ご不興を被るのは、承知の上で申し上げております。
いま大切なのは、陛下のお気持ちではなく陛下のお血筋!
仮に王都が陥落し、我が祖国がアウストの支配下に置かれようとも、陛下がご健在で、陛下の血を伝える御子がおわすかぎり、アンゼルバイヤは不滅でございます。
国家の本質とは、国土ではなく王家の血統。
いまアウストに国土を奪われましても、アンゼルバイヤ王室の本流が健在であれば、いずれ陛下を慕う者どもが膝下に馳せ参じ、巻き返しを図る事も叶いましょう。
直ちにお取り上げいただけるとは、私とて思ってはおりませぬ。
されど、陛下におかれましては、ともかく御身を大切になされませ…畏れながら、陛下は人にあらず。人のかたちをした、国家そのものにございますれば。
私からの、最後の諫言と思し召せ。
長き主従の縁でございましたが。
陛下のご尊顔を拝し奉るのも、今日が最後となりましょう。
[...は深く、恭しく拝礼し、謁見の間を後にした。]
(133) 2011/11/17(Thu) 00時頃