88 吸血鬼の城 殲滅篇
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[ともあれ、考えることは後でもできる。 まずは、生きて城から抜け出すことが肝心だ。 生き延びることさえできれば――時間はもう有限ではないのだから。
些か不自然さの残る足取りで城門へと歩き出した。 城の出入り口に落とし格子が降りていることは知らなかったが、知っていたとしても失望はしなかっただろう。今ならば、手段はいくらでもあると思われた。 開かれた世界を前に、悪霊はまとった肉体の内側でほくそ笑む。]
――世界は広大だ。**
(174) wuming 2012/05/06(Sun) 11時頃
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[ヘクターが肩を竦めれば>>143 女はくすりと小さく笑み零した]
――…はい ずっと、お傍に居るとお約束しましたから 何があろうと、今度こそ 最期の一瞬までヘクターさまと運命を共に
[主が長く眠りにつくことになったあの時は 何も分からず守られるだけで果たせなかった事。 もし次があれば少しでも助けになりたいと思いを綴る]
(175) helmut 2012/05/06(Sun) 11時頃
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[女の訴えは聞き届けられず長い通路を抜ける間も 抱き上げられて距離は密となったまま。 おずおずと顔上げて主の紅を見詰める。 今はその優しさに甘える事にしたかコクンと一つ頷いた。 少しばかり過保護な気がするが 大事にされているようで、恥ずかしくも嬉しい]
夜の王にしてアヴァロン治める我が主・ヘクターさま おかえりなさいませ 御帰還を、ずっと、心待ちにしておりました
[物見塔で二度目の死を迎えた女は あの時言えなかった言葉を想いこめて囁いた**]
(176) helmut 2012/05/06(Sun) 11時頃
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[生きると決めた以上、いつまでも倒れてはいられないだろうと身体を起こす。 クラリッサの復活にどれほどの時間がかかるかはわからぬ。 それでも、]
──支度をせねば。
[手をついてゆっくりと立ち上がり、塔の端へ向かった。]
(177) enju 2012/05/06(Sun) 11時半頃
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[浄化の光に晒された身体は、外観は崩れ落ちていないまでも燻り宿る痛みに苛まれ、ヒューの動きは関節の錆びた人形のようにぎこちない。
ドナルドが螺旋階段を降りていったのは知っているが、そのルートはとらず、南北の塔の狭間に身を投げた。]
(178) enju 2012/05/06(Sun) 11時半頃
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── 中庭 ──
[城館の端からまっすぐに落ちればそこは壁に囲まれた中庭。 自分が人としての命を終えた場所だ。
手始めに「弔い戦」の印であった額の布をほどき、その余の装備・着衣も外して、身ひとつで井戸の清水を汲み上げ、頭から浴びた。
水気を含んで色濃くなった髪は頭蓋の整った形をあらわにして、耳の後ろから肩へとつながる肉の稜線を際立たせる。 小柄ながら鍛錬をかかさぬ体躯の薄い皮膚の下でしなやかな筋肉の動きが作る起伏を、冷たい水が流れ伝った。]
(179) enju 2012/05/06(Sun) 11時半頃
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[血と汚泥を拭い去った後で、しばし思案し──闇の血で象ったフランベルジュを手にとると、その形を解いて編み直す。
身体を包む深紅の衣。 髪の色とも馴染んで具合がいい。]
(180) enju 2012/05/06(Sun) 11時半頃
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[仕上げのように首もとのホックをかけて、左右へと振った視線が、ふと、北の塔の基部に留まる。
扉が薄く開いていた。
吸い寄せられるように、中へと入る。]
(181) enju 2012/05/06(Sun) 11時半頃
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── 北の塔 1階 ──
[湖に向かって開けた窓の前に小さな机があり、筆記具が置かれている。 学習室というより、詩作にでもふけるのか似合いそうな部屋だった。 壁にはリュートと、その他に名前を知らない楽器がかかっている。
それらを見上げることに気をとられているうちに、何気なく後ろに回した手が机の上の玻璃のベルに当たり、転がす。 慌てて振り返り押さえたが、それは思いのほか澄んだ高い音を奏でた。]
(182) enju 2012/05/06(Sun) 11時半頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
enju 2012/05/06(Sun) 11時半頃
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[事を成し終えた女の耳に澄んだ音色>>182が微かに届く。 不思議と惹かれるベルの音に誘われるように北の塔へと向かった。 通り過ぎはしても使うことのなかった一階にある部屋の 半ば開かれた扉に手を掛ける。 誰の為の部屋かは知れぬが使い手の趣向が窺える品々の中 深紅を纏う騎士の姿が目に留まる]
ヒュー ?
[何処か趣違って見えるその横顔に呼びかける声]
(183) helmut 2012/05/06(Sun) 12時半頃
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本屋 ベネットは、メモを貼った。
enju02 2012/05/06(Sun) 12時半頃
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[玻璃の鈴より柔かに透き通る声で名を呼ばれる。
振り向けば、空虚だった城の灰色の石壁の前に、 一番、会いたかった人がいる。]
姫――
[手を伸ばしかけ、畏れ多くて止めた。 もっと見つめていたいのに、視界が滲んだ。]
(184) enju 2012/05/06(Sun) 12時半頃
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…お待ちしておりました。
[こみあげてくるものを言葉にすることができない。 ぎこちなく、クラリッサの前に膝をつくと拳を握りしめる。 俯いたまま、嗚咽を堪えた。]
(185) enju 2012/05/06(Sun) 12時半頃
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[潤みを帯びる騎士の眼差し>>184と呼び声に胸が熱くなるを感じる。 家族を除けば、一番長い時間を共に過ごした存在で その関係を壊しがたく魔性であると告げられなかった相手。 正体を知って尚、変わらぬ忠節を捧げて呉れた騎士]
――…ごめんなさい 騎士であるあなたに何も言わず姿を消して
[ゆっくりと歩み寄り手の届くほどまで距離を縮める]
――…ありがとう ヒューが呼んで呉れたから還って来られた 私を呼び戻す為に多くの血を流した事も、知ってる
[膝をつき俯く騎士の前で女もまた冷たい床へと膝を折る]
(186) helmut 2012/05/06(Sun) 13時半頃
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[嗚咽堪える気配は微かな肩の震えから伝わるか。 女は両の手を騎士へと向けると 彼の頭をそのまま自らの胸へと引き寄せる動き]
我慢しては身体に毒よ 誰も見ていないから……
[せき止められた騎士の感情をそと撫でる*]
(187) helmut 2012/05/06(Sun) 13時半頃
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[艶やかな唇に乗せられる謝罪、その優しさは変わることなく。 慈雨のように沁み入る。
見守るしか、待つことしかできなかったクラリッサの辛さこそ如何ばかりかと思うのに、幼子のごとく頭を抱き寄せられれば、物心つかぬうちに他界した母に慰められているようで、郷里と父をあるいは姉妹を失った時にもこれほど泣きはしなかったものを、熱い涙は堰を切って溢れた。]
(188) enju 2012/05/06(Sun) 14時頃
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……、 姫がお隠れになっている間に、さまざまなことがありました。
おれも、姫の意に染まぬだろうことをしました。 それでも今、
こうして、再び姫にお目にかかれたことが 嬉しくて たまりません。
(189) enju 2012/05/06(Sun) 14時頃
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[膝を交える距離。 千々に乱れる思いに揺さぶられるも、歯を食いしばり顔を上げる。 拳で両眼をぬぐうと、膝行で一歩退き、息を整えた。]
姫が仰られたとおり──おれは多くの血を流し、奪い、 一度は騎士の自負すら捨て、 人としての倫も外れました。
けれど、あなたへの忠節は変わらず、ここにあります。
[胸へ掌を添える。]
(190) enju 2012/05/06(Sun) 14時頃
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姫――…、 おれはこれまで、真にあなたを知らずにいました。
あなたがどれほど深い闇にひとりでいたのかを。 どれほど孤独であったのかに気づけないまま、あなたを護っていると自負していました。
どうか、この先は、その闇の中でも伴することをお許しください。 あなたの傍らにあり続けることを。
(191) enju 2012/05/06(Sun) 14時頃
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[溢れる騎士の涙を受け止めて 落ち着くまで赤い髪を柔く撫でた。 語られる一つ一つの言葉に耳を傾けていたが 騎士が退く気配に女は腕を解き、それを胸もとで重ねて]
――…全て私を想ってして呉れた事でしょう ? 貴方の手を血で染めてしまったのは私の弱さが招いた事 罪深きは、この私……
[祈るかのような姿勢で眸を伏せる]
私もまた貴方に逢えて嬉しい
[拳で拭われた涙の跡残る騎士の双眸に深紅を交え あいたかった、と小さな紡ぎ]
(192) helmut 2012/05/06(Sun) 15時頃
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[崩れて消えてしまいそうな、濡れた瞳。 自分の手で打ち壊してしまいたくなるような、強情な―――]
ああ。 戻ってきた。
["娘"が蘇った事実は端的に肯定し、 目だけを細める。笑みの形に。]
そうだ。 苦しめるために眷属へと為し、 あれのために血を流させた。
…おまえは、良い玩具だったよ。
[嘲笑。 或いはそれに似た、何か。]
(193) nekomichi 2012/05/06(Sun) 15時頃
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――…変わらぬ忠節をありがとう 私の真を知って尚、変わらずにおもって呉れたこと感謝します
[秘めた心を汲むような騎士の言葉にふと目を細める]
闇を知るのは私一人だったけれど ヒューとリンダが傍に居て呉れたから 孤独感も寂しさも、癒された 貴方に護られていたのは確か――…
[自負は錯覚でないと伝える声は真摯 騎士の掌が添わされた胸へと視線落とし]
(194) helmut 2012/05/06(Sun) 15時頃
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叶うなら永久に我が騎士として傍にいて欲しい ヒュー、あなたを頼りにしています
[騎士の忠節に応えるように 儚さが滲む声に深く確かな響きをのせて 女はそろと立ち上がり、 白き手の甲を騎士へと差し伸べた*]
(195) helmut 2012/05/06(Sun) 15時頃
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……だがな。
[笑みを収めた後は、 怒ったような、困ったような 表情の選択に迷っているような顔になる。 溜息が、ひとつ。]
そんな程度にしか思っていない奴のために、 オレがわざわざここまで来ると思うか?
(196) nekomichi 2012/05/06(Sun) 15時頃
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[苛立ち。 もどかしさ。 煮え切らない感情に、拳を握る。]
代わりのある奴なんざいねぇよ。 おまえの代わりがいるわけねぇだろ?
困る困らないの問題じゃねぇんだ!
[口調が、次第に荒々しくなっていき、 最後はほとんど怒鳴るように言葉を叩きつけて ドナルドの身体を、再び床に突き倒した。]
(197) nekomichi 2012/05/06(Sun) 15時頃
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[荒い息をひとつ吐き出し、 虚空を握るように、手を突き出す。 闇が噴き出し、現われたのは刃の広い小剣。]
―――…… やっぱり、おまえはもう一度死ね。
[淡、とした声で宣告する。]
(198) nekomichi 2012/05/06(Sun) 15時頃
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……おまえを殺して、生まれ変わらせてやる。 真に、オレの息子としての生を…
… 三度目の血を、くれてやる―――
(199) nekomichi 2012/05/06(Sun) 15時頃
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[静かな瞳で、ドナルドへと切っ先を向け]
……これが、オレからおまえへの、愛の形だ。
[その胸めがけて、突き出した。]
(200) nekomichi 2012/05/06(Sun) 15時頃
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[会いたかったと、ありがとうと、心に言葉の重なる歓び。 涙のあとに刻まれた笑みは、傍らに、頼りに、の望みを託されて勇気に昇華される。]
もったいないお言葉、 ありがとうございます…!
我が心はクラリッサ姫に、 我が身命は先代に捧げ、血盟騎士としての誓いを全うする所存。
[差し伸べられたたおやかな手を押し頂き、わずかな震えの後、静かに唇を落とす。]
(201) enju 2012/05/06(Sun) 15時半頃
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[そのまま白い手首をとらえたのは、騎士としては礼を失する行いである。 深紅の双眸を仰ぎ見みる姿勢のまま、ヒューは続けた。]
まことに僭越ながら… 姫にお願いがございます。
(202) enju 2012/05/06(Sun) 15時半頃
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おれが 新しい命を生きる最初の糧に──、
姫の血を いただきたい。
[踵を揃えて立ち上がれば、背の高さは逆転する。 凛とした琥珀が長い睫毛を見下ろした。]
(203) enju 2012/05/06(Sun) 15時半頃
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