[膝をついて、衣服に手を伸ばす。
ポケットの中で、微かに流動するのは——懐中時計。]
ニコラエさんの、服……だよな
[口にして改めて、彼が着ていた服に酷似していると思う。
石畳の上から抱え上げると、上質な生地が肌の上を滑った。
彼の手には触れたことがあっても、その服の滑らかさを知ることはなかった。
しかし、どうしてここにそれがあるのだ。自らに問うが答えは出ない。
唯一の目撃者は、「いなくなった」と言った。
単純にこの服が落ちていたのなら、そんなことを言うはずがない。
況してあの小さなお化けは、ニコラエのことを知っている。
先ほどのキリシマの声が、蘇る>>@28。
初めて知った、ガラス雑貨店。
見たことのない、緋色の瞳。
魔法のとけない、ガラスの靴。
止まった時計の針と、モノクローム。
思い起こされるのはーー知りたいと願った、彼のこと。]
(180) 2014/10/25(Sat) 15時頃