― 南棟東1F廊下 ―
[どうやら自分の言葉が届いたらしいフィリッパの、零れる涙に拘束していた両肩のうちの一つを解放して、指先を伸ばす。]
事情は、ほとんど把握できてねぇけどな。
身体苦しかったんなら、俺んとこくりゃ良かったんだ。
―――……誰よりも、頼みやすかったと思うけどねぇ。
[ビー玉を受け取った後、かけられた言葉を思い出す。
しかし、頼まれても、女相手に、避妊具なしで突っ込むことは、ドナルドはしなかったろうが。
―――……少なくとも慰めることは出来た、と。]
そうじゃなくて、いっそのこと殺せっていうんなら。
俺に一生トラウマ作ること承知でいってんだよな?
[トラウマを作って逝った『 』を思い出す。
血を吸わせたセシルを思う。
―――……だから、殺すほど飲んでもいいと言わなかった。
言えなかった。]
(1237) 2010/03/01(Mon) 01時頃