270 食人村忌譚
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―夜/豚小屋―
[気がつくと この場所に立ちすくみ、
豚に貪られる自分の亡骸を見つめていた
荒い鼻息と咀嚼音に埋もれながら、
抜け殻となった自分の体が、家畜に押される度に、
ゆさり、ゆさりと小さく揺れている]
……運命の時が、訪れたのですね
[自分が死んでいることは理解できた
ミナカタに殺されたことも、覚えていた
その後、一瞬、妙な光景に触れたような気もするけれど、
それはきっと、ただの幻覚だったのだろう
自分は死んで、異なるものとして今ここに――――]
容さん ご無事でしょうか
[今すぐ、任に戻り探さなければと思った
ゆりにも、命の失敗を告げるとともに、
ミナカタという脅威がいることを報告しなければならない
若いリツは、今、どうしていることだろう
血気盛んな彼が一人で見回りを続けていたら、
彼に身にも危険が及ぶのかもしれない]
ですが、きっともう、何もできないんですよね
[貪られていく肉体が、それを証明している
きっともう、何かを伝えることも、
誰かと触れ合うことも、できないのだろう、と]
ごゆっくり、お召し上がりください
[豚たちにそう告げて、小屋の隅に座り込む
これが敬意>>*15だとは思わなかったが、
今さらじたばたと足掻いたところで、
何かが変わるとも、思えない
ただ、これから先を生きる者たちに、祈りを捧げる]
みなさん、どうかご無事で
[体から離れることも、不思議とできず
だから、せめてこの言葉と共に両手を組み、
1人、長い、長い夜を過ごしたのだった*]
―翌朝/豚小屋―
[朝日が差し込み、辺りが明るくなってから、
どれほど経った頃だろう
昨夜からまだなお続く豚の貪食っぷりに、
さすがに恐怖すらを感じはじめてきた頃、
人の気配を感じ、すくりと立ち上がった]
おはようございます 進さん
どうなんでしょうか……
私も、まだその段階まで行っていないようなので……
[返ってくる……というよりも、
一方的に告げられたような言葉に、苦笑する]
いえ、お応えはしているんですが、
届いてはいないようなんです
[言葉は失った様子だったけれど、
話す内容から、彼が常ならぬ存在なのだろう、
ということは感じ取れた
昨夜、容はミナカタの方へ向かおうとしたとは思えない
もしかしたら、下手人として儀式の対象となったのは、
彼だったのかもしれない]
進さん 御髪(おぐし)が少し、乱れておりますよ
昨夜、寝方が悪かったのではありませんか
[そう告げてみたけれど、結局応えは返ってこなくて、
自分を運ぶために人を呼びに行く後姿を、
苦笑のままで、見送ったのだった*]
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どうしてって、そりゃ…… ゆり様は巫女様だろ。巫女様が間違いなんて起こすわけがないじゃないか
[村の人間としての当然の認識、それ以外など知らず 食い違っている等とは夢にも思わない]
そうだな。シノは間違えたのかもしない 江津子さんは豚小屋で見つかったよ。愛理みたいに腹を裂かれて、豚の餌みたいに……
……シノ? [江津子の詳しい様子を伝えながらも、シノの様子がおかしい事に気付くとシノの顔をのぞき込もうとして]
(131) 2017/11/30(Thu) 22時半頃
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――…!? シノ!どうしたんだ!シノ!!
[突然叫びだしたシノに驚きながらも、肩に手を置くと何度もシノの名を呼び続ける]
(132) 2017/11/30(Thu) 22時半頃
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―翌朝/集会所への道中―
丞さん、お手数かけます
せめて、食べられる部分だけでも召し上がって、
精をつけてくださいね
リツさんも、昨夜は危なくなかったですか
ご無事で安心しました ありがとうございます
[丞やリツに掲げられ、
集会所へと向かう自分を、とぼとぼと追いかける
リツについては、自宅に帰っていたことを知らないため、
やや、見当はずれな言葉をかけてしまっていたかもしれない
歩き、進んでいく最中、
ふと、自分を追いかける視線に気がついた]
……こういうことだったんですね
[視線の主は、道端にお座りしていた猫
あの時、ちょっとした交流のあった小さな命だ]
おかしいとは思っていたんです
たまぁに、宙を見ていたり
何もないのに、ぼんやり視線を巡らしていたり
[小さく手を振って微笑むと、
猫が立ち上がり、追いかけてくるのが見えた]
追ってこられても、なにもございませんよ
今日は、卵もありません
体だって、ないんですから
[ごきげんよう、と一礼をすれば、
そのまま前を向いて、先行く躯をおいかけた*]
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大丈夫、大丈夫だ。シノ
[泣きつくシノを落ち着かせるように大丈夫と繰り返して]
ゆり様はお優しいから、きっと許してくれる それに、江津子さんが死んだのはお前のせいじゃない
俺が、昨日見回りをサボらずにやっていれば……
[江津子さんは死ななかったのだろうか? 分からない。ただ豚小屋の騒ぎに気付けばもっとマシな状態で弔えただろう事は事実で]
(159) 2017/11/30(Thu) 23時半頃
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とにかく、一度集会場に行こう そして容様に謝るんだ
もちろん。簡単に許される事じゃないけどな まだ下手人は生きてる。なら先にそいつを止めないと
[シノは下手人ではない 江津子さんは食事もろくに取れない状態の女が殺せるような相手ではないし なにより、下手人ならばこんなに涙は流せないだろう なんて、他の人に言ったら甘いと言われそうだが、男にはシノが流すその涙が偽物だとは思えなかった*]
(161) 2017/11/30(Thu) 23時半頃
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―集会所/2つの遺体―
ゆり様…………
[この場に行き着けば、全てを知ることができただろう
ゆりが志乃に殺害されたこと
弔いも困難な毒を服まれたこと]
残念でなりません
巫女様として、立ち続ける覚悟をお持ちでしたのに
[昨日、初めて垣間みることができた姿を思い出す
人を超越した神の代行者としてではなくて、
1人の女として立ち向かっていた姿
これで、彼女から受けた命の内容も、
知る2人が死した今、誰も知ることはないだろう
その裏側に合った気持ちとともに
死者が、死者にというのもおかしなものだけれど、
せめて、黙祷を捧げようとした時――――]
[容のいるあたりを見つめながら、
つぶりかけた目を一度見開き、
再び、ゆっくりと細めていく
目には映らない
届くこともない
ただ、そこで起きた光を感じた気がして、
今度こそゆっくりと、瞑目したのだった*]
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―集会場へ― じゃあ、行こう 大丈夫だ。ゆっくりでいいから
[こちらの言葉に頷くシノに安堵の表情を見せて歩き出す ふらふらの様子のシノを気遣いながらゆっくりと
少し時間はかかったが、集会場まで二人で辿り付くと]
おーい、シノを連れてきた。容様はいるかい?
[集会場の中に声をかける。はて、集会場には誰が居たか*]
(172) 2017/12/01(Fri) 00時頃
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―丞の傍で―
[丞の手により、第八車で豚が運ばれてくる
肉切り包丁が振るわれて、自分の体も、豚の体も、
薄く切られて焼かれていく
その様子を見つめながら、少しくすぐったそうに呟いた]
生きている頃は、おいしそうとか言われるのは、
とても、嫌だったんです
私は、食べ物じゃないんだから、と
死んでもいないのに、なんで食べる想定をしてくるのか、と
[炊かれた米と、もう誰にものかも分からない、
葉野菜に乗った焼けた肉の香りを鼻で味わう]
ですが、不思議ですね
いざこうしてなってみると、私を食べた豚さんには、
負けたくないなと思ってしまいます
[丞が肉を口に含む、今口にしたのはどちらだろうか]
私と豚さんと、どちらが美味しいですか
[返ってくるのは簡素な言葉
そうですか と微笑みを送る
『料理にかける時間も気持ちも、作る方の命の一部』
かつて容に向けた言葉を思い出して、礼をした]
ありがとうございました*
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―集会場― [集会場に入ると、丁度弔いの食事中のようで]
弔いの準備が出来たのか。手伝えなくて悪いな
[声をかけながら集会場へと入る。視線を巡らせて容様の姿を探すが、その姿は見えずに]
何処かに出ているか。とりあえず俺達も頂きながら待とう
[シノが人の視線を気にしているようなら壁になるように出来るだけ遮って、シノにも弔いを渡してみる]
(194) 2017/12/01(Fri) 01時頃
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江津子さんの腕の肉はあるかい。少しで良いんだ 出来れば貰えないだろうか
[親父の腕を貰った時のように、彼女の誇る技が少しでも身につけばと*]
(195) 2017/12/01(Fri) 01時頃
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[丞の傍らで、語り掛けていた後で、
ミナカタが姿を現した]
……小指、ですか?
[自身を殺した男
分からないことをずっと話しかけながら、首を絞め続けた男
あの苦しみは、忘れていない
きっとこの先も、忘れない]
――――どうぞ
[けれど、それがなんだと言うのだ
かつて言われていた部位ではないが、
丞がその場所を示すなら]
異論がなければ、いいですよ
輪廻の流れに とらわれて
運命(さだめ)の時を迎えたんですから* *
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