296 ゴールイン・フライデー
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[金曜日の夜。 カウンターの隅にて堪能するのは、一杯のグラスワインと、その時々で変わる一品料理と、それから──シュパーゲル。
春の歓びを教えてくれる野菜の王様が出回るこの時期だけ、週に一度の特別な食事はより、贅沢なものとなる。 タヴェルナのそれは、皿もシュパーゲルも熱々で、バターの脂がもったりすることもなく、茹で加減も絶妙だった。
根元からはたっぷりとした水分と甘味が、先端はほろ、とした食感と仄かなえぐみが咥内に広がったところでよく冷えた辛口の白ワインを流し込む。]
はあ──…うめえ
[熱いうちに、が鉄則であれ、一気に食べてしまうのは勿体無い。グラス片手に周囲を見渡すことで、フォークに休憩を与えよう。
賑わう店内、同じように食事を楽しむ様子を羨むようにも、肴にするようにも見えるか。 愛想のない一重が探す姿はいつだって同じで、視線が止まるのはほんの数秒。]
(6) 2019/05/17(Fri) 21時半頃
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[週末のタヴェルナで、カウンターに腰を据える時間はそう、長くない。裾にオイルの沁み込んだ仕事着、無精髭、泥沼めく双眸の、柄の悪い大柄の猫背がいつまでも店の一角に鎮座していては、陽気な酒場の雰囲気が台無しだろう。
くしゃくしゃの紙幣を伸ばして渡し、釣りまできっちり受け取り店を出る。初めてマリアンヌの世話になってから何年経ったか、随分と立派になった店構え、看板を眺め、ポケットから白筒を取り出した。
火をつけるでもなく、ゆら、と唇に挟んで遊ばせながら、さりげなさを装って背後を窺う。ほどよく落ちた照明に浮かぶのは、心から食事を楽しむ笑顔の数々。
混ざることの叶わぬ輪の外で、祈るのは些細なこと。
どうか、来週もまたこの場所で会えますように。 会えない一週間の間、不幸か訪れませんように。]
(10) 2019/05/17(Fri) 22時半頃
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[どうか、──どうか。 この歪な想いに、姿に、気付かないで。]**
(11) 2019/05/17(Fri) 22時半頃
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[一昨日の食事を思い出しながら、のそりと起き上がる。 見の丈に合った胃袋は、もう長いこと満腹を知らない。]
……腹、減った
[残り僅かとなったパンの耳は、日が経ったことでやや乾いていた。すかすかの裡を投影したよな冷蔵庫を開け、ベーコンと卵、……と必要な材料を取り出す。
スキレットに並べるベーコンはやや幅広に、じっくりと脂を溶かし出す間に、塩コショウとにんにくで味付けした卵液へパンの耳を浸した。バターなんてものはないから、ベーコンから滲みた脂でパンを焼く。 野菜不足は……また週末、タヴェルナで補うとしよう。
煙草と酒を控えようとも、節制に務めようとも、味の拘りを捨てられなかったのが珈琲豆。 塒にある食材の中で一番の高級品だ。]
(32) 2019/05/18(Sat) 02時頃
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[深入りの濃い珈琲は咽喉から胃へ重く流れて心地いい。 カリカリに焼けたベーコンとフレンチトーストをもそもそ咀嚼しながら、作り付けの棚へ茫洋とした視線を向ける。 工具や仕事に使うパーツなど、ごっちゃりとした部屋の中でこの一角だけが整然としていた。
其処に並ぶ幾つかを、彷徨う無骨な指が取ったのは、赤い印のついたカレンダー。
魔が差したとしか言いようのない、あの日から早、十年。 離婚した後も娘には会いたいからと、妻の要求はすべて呑んだ。身の丈に合わぬ慰謝料と養育費に顔色を失くしたのは事実だが、彼女の人生に、嘘と裏切りと形ばかりの誠意で疵をつけてしまったことを思えば足りぬとさえ思ったし。
月々の支払いが闇金に手を出したり、内臓を売らずに済む範囲だったのは、最後の優しさとやつだろう。 性的欲求を含む愛情は同性にしか抱けないが、妻も娘も、家族として大切に思っていたことは、理解してくれた。]
(33) 2019/05/18(Sat) 02時頃
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[漠然とした欲求不満から、ふらりと足を向けたバー。 なんとなく波長が合いそうな男と、軽い触れ合いを交え、近い距離で酒を飲んだだけだった。15の夏に覚えたようなときめきや劣情とはほど遠く、ただただ、気分が良くて、楽しくて──帰宅後にベッドの中でひとり震えた。
ああ、……やっぱり、と。 家族がいればそれでいい、満足だとうそぶいても、抑えきれない慾が今もあること。"二度目の恋"を知りたいと想う気持ちが、ずっと胸のどこかに巣食っていたこと。
気づいてしまったら、自覚したらもう、だめだった。 次は、ただ酒を飲むだけでは帰れないかもしれないと思えば怖くて堪らず、元より此処まで自身の性癖とも向き合い切れなかった臆病者がこの先、不貞と秘密の露見に怯えながら暮らせるわけがなかった。
すべてを打ち明け、激昂と罵倒、慟哭と家じゅうのものを投げつけられ、額と心に消えない瑕を負い、十数年に渡った穏やかな時間に終止符を打ったのは、告解から三か月後。]**
(40) 2019/05/18(Sat) 02時半頃
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[どんな人生を歩もうと、誰にだって否応なく平等に、夜と朝は来る。
くあ、と大口を開けて欠伸をかみ殺し、慣れた手順で取り外すのはべっこりと凹んだドア。廃車予定の車からまだ使えるパーツを抜き取り、修理や販売に使えるよう整備する。面倒だが嫌いじゃない作業。
人の心もこうして取り変えて、不要なものを捨ててしまえたらいいのに、なんて青臭い感傷に浸ることもあったが、そんな若さは残っちゃいない。]
にしても、勿体ねえよなあ ちいと手を掛けりゃまだ全然乗れるってのに そりゃ最新式に比べりゃ燃費は落ちるけどよ… イマドキの餓鬼にゃわかんねえんだろうな、この良さが
[数年代前のやや古めかしいセダンは、依頼者が親から譲り受けたものらしい。維持費や諸々を考えれば、事故を機に買い替えを検討するのは妥当ではある。 理解していようとついぼやいてしまうのは、やや四角張ったフォルムが好む形であるのと、今はまだ手が出せぬ物であるから。
これで海岸線を走ったらさぞ気持ちがいいだろう。 遠巻きに盗み見るだけの顔が、助手席にあったら──。]
(78) 2019/05/18(Sat) 22時半頃
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[──ガン!! 決して邪でない、それこそ思春期の餓鬼めいた妄想に気が抜けた瞬間、手元から外したばかりのドアが滑りおちた。]
あ゛──…! やっべ、……あーあ…まじかよ…
[勢いよく傾き転がるそれがブーツの爪先を直撃したが、鉄板仕込みの安全仕様のお陰で然程、痛みはない。 自分の足指が折れずに済んだのは僥倖だが、繊細なドアの角が思いっきり内側に曲がっている。 これを直すのは少々、面倒だ。
オイルと煤に汚れた掌を額に宛がい天を仰ぐ。 待ちに待った金曜日、残業なんてしたくないのに。]
(79) 2019/05/18(Sat) 23時頃
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[──ある程度の作業を終え、今夜はこれで勘弁と怪我の悪化したドアに手を合わせ、いつも通り最低限の身支度だけ整え、ブーツの踵を鳴らしてタヴェルナへと駆け出したのは、普段より遅い時間。
膝に手を突き、軽く呼吸を整えてから、白筒を取り出し火をつける。食前の一服はカウンター席を陣取る前の、いわば心の準備。 "いつもの時間"に遅れようとも、これだけは外せない。
あの人は今日も来ているだろうか。まだ居るだろうか。 先週と変わりはないだろうか。
脳裏に残る表情を反芻し、落ち着け、と紫煙を吐き出す。 もし、いつものように空席を探す素振りで見渡す店内に希む姿が無かったとしても、落胆を見せないように。]
(92) 2019/05/19(Sun) 03時頃
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[ゆっくり、もったいぶるように白筒一本を灰に変える間、店から出て来たのはカップルが一組、友人連れが一組。 あの人の姿は、なかった。なら、まだ居るか、それともこれからの来店となるか。
革の端切れで出来た携帯灰皿に吸い殻をねじ込む頃には呼吸も整い、汗も引いていたが、身体が火照って仕方なかった。 汗ばむ掌を腿で拭い、ゆっくりとドアベルを鳴らす。
出迎えてくれた看板娘に笑いかけ、繁盛ぶりや近況を投げかけながら、定位置は決まっている癖、まるで空席を探すように周囲に視線を巡らせて───。
小さく、小さく。 息を飲み、深く吐き出す。
酩酊に似た眩暈。思わずふらついた足は、野菜不足かも、なぞと笑って誤魔化し、いつものカウンター席へ。
さあ、今夜は何を食べようか。]**
(93) 2019/05/19(Sun) 03時頃
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