― 定期船内 ―
……磯の匂いも、久しぶりかもしれないな……。
[ 実感のわかないまま、定期船の窓からぼんやりと海を眺める。都会の学校では、このどこまでも続きそうな水のうねりを目にすることも少なかった。
……海斗は、これに攫われて命を落としたのだと思うと、複雑な思いも胸に去来する。海は、楽しかった。釣りをするのも、釣りをした魚を焼いて食べるのも、探検隊の活動の中で一二を争うほど好きな部類だった。
……アルバイト先……弁当屋の面接で探検隊での活動を語ったことも、ふと思い出す。 ]
みんなに会うのも、久しぶりになるのか。
[ 中学はまだしも、高校からは県外に住んでいた身だ。同窓会だと浮かれる気にはなれないが、どこか、楽しみに思う心持ちも湧き上がってくる。 ]
……もう働いてるやつもいるんだろうなぁ、海斗みたいに。
[ メールでは死亡と同窓会の件しか伝えられなかったが、海斗は漁師をしていたらしい。浪人してでも国公立大学を目指そうとしている自分とはかけ離れた生き方に、否応なしに時間の流れを感じるほかなかった。 *]
(8) 2018/11/12(Mon) 01時頃