298 終わらない僕らの夏休み!
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[8月に死に9月1日を迎えられなかったあたしの人生由来の死は未練を齎している。
秋山先輩に想いを伝えようとしても秋山先輩は、受け取ってくれない。
その結果秋山先輩がこの町と永遠になるとして、あの結果が誰かの死だとして、秋山先輩がどう思っていたとして、9月1日の宍井澪がどう思っていたとして、あたしは、あたしは秋山先輩がすきで、あたしは、秋山先輩が好きだったから、三年生が卒業してしまう最後の夏休みだから、せめて、今年は、秋山先輩が好きで、あたしは、あたしは**]
[触れた指先は酷く熱を持って熱いだろう。
おまけに滑らかに見える指先は火脹れのようにボコボコとした感触で、焦げた肉の嫌な臭いが鼻をついた。
びくりと一度手を引きかけて、何かを堪えるように小さく呻いた女は少し遅れてまた歩き出した。
歩く内、焼けるかと思えた熱は少し収まったが少年の指先に嫌な感触が残るだろう]
っ、………。
それは、
[時折ぐらりと沸き立つように女の輪郭が崩れる。
ぐつりと何かが溢れる。
さみしいね。 そんな音に似ていた]
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─ 図書館 ─(>>271)
[俺が一冊、二冊。ようやく目を通したかの頃に安住先輩が何か色々と情報をまとめていたらしい。パッと見に詰め込まれた文字の行列にはあ、と感心した。 やっぱりかっこいいかもしれない。]
[そこに書かれていたのは所謂昔話とか、口伝の迷信だとか、そういう雰囲気を思わせるものだった。古式ゆかしいなにか…あまりこれまでの俺とは関わりのない世界だ。もし俺が今も厨二病の真っ只中だったら大喜びしていたんだろう。]
何か結構… 曰く付きっつぅか。 俺、もっと願えば叶う…的な…少女漫画みたいなやつかと…。
[ぞ、ぞ、ぞ、と肩がざわつく。冷房が強すぎないか。 いや、俺の体温が下がったのか。…ああ、これが血の気が引くとかいうやつ。]
死んだ奴らの呪いとか、ってやつ? でも、なんで…
[なんで今、俺たちが。]
ありえねー… ってことは、ないのか。**
(282) 2019/09/05(Thu) 23時頃
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[繋いだ手は熱かった。
例えるなら真夏のアスファルトを触ったときみたいに、焼けるような熱さ。
現実ではないとわかっていても、まるで現実のように手が焼けるような痛みに襲われる。
手の皮膚もぼこぼことした感触で、今まさに焼けているみたいなにおい。
どちらが焼けているんだろう。あちらの手か、こちらの手か。]
…………うん。
[それは、のあとの煮え立つような声ははっきりとは聞こえなかったけど、なんとなくニュアンスはわかった気がして、頷く。]
俺でも全然詳しいことはわかってないんだけどさ。
ビョーキが見つかったんだって。
難しい手術になるかもって、だから、俺、東京の病院に入院するんだって。
一旦入院して、しばらく薬とか飲んで。
身体が落ち着いたら、手術なんだってさ。
[軽く言えるのは、まだ実感がなさすぎるからだ。
両親はすでに東京に仮家を借りていて、長期滞在を決め込んでいる。
ひとりだけ病院の部屋に閉じ込められて、東京を楽しむこともできないまま、病人生活ってやつになる。]
『今日』が、俺の自由にできる最後の日なの。
だけど、今日が続けば、このままいられる。
昨日と一昨日は、お祭りに行って。
今日は花火もするし、先輩とも知り合えた。
今日が続けば、何でもできる。友達のままでいられる。
だから俺は、ずっと今日がいいし、忘れたくない。
[忘れたら意味がない。友達も思い出も、みんなリセットだ。
そんなの、続けてる意味がない。
記憶を忘れた今日が来たら、ただ周りに気取られないように笑いながら、明日に怯えるだけの自分に戻ってしまう。
今日が続くと知っているから、次の今日が楽しみでいられるって、思う。]
[少年の訴えに低く喉が鳴る。
黙ってその言葉を味わっているようにも見える。
病を癒した先にある明日ではなく、今この時を選ぶのかと彼の少しいびつで切実な願いに頷いた。肯定した。少なくとも、ただ今を閉じ込めていたいのは同じだ。
嗚呼、哀れだとも健気だとも思う。
わかるよ、と伝えるように煮え立つ指は彼がそうしない限り、離れていかないだろう **]
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─ 図書館 ─(>>286>>294)
[途方に暮れた。 こんな思ってもみない、もしかして知りもしない昔の誰かの呪いでこんなことになってるんだとして、どうすればいい?
うつむいて呆然としていたから、安住先輩が何かごそごそとしていたのは見えたけど、それが怪談を書いた折りたたんだ紙を握りつぶすとか、そういうことだとは気づけなかった。つくづくこの先輩は気の配り方が周到だ。]
(298) 2019/09/06(Fri) 00時頃
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[その後に、示されたスマホの画面を覗き込んだら合流の旨が書かれたメッセージがあった。 「別にいっすよ」と言うより早く、それは新着のメッセージの通知で震えた。
少しの間。
何かが服に引っかかったような、重み。(>>297)]
(299) 2019/09/06(Fri) 00時頃
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