「日菜子ちゃん!」
[少しだけ離れた時、呼ばれた名前にびっくりして、私は振り向いた。
ここで会ったときに名前を名乗ったことはないし、不動産の内部資料でも貸借人の顔写真なんておいてないと思うし、頭の中で色んな可能性を消しながら、「夢」が「夢」でないことを願った。
あのことを、夢だと否定するのは、ハナコちゃんの存在を否定することと同じだから]
えっと、お久しぶりです……。
私のこと、覚えててくれたんですね。
――ハナコちゃん、のことも?
……そっか、良かった……。私、夢だったのかなって、不安にもなったから。
でも、お兄さんも無事で、良かったです。
そうだ、聞こうと思って聞けなかったから、今度聞こうと思ってたんです。
お兄さんの名前、教えてください。
[いくらかの会話。
涙が出そうになったけど、笑ってごまかして、それから、あの駅のことや、それから「羽菜子」ちゃんのことを東蓮寺さんに*話し始めた*]
(250) waterfall 2016/10/10(Mon) 23時頃