231 獣ノ國 - under the ground -
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― 寸刻 ―
[ ――― ”ぼくら”の声が聞こえる。
ヒトという生き物に諦めを抱く梟に
僕よりも強く激しく外と自由を希う針鼠
呼吸器で覆われた鮫の声を聞いた時は
普段聞くより幾許か 鮮明に聞こえて
彼の難儀な重装備ぶりを思い出す。
……それまでは、よかったのだけれど。
”彼”の声に 僕は押し黙る。
( だって そいつは )
どうしても 脳裏にちらつかされた「鍵」が過って
ジリヤに「鍵」の話なぞをしたらと考えたら
ふるりとひとつ 背筋が震えた。 ]
……そとを飛ぶきみは
きっととても綺麗だと おもう。
見たいな そんな日が来たのなら。
[ 暖かな月夜も 冷たい雨の夜も
僕はどちらも知っているけれど
きっと彼女が飛ぶ空は 星に包まれている。
繰り返すことも
喉を詰まらす事もなく出た想いの言葉は、
誰に聞かせるでもなく、零れた。*]
|
……………………。
[声を、掛けられた>>119ような気がした。 口の中で小さく何かを呟いて、私は目を開ける。 私は何を言ったのか。目を開けた途端、忘れてしまった。 夢なんて、そんなものだ]
……すみません。
[目をこすって、私は我慢できなかったあくびをひとつした。こんなところで眠ってしまうなんて、なんという失態]
部屋に、戻ります。
[別の場所。それは多分良くない。 きっと一番誰にも煩わされることなく眠れる場所は、自分の部屋だ。 眠気を誤魔化すように何度も瞬きをしながら、私はゆっくり立ち上がった]
(122) 2015/07/11(Sat) 00時半頃
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[本物の空は、青いのだという。
本物の夜空は、月が光り、星が瞬くのだという。
空から雨という水の雫が降ることもあるのだという。
どれも私は知らない。知らないけれど]
……ありがとう。
[フィリップが翼を羨んでいることは知っている。
色を持たない私が、夜を飛んでも、きっと闇に溶けてしまうだけだと思うのに、フィリップはきっと綺麗だと言ってくれる。
モノクロの私より、フィリップの方がよほど綺麗だと思うのに]
そんな日が来たら、いいと思うわ。
[来るとは思っていない。けれど、来たらいいと思う。
外の世界に出て、私が夜の空を飛ぶ日。
そんな日が来たら、フィリップに見せてあげよう。
そう、それに……]
私の翼は大きいから。
一人くらいなら、連れて飛べるかもしれないわね。
[空に憧れているフィリップを連れて、飛ぶことだって、できるのかもしれない。
もしも、そんな日が来るのなら]
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[今の私は、眠いことを隠す余裕もなくて。目をこすりながら私はマーティンに顔を向ける]
部屋……すぐそこですし。 送っていただくほどのことは……、
[部屋も大浴場も同じ第一棟。大した距離ではない。 大丈夫だと言おうとして、送ろうかと申し出られた>>125ということは、今の私はよっぽど危なっかしく見えるのかもしれない、ということに思い至る]
私、部屋に戻る途中で、また寝落ちしそうに見えますか。
[そんなに危なっかしく見えるのなら、送ってもらう方がいいのかもしれない。 大丈夫です、なんて大見得切って、どこかでまた寝落ちてしまったら、そっちの方がよっぽど恥だ]
(127) 2015/07/11(Sat) 01時頃
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[やっぱり私はわずかな道中で寝落ちしそうなほど、危なっかしく見えるらしい>>129]
……でしたら、お願いします。
[うるさくしたりはしないということだし>>125、なにしろわずかな距離だ。意固地になるほどのことでもない。 マーティンの同行を甘んじて受け入れることにしたのだけれど]
そうですね。興味深い本がたくさんで、飽きることがありません。 ……あそこなら、誰かに煩わされることも、滅多にありませんし。
[うるさくしないと言いつつ、さっそくお喋りを始めるマーティンに、ちくりとそんな嫌味を言いつつ、実のところ既に頭は半分くらいしか回っていなかった**]
(130) 2015/07/11(Sat) 01時頃
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[ 夜は梟が思うほど暗くはない。
月があって星があって
人里が放つひかりは 空の雲が反射して
山に雪があれば空まで青白く照らすんだ。
その中じゃあ、僕の持つ色は意味を持たず
空を切り取って飛ぶ 彼女の闇は
どれだけ映えるだろうと 思う。]
そうだね、そんな日が来たらいい。
[ 誰にも見つからず 兄と2人見上げた夜空を浮かべて
僕はそこに彼女の影を重ねあわせる。
夜空を渡す、白鳥の十字の上へ重なるように
彼女の翼が 伸びた気がして。]
きみが居てくれたら …僕も鳥になれるね。
[ そらへ、と 憧れを乗せた瑠璃の目が 細く笑った。*]
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そうですね。 風邪でお世話になるのは……不本意です。
[ごめんです、と毒舌を吐きかけて、飲み込んだ。 今現在面倒をかけている私の言うことではないだろう。 いけない。眠気で頭が緩んでいるようだ]
懐かしい、という感覚は私にはわかりませんが。
[懐かしむような思い出が、私にはないから。 しかし、どうやら禁止されている本もあるらしい>>132。随分ずさんなことだと思う。 今私が読んでいる百科事典は、どうなんだろう]
お手数をおかけしました。
[部屋に着くと、辛うじて残っていた理性でそんな謝罪をする。 感謝の言葉は言いたくなかった。 頭を撫でられると眉を寄せて、怪訝そうに一つ瞬き。 不快だった、訳ではない。慣れない感覚だと思っただけだ。それなのに、同時に、目が覚めた時消えてしまったはずの夢の欠片がよぎったような気がしたのだ。 それも、扉を閉めてベッドに倒れこめば、今度こそ跡形もなく消えてしまうのだけれど**]
(163) 2015/07/11(Sat) 10時半頃
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[返ってきた同意の言葉に、私は来るとは思わない未来を思う。
そんな日が来るとは思っていない。けれど、願う自由だけは私にも許されているはずだ。
願うことは、人間にだって止められないはずだ]
……フィリップは、鳥だわ。
[私が居なくても、と言外に滲ませて。
私は、私たちはこういう生き物なのだと思っている。だから、フィリップが自分のことを欠けた生き物だと感じることは……それは、悲しいことだと思った。
百科事典によると、飛べない鳥もいるらしい。
フィリップは鸚哥だけれど、夜明け頃、第二図書室から自室に戻る時に聞こえるフィリップの歌声は、金糸雀のようだとも思うのに]
フィリップは、鳥だわ。
[だから私はもう一度、そう言った]
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―昔の話―
[10年前、私がここにやってきた時、私は泣き喚き、大暴れし、それはそれは手がつけられない有様だったらしい。そう教えてくれたのは、誰だったか。 過去の自分の中に、そんな激情があったなんて信じられなくて、私にとってどこかその話は他人事めいていた。 薬を打たれて昏倒した私は、その後高熱を出して数日の間寝込み、そして目を覚ました時にはそれまでのことを全く覚えていなかったらしい。 それほどの衝撃を受けたのか、それとも自己防衛本能が働いてそれまでの記憶を自分で封印してしまったのか、それはわからない。 どちらにしても、それは幸せなことだ、と言われた。懐かしみたくなるような幸せな思い出は、覚えていた方がきっと辛いと。だっていくら懐かしんでも、もう帰ることは出来ないから。 そう言われたということは、ここに来る前、きっと私は幸せだったのだろう。 寝込んでいた数日間、うなされた私は何かを口走っていたようだったけれど、そのことについては教えてもらえなかった。きっと、失った記憶に関することなのだと思う。
覚えていないのは幸せなことなのか、それとも不幸せなことなのか、私にはわからない]
(172) 2015/07/11(Sat) 15時半頃
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―第一棟・自室―
[目が覚めたのは、空腹のせいだった。 うつぶせで眠っていた私は、ころりと横向けに転がると、ポケットから懐中時計を取り出して、時間を確認する。 眠った時間が遅かったから、目を覚ました時間も、いつもより遅い。けれど、まだ夕食にはだいぶ早い時間だ。この時間なら、食堂に行く人も少ないだろう]
今のうち、ね。
[呟いて、私はゆっくり立ち上がる。 自分の姿を見下ろして、そういえば寝間着に着替えていなかったことに気づいた。当然、皺になっている。 まあ、それ以前に、床に座り込んで眠ってしまったりもしたのだし。着替えるべきだろう]
……あ、ふ。
[あくびを漏らしながら着替えを済ませて、私は部屋を後にした**]
(175) 2015/07/11(Sat) 17時頃
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[ 僕を鳥だと 祈るように願うように響く声は
いつもの彼女には珍しい 力が篭められていて
朝靄の図書室で 彼女の羽を羨ましがりながら
その翼が本来拡がるべきだった
外の世界の夜空の話をしたときにも おなじように
彼女は、僕も同じ鳥だと 言ってくれた。
あの時伸ばした手は 彼女の羽に届いただろうか。
瑠璃の目に憧憬ばかりを乗せてしまうのは
彼女には少し迷惑だったかもしれないけれど]
僕も夜空に行けたら、唄うよ。
………鳥だからね。
[ それでもやっぱり彼女が居なければ夜空は行けないから
小さな声には ちょっとの苦笑が混ざった。]
―― 一間 ――
[ ひとが羽や鱗を生やせばいい、という針鼠には小さく息を漏らし笑った。獣人に獣を足すのも可能なのだろうか、それこそ“ ”みたいだ。
――体はともかく、その実験体の心は今度はどこにいくんだろう。獣かひとか。新たに宿った獣だろうか。
心、と梟の告ぐそれに1つ、首を傾げた。まざりものの体に宿るのは、果たしてどんな心なんだろう。
同じになれるわけがない、という2人の声に淡く頷く。どうしてもわかりあえないのなら、いっそ領分を分けてしまえばいいのに。]
ああ、…あそこ。ありがとう。
[ 返る返事に秘密棟、と面体下を歪めつつ、礼を告げる。“イカレ”と称される女医の姿を見たいわけではなかったが、獣を人にするなんて考えには興味があった。*]
[ 2羽の“とり”の声をききながら。
ひたりと水に浮くよう、“よぞら”に映るその姿を描く。
夜のそらを縫う彼女の姿は。彼がうたう姿は。きっととても、冴え冴えとはえるのだろう。
合間、漏れ聞こえた微かな声色には、首を傾げ微かに、かあさま、と反芻する。“かあさま”って、なんだろう。*
――やがてぐるりと頭を回し、声の正体を探りながら。
これなら、ひとに見つからずこっそり相談事もできるんじゃないだろうか。――例えばそう、「自由」を得るための。
実際反抗を図っている針鼠の彼女へと、(離れてる以上意味があるのか知れないが)視線を向けつつ。]
……誰かと出て行こうとか、思わなかった?
[ 首を傾げては、小柄な体を思い返す。針があるとはいえ、少女めいた体躯では限度があるだろうにと。
――そういえば、同じくらいの“猫”の少女もいた気がするけれど。ここでの声は聞こえているのだろうか、とぼんやり思い巡らせながら。]
[私の知らない、あるいは覚えていない、外の世界の夜空の話を聞いた時、私は知識を求めて本を読む時と同じくらい、もしかしたらそれ以上に、未知なるものに対して知識欲が満たされる充足感と、憧憬を覚えていたかもしれない。
伸ばされた手には、瞬き一つ分の驚きを示したけれど、フィリップの翼への憧れは知っていたから、そっと翼を広げてみせた。鳥籠で生きていくには大きすぎる私の翼を。
伸ばされるフィリップの腕の蒼碧や、真紅の爪を私は綺麗だと思うから。だからきっと、それはおあいこなのだ]
楽しみだわ。
[きっと、そんな日が来ることは、ないのだろうけれど。
それでも、そう返した私の声音には……そう、“幸せ”の色が、きっと微かに混じっている。そんなもの、私は知らないはずだったのだけれど。
私の翼は、一人で飛ぶにはきっと少し大きいから。
外の世界の夜空は、一人で飛ぶにはきっと広いのだと思うから。
飛べないフィリップの声には苦笑が混じるけれど、それを言うなら私は歌えない。だからきっと、それもおあいこなのだ。
――――……きっと。きっと。きっと。
そんな日は来ないのだろうと思う未来に、私はたくさんの「きっと」を重ねていく]
[ 梟と鸚哥がそらを飛ぶ。 星の欠片の流れるそらで。
その場にいれば、僕は首を擡げて彼らを見つめるのだろう。
きらきら照らす、ひかりの舞台で、 彼らが踊るさまを見届けるのだろう。
手元に揺蕩う水中では、 鮫が呼ばれて来るのだろうか?
水に堕ちた月に肌を重ねて、深海のくろに夜空のくろが混ざり合うことも、あるのだろうか。
僕は陸続きの岩場で、 空を眺めて、そのまま夜が明けるまで。―――]
―――――。
[ はた、と僕は目を瞬かせた。 いま僕は何を考えていたのだろう?
こてりと首を傾げると、やはり口元の機械がかちりと鳴った。
ぼうやりとした思考の奥。 隙間を通り抜けて届いた声は、―――「獣人」の脱走計画さえ、覗けるかもしれないもの。 ]
………。
[ 締め付けられる胸は、なんだろう? 僕はぎゅうと胸元に手を当てたまま、 引き続き耳を欹てた。 ]**
[ジリヤへと投げかけられた質問に、小さく息を飲んだ。
抗い続けるジリヤですら、ここから出られるとは思っていないというのに、その質問は、まるで]
誰かと一緒なら、出ていけると、思っているの。
[私のその呟きは、質問だったのか、それともただの独り言だったのか。
私自身にも、その境界は酷く曖昧で、だから返事が来ることは、期待していない。
声の主に、漏らした寝言を聞かれてしまっていることも、知らない]
|
―第一棟・自室→食堂へ―
[私の部屋は、物が少ない。もっとも、他の人の部屋がどんな風なのか、私は知らないのだけれど。 小さなクローゼット、姿見、そしてベッド。あるものといえばそれだけだ。 この部屋には寝に戻るだけで、私は一日の大半を第二図書室で過ごしているから、特に不便は感じていない。 不便は感じていないけれど、親しみも感じていない。10年経ってもどこかよそよそしい部屋の扉を閉めて、私は食堂へと向かう。 廊下に並ぶ各人の部屋の扉。その向こうで零された、誰かの涙も知らぬまま、私はゆっくりと食堂へと歩いていく]
…………ああ。
[思わず溜息が漏れた。 この時間なら人気がないと思ったのに、食堂には人影があったから>>197]
(201) 2015/07/11(Sat) 21時半頃
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[引き返そうかと思った。 それでも結局、食堂へと足を踏み入れたのは、空腹に耐えられそうになかったことに加えて、とても珍しい光景が目に入ったからだ。 人間相手に、あのジリヤがしおらしくしている>>202。青天の霹靂とはこういう事象を指すんじゃないだろうか。私は青い空も雷も見たことはないけれど。
カウンターで食事を受け取り、二人から離れた席に腰掛けた。驚きはしたけれど、それは積極的に関わる理由にはならない。
やせぎすの私の食べる食事は、実は動物性たんぱく質が多い。私の中の梟がそれを求めるのかもしれない。 今日もハンバーグとサラダ、そしてパンと水を受け取った。梟だからといって、鼠を食べるわけじゃない。 ひっそりと食事をしながら、私は耳を傾ける。別に、盗み聞きするつもりはないけれど]
(203) 2015/07/11(Sat) 21時半頃
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マユミは、フィリップの歌声は嫌いではなかった。音楽は、煩わしいものではないから。
2015/07/11(Sat) 22時半頃
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[こちらに手を振るアーロン>>211には、黙って会釈を返した。 最低限の礼儀はあるつもりだ。慇懃無礼という意味では、それは無礼なのかもしれないけれど。
ハンバーグを食べながら、私は肉食の獣のことを考える。 私の中の梟は、動物性たんぱく質を求めるけれど、同時に私の中には人間としての要素も確かにあって、人間と同じ調理された食べ物を食べるし、野菜だって求める。 けれど、全ての獣がそういうわけではない。獣としての要素を、私より色濃く持つ者もいる。 きっとこの世界は、そんな者にとって私よりももっと、生きにくいところだろう。 そんなことを考えていた時]
………………。
[静かな食堂に、低い声がした>>212>>213。 それは、本当に微かな声だったけれど、幸か不幸か私は梟ゆえの聴力がある。 聞こえてしまった。そう感じたということは、それはやっぱり不幸なことだったのかもしれない]
(214) 2015/07/11(Sat) 22時半頃
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悪趣味だわ。
[私の小さな呟きは、きっとジリヤの上げた声>>215にかき消されて、誰にも届かなかっただろう。 悪趣味で……そう、その発想はとても、とても、獣の私たちよりも動物的だと思えた。 私に、人間の真意>>218なんてわからない。わかろうともしていなかったけれど。 だから私はジリヤの怒りを正当なものとして受け止め、静けさが失われた食堂で、部外者として食事を続ける]
(221) 2015/07/11(Sat) 23時頃
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[アーロンの言葉は、ジリヤの怒りを止めるものとなったようだ>>222。静けさが戻ったのは結構なことだと思う。 ジリヤがどうしようと、私は彼女を止めるつもりはないけれど、食べ物を粗末にしたこと>>215だけはいただけない。 小さく息を吐いて、私はちぎったパンを口に運ぶ。
他の人が何を考えているかなんて、わからない。その相手が人間なら、尚更のこと。だってわかりたいとも思っていないのだし。 けれど、わからないなりに「きっとこうなのだろう」と思っている。それが正しいか、間違っているかは別として。 大抵の場合、その判断の想定内の行動を相手は取るから。それで不自由しないのだけれど。 だからこそ、その判断の想定を超える反応を示された時、人は戸惑うのだろう。今の、ジリヤのように。 私はそんな風に考える。 そんな私の考えこそが勝手な判断なのだろうけれど]
(224) 2015/07/11(Sat) 23時半頃
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["猫"である私にも、当然獣たちの言葉は届いていた。
けれど、人間への感情も、外への思いも、何もかもの価値観が、私とは異なっている者たちに。
それらの事で、何を言う事があろうか]
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はい。
[大丈夫か、との問い>>234には短くそう返した。最低限の、礼節。 ジリヤから向けられたバツの悪そうな顔>>236に、また珍しいものを見た、と思う。 けれど、私は無表情なのだ。白目の見えない猛禽の瞳は、わずかばかりの感情の変化など伝えはしない。 そっと首を傾げてみせるにとどめ、私は静かに食事を続ける。 調子を狂わされっぱなしのジリヤの様子に、私はアーロンへの評価を改める。 よくわからない人間、から、食えない人間、へと。 その評価が、株が上がったことになるのか下がったことになるのか、私にも良くわからない]
(243) 2015/07/12(Sun) 01時頃
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[食事を終え、席を立った時、ジリヤたちはまだ食堂にいただろうか。 翼のせいで、背もたれのある椅子は横向きにしなければ座れない私は、立ち上がると椅子を元に戻した。 カウンターにトレイを返却し、ジリヤたちがまだいたなら、小さく一礼して、私は食堂を後にする。 夕食時になる前に、離れておくべきだ。
そうして、向かうのはいつもと同じ、第二図書室。 誰にも煩わされることのない、私の居場所]
(246) 2015/07/12(Sun) 01時頃
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[――――……その、はずだったのに]
どうして。
[第二図書室には、先客>>220がいた。埃っぽい、およそ眠るのに適していないこの場所で、ご丁寧にタオルケットまで掛けて>>244眠っているのは、よりにもよって人間のマーティンだ。 溜息が零れる。眉間に皺が寄る。 どうして、人間が、こんなところに]
どこに行けば、私は、放っておいてもらえるのかしら。
[それとも、嫌がらせだろうか。私が、ここなら誰に煩わされることもないと言った>>130から。 読みかけだった百科事典を持ち出そうかと考えて、躊躇った。ここには禁止されている本もあるという。もしもその禁止されている本の中に、百科事典が含まれるとしたら、誰かに見咎められれば厄介なことになる。 溜息をもう一つ吐いて、結局私は何も持たず、踵を返した]
(247) 2015/07/12(Sun) 01時半頃
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[仕方ない。今日は第一棟の図書室の本を借りて、自室で読もう。あそこの本なら、持ち出しても見咎められることもないだろう]
……ああ、もう。
[思わず声が漏れる。 こんなことになるとわかっていたら、こちらには来なかったのに。第一棟の図書室なら、食堂からすぐだったのに。 無駄足にまた溜息を零しながら、私は来たばかりの廊下を戻り始める]
(248) 2015/07/12(Sun) 01時半頃
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―第一棟・図書室―
[道中で、誰かに会うことはあっただろうか。 図書室にたどり着くと、本を選ぼうとして。また零れそうになった溜息を飲み込んだ。 図書室は、無人ではなかった>>250。もっとも、それは当然予測できたことだ。 ここだと誰かに煩わされるから。だからこそ、私は第二図書室の方を気に入っているのだから。 できるだけ気配を消して、私は並ぶ本の背表紙を眺める。 最低限の礼儀は示すけれど、気づかれなければわざわざこちらから声を掛けることはない]
(259) 2015/07/12(Sun) 02時頃
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