―下界・ある日―[名を与えられなかった祠の傍らに植えた桃の木はまだ若い。実がなるにはまだ年月が必要だろう。代わりに、畑や里人の家の庭に実った桃を供える。子どもらが、自分たちも食べたいと駄々をこねるのを宥めながら、今日も水と供え物を持って小道を行くのだった。]「つきさま、つきさま。」[遊んでいた子どもの一人がまろぶように走り寄って、袖をひっぱる。]「つきさま、あのひと泣いてる。」[指さす方を見れば、旅装の女性。>>14祠の前でしゃがみ込み、声をあげて泣く様子を子どもらが遠巻きに心配そうに見ていた。]…海辺の人でしょうか。[灼熱の陽の光を浴びてやけた肌と、太陽のほか、潮風にさらされて傷んだ髪は僅かに赤茶けた色味を帯びている。田畑を耕す土に汚れるのとはまた違った、肌や髪のやけ方。]
(40) 唐花 2013/08/18(Sun) 19時頃
sol・la
ななころび
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