人狼議事


310 【R18】拗らせ病にチョコレヱト【片恋RP】

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【人】 地下軌道 エフ


  会社で配った残り物?
  別に、それくらいなら協力するけど。

[ほら、と。つつく手を返し、受け皿のように広げた。
 ――それから、一歩踏み込んで。]

        ……だから、見るな。

[広げた手で、彼女の目を覆ってしまおうとした。
 甘い香りを塗りつぶすタバコの匂いと、耳上から振る声。

 忘れろ、と囁く。]*

(170) Pumpkin 2021/02/21(Sun) 21時頃

【人】 地下軌道 エフ

[永遠の欠落を抱えた己には、完璧であるための道具など必要なかった。だから差し出された小さな鏡>>180で己を捉えるまでに少しの時間を要する。
 生気の薄い顔を乗せた男がこちらを見ていた。これまでで一番の拒絶を眉間に示し、視線を奥の持ち主へ向ける。]

  成立しなかったら、なんなの。

[叱られた子どものような抵抗は、繰り返しお互いの無関係を紡いだ。
 たとえ、飛沫舞う揺らぎを与えたことがあったとしても、それだけだ。たった一度きり。それ以外、何もない。彼女の瞳に何が映ったか>>1:-42なんて、可能性すら思い至らない。
 形のいい唇から漏れるため息>>181に、皮肉でもおまけしてやろうかと開いた口は、]

  ――は?

[たぶん、あの時>>1:169と同じ音を放った。]

(208) Pumpkin 2021/02/21(Sun) 23時半頃

【人】 地下軌道 エフ

[適当な言葉で逃れようとしても認可されず、
 遮ろうとした手さえ貫くような眼光>>184
 眉間を示す指先>>183は一部の隙もない。

 兄に重ねた完璧な表層は冷水に揉まれ、既に跡形もなくなってしまったのに、彼女は未だ抗おうとする。
 敷波玲は敷波玲のまま、真正面から己の前に立ち塞がっている。

 開き直りとは違う。
 それよりもっとまっすぐな、己には真似できないものだ。

 ――目を、逸らした。]

  ふは、

[瞳孔の降下と共に、力のない笑みを口の端から漏らす。
 袋>>184を押しつけられても抵抗せず、一回転を挟んで帰っていく背を見送ることもなく、のっそりと『朧の間』へ身を潜り込ませた。

 引き戸が閉まる。   鍵の落ちる音がした。]

(209) Pumpkin 2021/02/21(Sun) 23時半頃

【人】 地下軌道 エフ

― 『朧の間』 ―

[時間を示すものを見失った部屋は、ただ夜であることしか教えてくれない。窓の外を覗いても、男性と共に犬が駆けるのはもう暫く先のことだろう。
 今日と明日の境目も分からぬまま、開けっ放しだった窓を閉じ、電気を消した。タバコの匂いは随分薄れていたが、ようやく通るようになった鼻でも残滓を辿ることができる。

 彼の匂いはどこにもない。ほんの僅かでも残っていたとして、既に潮風に乗って消えてしまっただろう。手元に視線を落とすと、たったひとつの袋が月光に影を落としていた。]

  ……。

[寿命の近いデスクチェアは、腰掛けるだけで悲鳴に似た音を立てる。
 茶色のリボン>>161を引いて、惜しむことなく手を離した。手触りのいい一筋は、暗い足元に落ちて見えなくなる。]

(210) Pumpkin 2021/02/21(Sun) 23時半頃

【人】 地下軌道 エフ


  ……あま。

[クッキーを歯先で折った。金平糖を奥歯で噛み砕いた。
 粉々になるまで、これを与えた女のことを考えている。

 兄と勝手に重ねたことへの詫びだった。
 彼女には何の非もなかったから。

 カレーの料金代わりだった。
 彼女には何の貸しもなかったから。

 こちらからすれば、これでイーブンだったのだ。
 体調を崩したことだって、別に強がりを言っていたつもりもない。己の不摂生が招いた結果であり、あの日の出来事はきっかけに過ぎない。

 心から、関係ないと思っている。
 凪いだ海は元通り。何も残らないはずだった。

 それなのに、忘れられないのだという。]

(212) Pumpkin 2021/02/21(Sun) 23時半頃

【人】 地下軌道 エフ



                  [ご愁傷さま。]

(213) Pumpkin 2021/02/21(Sun) 23時半頃

【人】 地下軌道 エフ

[肩が震えていた。空いた手で前髪を掻き上げる。
 眼鏡がズレて視界がぼやけた。]

  ……ホント、趣味悪。

[笑いの間に漏れた声は、嫌悪に濡れていた。

 表層を剥いでなお、正しくまっすぐあるのなら、
 それこそ敷波玲の本質なのだろう。
 踏み込むつもりはなくとも、見えてしまう。
 まっすぐであるがゆえに、望まぬ奥まで。

 正しいものを、己は何も持っていなかったから。
 正しいものは、嫌いだった。]

(215) Pumpkin 2021/02/21(Sun) 23時半頃

【人】 地下軌道 エフ

[たったひとつの素朴な色に手をつける。
 持ち上げた感触は軽く、振れば微かに音もした。
 滓を払い開いた先の文字>>185を目に留める。]

  ――。

[折り畳んだ紙を小麦色の籠ごと口に含んだ。
 嚥下した言葉は男の内側で形を失い、溶けていく。]*

(216) Pumpkin 2021/02/21(Sun) 23時半頃

【人】 地下軌道 エフ

― それから ―

[とある1日が終わったところで、男に変化はない。

 少しだけ、彼と顔を合わせる機会が減ったり、
 少しだけ、彼女と関わることが増えたり。

 あったとしてもそれくらいで、もし住人たちに何かあったとしても、男が気づくことはないだろう。相変わらずひとりきりの部屋で、夜な夜な文字を連ねるだけだ。]

(222) Pumpkin 2021/02/22(Mon) 00時頃

【人】 地下軌道 エフ

[書籍化に関して作家ができることなどたかが知れているが、それでも仕事の量は増えた。今日もまた引き戸の外に飛び出して、新しい革靴を鳴らす。

 一度、絵画の前に立ってみたことがあった。
 真正面から眺める景色は、窓下に広がる海とはまた違った色合いを見せてくれる。

 それは確かに特別だった。
 けれど、恋ではなかった。

 玄関の片隅に佇む額縁を視線でなぞり、賀東荘を出る。]

(223) Pumpkin 2021/02/22(Mon) 00時頃

【人】 地下軌道 エフ

[己の名が書店の片隅に並ぶのは、もう少し先のことだ。
 顔を上げる。庭の松と並ぶように、街道に淡い桃色が花開いていた。]

  ……もうそろそろかね。

[色のない手のひらで、胃の辺りを撫でた。

 ――恋を、している。
 拗らせた想いを、手放せぬままに抱えたまま。

 そんな歪で、捻くれた男の下にも平等に、

                   春は訪れる。]*

(224) Pumpkin 2021/02/22(Mon) 00時頃

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