人狼議事


296 ゴールイン・フライデー

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【人】 宇宙原理衆 ウツギ

[雨風の強い日は留守番を命じたが、
 それ以外は外出の支えとなっていた革靴は
 連れ帰ったばかりの野良猫めいて慣れなかった。
 
 外回りの営業マンならまだしも、
 家と通勤する車、駐車場と職場程度の距離では
 休日に出歩かず過ごすのと変わりない。
 靴の値段の高さを気にして、
 滅多に履かない訳ではないというのに
 足の一部となってくれるまで暫く掛かるだろう。

 大事に大事に、けれどしっかりと履き続けて
 靴底が穴が空いてしまった靴を手にし、
 今履いている靴と比べながらブラシ掛けをする。]

(2) 鯖 2019/05/23(Thu) 23時半頃

【人】 宇宙原理衆 ウツギ

[買った店には靴を作った職人がおらず、
 機械的に直すのも難しいと断られてしまい。
 適当な店で修理することも考えたが、
 そうなれば違う靴になるのでは、と恐れた。

 そうして一月、半年、十年、十五年。
 まさか、同じ人の作る靴に再び出会うとは。]

  こうして見ると、似てるな。お前ら。

  ……値段はちーーー、っとも似てないけどな。

[もう履いていないのだから
 汚れも埃も付きにくくはなっていても、
 履けない代わりにと飾っている分、
 表面に纏いやすくなった埃をブラシで払う。

 クリーナーを塗り、手入れし続けた本革は
 先輩風を吹かして深く円やかなブラウンを湛え
 経年劣化をどうにか防いでるように見えた。]

(3) 鯖 2019/05/23(Thu) 23時半頃

【人】 宇宙原理衆 ウツギ


[バイトが来られないから代わりに、という、
 金曜夜の残業は随分と心を干上がらせてくれた。

 どうにか職場を抜け出し、
 心のオアシスことタヴェルナに着いたのは
 なんとラストオーダーの数分前。

 残り少ない客を見ても、当然彼の姿はなく。
 もう帰ってしまっただろうなとやさぐれ、
 しかし車で来た以上は酒も飲めず。

 運転代行を呼ぶ金はここへ落としてやろうと
 迷った末に適当なメニューを指差した。]

(4) 鯖 2019/05/23(Thu) 23時半頃

【人】 宇宙原理衆 ウツギ

[そういえばあの人、
 珍しく今日は来なかったのね。と、
 心配そうに独り言を漏らした女主人。]


  何かあったんですか?
  ……いや、実は俺も、気になってまして。


[あの人が誰を差すのかも知らない癖に、
 苦笑いして話を合わせたのは第六感の賜物。
 知り合いだと勘違いしてくれたのか、
 個人情報に厳しい彼女の口が僅かに緩んでくれた。]

(5) 鯖 2019/05/23(Thu) 23時半頃

【人】 宇宙原理衆 ウツギ

[先週、客の一人が急に帰ってしまい、
 急用だからとは言っていたけど
 今思えば体調でも崩してしまったのではないか
 引き止めて話を聞いてやれば良かったのかと
 不安と後悔による、彼女らしくない吐露。

 その客が注文したメニューが、
 ちょうど自分が選んだものと同じだったらしい。

 そして溜め息を吐く彼女の視線が落ち、
 貴方みたいに立派な靴の人だったわ、なんて、
 そこまで聞いて憶測は確信に変わった。]

(6) 鯖 2019/05/23(Thu) 23時半頃

【人】 宇宙原理衆 ウツギ

[店に来ていたのは知っていて、
 けれどアーサーに挨拶している僅かな間に
 霧のように消えてしまったあの人。]

  ……これから、暑くなるから、
  体調が悪くなったのなら
  出来るだけ早く元気になってもらいたいね。

[貴方が良く素敵な靴を履いていたから、
 真似をするように、また革靴を履き始めたのに。

 それを快く思わなかったのだろうか。
 別の何かがあったのだろうか。
 けれど、彼とはこの店だけが唯一の接点。
 どうしたって、会って、話すことなど、とても。]

(7) 鯖 2019/05/23(Thu) 23時半頃

【人】 宇宙原理衆 ウツギ

[───…その店を訪れたのは、
 世間の人が最も嫌う曜日の深夜。

 片手には箱を収めた紙袋を提げ、
 百貨店の店員に聞いた店名と住所を元に
 現代機器の案内に従って辿り着いたのだが。
 店の名が書かれた看板と店、
 そして地図の現在地を忙しく視線が往復した。

 通りにショーウィンドウもあり、
 高価な靴を売るだけあって立派な店構え。
 しかし、店の中に異様な薄暗さを感じるのは
 何も時間だけが原因ではあるまい。

 置いてあるのが靴でなければ、
 魔女の館か何かかと思うような雰囲気だった。]

(41) 鯖 2019/05/25(Sat) 00時半頃

【人】 宇宙原理衆 ウツギ

[昔買った靴の、Rの製作者を知りたい。
 製作者本人の修理であれば、
 靴もそのままに生まれ変わってくれそうだから。

 そんな夢見がちな思考で飾り続けた靴を携え、
 店に立っているのが今だ。

 駄目元で聞いてはみるもので、
 この前買い物に来た時のあの詳しい店員に、
 この靴の作った人が誰か、
 もし店があるなら場所を知りたいのだと聞けば
 両手の時間も掛からずにメモを寄越してくれた。

 メモに使ったのが当人の名刺、というのが
 敏腕の商売人であると感心をし。
 訪ねるなら夕方以降に、というアドバイスも
 店員の域を超えた気もするが、気にせず。]

(42) 鯖 2019/05/25(Sat) 00時半頃

【人】 宇宙原理衆 ウツギ

[問題は、夕方には店を見つけたというのに
 いつまでも迷って周囲をぐるりぐるりと回った結果
 日付が変わる頃まで時間が進んだことだ。

 耳を澄ませば、夜のしじまに響く槌の音。
 本革は日光を嫌うから夕方以降に作業するのだと
 店員から聞いた通りではあるようだが、
 逆に作業している所を邪魔しても良いものか。

 営業のために電話を掛けることも、
 なんなら直接赴くことも苦ではないのに、
 この槌を振るう相手がある意味で初恋の相手だと
 意識しまっては、足裏に根が蔓延る。]

(43) 鯖 2019/05/25(Sat) 00時半頃

【人】 宇宙原理衆 ウツギ

[ここ一番で日和る自分への戒めとして、
 彼に差し入れると決めて持参したワインがある。
 それが自分の誕生した年と同じなのは、
 他意は、特にはない、ということにしておくとして。

 店のドアを開こうと伸ばした腕は、
 今度こそ、その取っ手を掴むことに成功した。

 カラン、とささやかに鳴るドアベルは
 ロックのウイスキーの氷が転がる音にも似て。
 作業場まで足を踏み入れる勇気はなく、
 恐らく、ここが本来の店主がいる場所だろうと
 当たりをつけた場所でじっと待ち続け。]

(44) 鯖 2019/05/25(Sat) 00時半頃

【人】 宇宙原理衆 ウツギ

[はじめまして。
 貴方の靴を、最近と十何年も前に買った者です。

 靴裏が擦り切れてしまったこの靴を、
 また履きたいので修理をお願い出来ますか。

 言おうとする台詞を頭の中で反芻するなんて、
 いい大人がするものでもないが。
 こうやって練習でもしておかないと、
 オーダーメイドの靴をお願いしても?などと
 塩茹でパスタ週間の延期が決まってしまう。

 止まった槌の音に緊張で喉が干上がり、
 会いたいのに会うのが怖いという、
 恋する乙女じみた感情をどうにか押し殺し。
 初めて目の当たりにした彼を見て、確信した。]

(45) 鯖 2019/05/25(Sat) 00時半頃

【人】 宇宙原理衆 ウツギ




[初めて目が合った、という事実より、
 優先されるのは揺れ動く情動と確立された認識。

 ───…しばらくの間、
 塩でも舐めて生き延びることになりそうだ、と。]*

(46) 鯖 2019/05/25(Sat) 00時半頃

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