかしたらこの放送を聞いていたとしても自分のことだと気づかず、呑気に暮らしているのかもと思えば、何だか無性に腹が立った。]
(88) 2019/05/22(Wed) 23時頃
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[同時に、己のみじめさを痛感もした。元より報われるなんざ思っちゃいないが、只管に知られるのが怖いといつまでも怯えるだけで、下を向いている自分自身が。]
…此奴が知り合いなら、悩みのひとつやふたつ 聞いてやれるのにな
[彼は一体、今までどんな思いで様々な恋愛相談に乗ってきたのだろう。自身の積もり積もった悩みを打ちあげる相手がいないことは、リスナーからの投稿につい、溢れたように聞こえた声音だとか。パーソナリティという立場からの想像でしかない、が。
まったくほんとうに、人生はままならないものだと。 次の番組に切り替わったラジオを切る。]
(89) 2019/05/22(Wed) 23時半頃
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[物思いに耽っていることと、靴ずれが完治していないこともあって、タヴェルナへと向かう足取りはいつもより重い。
あの人もまた、知らないところであんな風に悩んでいたりしないだろうか。辛いとき、寂しいとき、寄り添う誰かがいるだろうか──それが、猫だけならいいのに、なんて何とも身勝手な願望だ。
誰よりも幸せでいて欲しいと思う癖、孤独を望んでいる。 こんなに歪で醜い感情なんて、知りたくなかった。]**
(90) 2019/05/22(Wed) 23時半頃
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