― 食堂 ―
[此処ではない何処か>>158とケイイチは言う。停滞を湛えたクランの内でなお求めるものとなると、各人似通ってくるのかも知れない]
……ならば、こちらの領域へ。
紙しかないが、ケイイチが見慣れぬ物があるやもしれぬ。
[唐突に表れた敬語にほんの僅か笑みを深めた。きっと既にケイイチは“演じて”みせている]
夕餉から暫し間を空けるのであれば、参休は墨を摺る。
好きなときに顔を出してくれ。
[ケイイチの指先が己の右耳へと伸ばされれば、ついと視線がそちらへ流れた。間際で止まった指先を引かれる前に、促しの意を込めて掌を重ねようと右腕を上げる。
紙に脂を取られた指先は少しかさついていて、きっと参休の方が冷えている。その差をケイイチは感じ取れたろうか]
……咎めやしない
[引き釣れた肌、埋め込まれた紐。触れたければ触れると良い、きっとその感触も記憶を揺らす]
(178) 2014/12/23(Tue) 13時半頃