人狼議事


308 【R18】忙しい人のためのゾンビ村【RP村】

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視点:


【人】 一杯と自由 マスタ


 親愛なるミケ

あなたの来ない夏が三度過ぎました。
元気にしてる?
こっちは相変わらず天気のことばかり考えているよ。

キャロルが遠くへ旅立ちました。
いつもあんなに煩かったのに、静かになっちゃった。
キャロルは畑じゃなきゃヤダって最期まで騒いでたけど、やっぱり街近くの墓地でみんなと一緒に眠ってもらうことにしました。

もしこれを読んだあなたがミケでないのなら、どうかこの手紙のことは忘れてください。
あるいは少しでも気にしてくれるのなら、今あなたが住んでいる部屋に昔住んでいたミケーロという男にこのことを伝えてくれたら嬉しい。

最後まで読んでくれたあなたに、幸運が訪れますよう。

                           シーシャ

追伸。
せめて連絡先くらい教えてよ。

(141) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 05時半頃

【人】 一杯と自由 マスタ

[結局ミケは、その後も連絡をよこさなかった。
 ミケーロさんと見かけたのは本当にただの偶然だ。
 駆け足で追いかけた長い足が折り畳まれていても、
 繰り返し見て来た後ろ姿はあの頃のままだった。

 すぐに継ぐはずの畑をルパートおじさんたちに託した。
 街へ飛び出した背中にかけられた怒鳴り声を覚えている。
 もう帰ることはできないだろう。
 しかし後悔はなかった。

 だって、たとえ下っ端でも、
 ミケーロさんと一緒に仕事ができることは
 それらを手放すに値する時間だったからだ。

 そう感じるたびに、あの日のことを思い出す。]

(142) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 05時半頃

【人】 一杯と自由 マスタ

[暑い夏の日だった。
 太陽が日陰のない平面を容赦なく焦がしていく。
 青々と広がる畑でも例外ではなく、
 土の上で熱に悶える芋虫をじっと見ていた。
 こめかみから垂れた汗が恵みの代わりに落ちる。
 芋虫はそれを受け、捩るように身を躍らせた。

 ミケと母は何か難しい話をしているようだった。
 少なくとも子どもだった自身には理解できないことだ。
 言葉を交わし、母が笑い、ミケが頷く。
 なんてことない光景の中、唐突にミケは膝をついた。
 そして当然のように、母へ向かって胸の前で手を組む。
 母はそれをつまらなそうに見ながらも何も言わない。

 それは、祈りだった。
 これまで繰り返され、これからも続いてくであろう、
 祈りだった。

 以来、あの光景を目にしたことはない。]

(144) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 05時半頃

【人】 一杯と自由 マスタ

[それなのに、
 鼻につく肥料の匂いも、見慣れたトウモロコシの葉も、
 鮮明に思い出せる。

 ミケの前に立つ母が羨ましかった。
 母に首を垂れるミケが怖ろしかった。
 それに嫌悪と恍惚を見出した瞬間、囚われたのだろう。]

(145) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 05時半頃

【人】 一杯と自由 マスタ

 
[幻影に手を伸ばし続けている。]*
 

(146) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 05時半頃

【人】 一杯と自由 マスタ

― 初日、あるいは3日目の朝 ―

[舌打ちと共にスマートフォンから耳を離した。
 そこからは何度も聞いた冷たい電子音声が聞こえる。

 マスタが投稿した写真と目が合ってから3日が過ぎた。
 心許ない充電具合の画面を落とし、助手席へ放り投げる。

 同僚が死んだ。豹変した上司に襲われ、腹から喰われた。
 上司は倒した棚に頭を押しつぶされて、
 虫みたいに手足を痙攣させた後で動かなくなった。
 周囲には消化途中だったものの酷い匂いが渦巻いていて、
 そこにいた皆が吐瀉物と悲鳴に塗れた。

 はじまりは雨に似ていた。
 ぽつぽつ降り始めに気づくと、途端雨足が強くなる。
 実際、最初の手頃な地獄から異変が街全体に広まるまで、
 1日とかからなかったように思う。]

(148) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 05時半頃

【人】 一杯と自由 マスタ

[皆が食料を買い占め、奪い、建物の中へ立て篭もる。
 車に燃料を積み、ここではないどこかへ向かう者もいた。
 それ以外は喰うか喰われるかどちらかの道を辿った。

 二番目を選んだ自身は今、通い慣れた道を走っている。
 普段なら人ひとり見かけないような時間帯だが、
 今日はちらほらとミラーに車のナンバーが映る。
 そのどれもがトラックを追い抜き、
 東西へ伸びる道路をまっすぐ進んで行った。

 大方、西に関する噂を聞きつけた者たちだろうが、
 この先にある景色もきっと元の場所と大差ない。
 この者たちに比べたら、
 初日に移動した組はまだ冷静さと希望があっただろう。
 死地へアクセルを踏む鉄の塊を平坦な瞳で見つめた。]

  俺もあんたらと一緒なんだけどさ。

[段ボールひとつでもあれば経過した数日の言い訳にも
 なっただろうが、トラックの荷台は空っぽだ。]

(151) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃

【人】 一杯と自由 マスタ

[怖ろしかった。
 当然のように往来を闊歩する怪物が。
 それが自身と同じ人間であったという事実が。
 近づけば同じ存在に成り果ててしまうであろうことも
 籠城に拍車をかけた。

 幸い、扉の頑丈さだけが取り柄のワンルームは、
 狭いながらも人ひとり分のシェルターとして有効だった。
 早々に水道もガスも止まり、電気も使えなくなった。
 たった2日、そう多くはない食料と止まる前に貯めた水で
 凌いでいくだけで、簡単に絶望は育まれていく。

 そんな時、人は何を求めるのだろう。
 自身は救いだった。これは、それだけの話だ。
 最低限の荷物と身ひとつを乗せ、トラックは西へ進む。]

(152) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃

【人】 一杯と自由 マスタ

― コーヒーショップ『abbiocco』 ―

[救いは奇跡ではない。
 それでも、もしかしたらと期待する自分がいた。
 そんなはずないと予防線を張る自分もいた。

 ストーブは沈黙している。
 少しでも熱が篭れば、息が白く濁りそうな寒さだった。
 息遣いが聞こえる。血塗れの左腕が見えた。

 ――見知らぬ男と、目が合った。]

(153) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃

【人】 一杯と自由 マスタ

[豹変した者たちはゾンビと呼ばれた。
 ゾンビは生きた人を襲い、時には喰らう。

 大切な人を守るために人を殺すのは、ひとごろし。
 ゾンビを殺したら、ひとごろし?

 動かなくなった肉塊を見下ろす。
 辺りには持ち去るつもりだった様子の缶詰が散乱した。
 耳元で自身の呼吸と心臓の音が、警鐘のように響く。]

  ミ……ケ、

[返事はない。顔色は蝋人形のように白く、
 抉れたと思われる左腕は補う肉がひしめき合っていた。
 呼吸と脈拍を確かめようとするが、次の一歩が出ない。

 荒れた店内も、床に染み込んだ血の量も、
 最初男が振り返った時、恐怖と覚悟が滲んでいたのも、
 何もかもが”そう”だと告げている。
 結局、もう一歩を踏み出すことはできなかった。]

(154) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃

【人】 一杯と自由 マスタ


[XX月XX日。
 底冷えするような朝、いつもの店で。
 ゾンビを守るために人を殺しました。]*
 

(155) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃

【人】 一杯と自由 マスタ

[死体は隣の家へ運び、ミケのベッドへ寝かせた。
 外に放置した結果、
 ゾンビを呼び寄せてしまう可能性はゼロではなかったし、
 そういう意味も含めミケの前に放置したくはなかった。

 小柄な男とはいえ、命の抜けた身体は酷く重かった。
 やっとのことで移動を終えた頃には、汗が全身を包んだ。

 雑に開いていたカーテンを閉めると、
 隙間から差し込む光だけが肉の塊を照らす。
 目を逸らすように踵を返し、大股で部屋を後にした。]

(156) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃

【人】 一杯と自由 マスタ

[店に戻ると、蹴り破られでもしたのか
 大きく破損し誰でも入れる入口を端材で塞いだ。
 窓は端にヒビが入っている程度で無事だったから、
 工具の持ち手を掴んでいくつか割った。
 誰かやって来るかと警戒して息を潜めたが、
 幸運なことに誰かがやって来る様子はなかった。
 後ろを振り返る。
 ミケは、朝と変わらぬ様子で目を閉じたままだ。]

  一緒に寝るなんて初めてじゃない?

[ミケが夏にやって来る時は日帰りが多かったし、
 複数日に跨ぐ時も近くの街に宿を取っていた。

 彼はいつだって自分たちから少し離れた場所にいる。
 あの日の、祈る彼の背中を思い出した。
 10フィートは離れた壁に凭れる。寝心地は最悪だ。]

(157) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃

【人】 一杯と自由 マスタ


  ……おやすみ、ミケ。

[爛々と開く目を無理やり閉じ、膝の間に押しつけた。
 真新しい現実を瞼の裏に描けぬよう、ぐりぐりと。
 感触を覚えている掌は爪を立てて罰した。

 人ひとり分の息遣いだけが聞こえる。
 心細くて埋めた顔を傾け、ミケの左側を見た。
 自分は彼に目覚めて欲しいのだろうか。
 答えを見つけられないまま、眠れぬ夜が過ぎて行く。]*

(158) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃

【人】 一杯と自由 マスタ

― 2日目、あるいは4日目の朝 ―

[ミケ、と呼んだらこちらを向いてくれた。
 濁った瞳は同僚を喰らった上司によく似ているのに、
 巡る眼球もざらつく呻き声も徘徊していた”それ”なのに。

 名前を呼ばれる。>>3:+14
 二種類の未来を提示された。>>3:+15

 ミケは、間違いなくミケだった。]

(159) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃

【人】 一杯と自由 マスタ


  やだ。

[拒否を端的に述べ、顔を膝に埋めた。
 そうでもしないと緩む顔を見咎められそうだった。

 ほら。ほら。やっぱり。
 ゾンビじゃない。これは、ミケだ。
 世界が壊れだして初めて抱いた喜びだったかもしれない。

 母の話>>4:+49をしたミケによって、
 喜びはすぐに現実へ連れ戻されるのだけど。
 跳ねた肩を宥め、彼の優しい忠告に耳を傾けている。]*

(160) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃

【人】 一杯と自由 マスタ

― それから ―

[2人目と3人目は年若いカップルだった。
 今回のことがあってすぐに西へ向かったが、
 死ぬなら住み慣れた場所がいいと戻ってきたそうだ。

 ミケを置いて一緒に行こうと言われたから、
 お互いがひとりになる時を狙ってナイフで刺した。
 ベッドは見知らぬ男に占領されていたから、
 畑の一角を掘り起こし、2人一緒に埋めることにした。
 匂いのきつくなっていた1人目にも別の穴を掘った。

 この日の食事は最悪だった。
 ミケに怪しまれないよう、後でこっそり吐き出した。]

(161) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃

【人】 一杯と自由 マスタ

[4人目はヒステリックに叫び散らす妙齢のご婦人で、
 ミケの前でゾンビだなんだと騒ぎ立てようとしたから
 腰を抱き、頬を撫でた手で首を絞めた。
 苦しかったのか、強い抵抗に腕が爪痕だらけになった。
 お互いの為にも今後は気をつけなくてはならない。

 5人目は浮浪者のような、恰幅のいい男性だった。
 服自体はきちんとしたものを着ていたので、
 すべてをなくしただけかもしれない。
 女性の名前を繰り返し呼んでいたと思えば、
 こちらをその彼女と誤解して腕を強く引いて来たので
 咄嗟に振り払い、後頭部を力いっぱい殴打した。
 父さんと聞こえたから、娘を呼んでいたのかもしれない。
 誰かの代わりになんて、なれない。なるもんか。

 6人目は……どうしてだっただろう。
 必要だから殺し、5つ目の穴に埋めた。]

(162) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃

【人】 一杯と自由 マスタ

[数日経ち、ミケは徐々にミケである時間が減っていった。
 誰かが来たことすら認識できていないようで、
 最初の日に交わした言葉を繰り返し呟くようになった。
 だから何度も同じ返事をして、同じ沈黙を与える。

 彼の世界には、もう多くが残っていないように見えた。]

(163) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃

【人】 一杯と自由 マスタ


  ……――ミケは俺に逃げて欲しかったみたいだけど、
  俺はミケに会いに来たのに。離れる訳ないじゃんね。

[彼にとってあの二択がどんな意味を持っていたとしても、
 こちらにとっては最初から答えは決まっていた。]

  もしミケがミケじゃなくなったら、
  そこで終わりにしようと思ってた。
  ミケでも母さんでもなく、俺が終わりにしようって。

  それなのにさぁ、
  何も知らない車に頭ぶちまけられちゃって。
  全部集めるの大変だったんだよ。
  草とか土とか混じっちゃってさぁ……。

(164) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃

【人】 一杯と自由 マスタ

[7人目は何かぶつぶつと呟いていたが聞き取れなかった。
 なぁにって言おうとして、もういいやって腕を動かした。

  ――だって、
   この世界にはもう、かみさまはいないのだから。

 ミケは、ずっとこんな気持ちだったのだろうか。
 ずっと遠くにいた彼に、ほんの少し近づけた気がする。

 そして、土の山は6つになった。]

(165) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃

【人】 一杯と自由 マスタ


  ――♪

[名も知らぬ歌を紡ぎながら、車はまっすぐ東へ進む。
 誰を傷つけても、やがて訪れる最期まで生き抜くために。

 ――それは、彼に唯一与えられた呪い(いのり)だった。]*

(166) Pumpkin 2020/10/29(Thu) 06時頃

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