301 十一月うさぎのないしょ話
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――うん、待ってて。 送るよ。
(6) Ellie 2019/11/29(Fri) 22時半頃
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――閉店――
[己が店員で彼女が客である限り、閉店後の業務の間は店内で待たせることは出来ない。 勿論店員の貴重品が置いてあるバックヤードでも。
閉店間際、他の客が帰ったタイミングでバックヤードに一度戻った。 いつもより外気の影響を受けそうなその項を、己のマフラーで護りたくて。]
今日賄いいらないです。 カキカレーは店長に出せるくらいはあるかな。酌はまた今度!すんません!
[自分史上最速でレジ締め業務を行えたと思う。 みじん切りと変わらない速度の札勘、ジャーナルとドロア内の照合、引き出した売上金をドルバッグに入れて鍵を閉め、店長に渡しながら頭を下げた。
焦っていても清掃は手を抜かず。 テーブルひとつひとつ、そこに座った客の顔と注文を思い出しながら、感謝の気持ちを込めて拭く。
全てが終わった後、賄いを口にせずに爪ブラシをガシガシと擦る乙坂の背後で店長と直がどんな表情をしていたのかは敢えて見ないことにした。
何かを報告するにしても、期待が確約に変わってから。]
(7) Ellie 2019/11/29(Fri) 22時半頃
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さぶっ
[吐いた息が白かった。 店内は暖かかったから、上着は持つだけで飛び出てきたけれど、この寒空で待っていた彼女は相当冷えているだろう。
多分臭くはないと思うけれど、己の黒は彼女の首を護ってくれていただろうか。
その姿を探す。 高いヒールでもぐらつかない、立ち姿も凛とした彼女を。]
――お待たせ。
["murmur coney"の店員としての顔は掃除用具と一緒に仕舞って来た。*]
(8) Ellie 2019/11/29(Fri) 22時半頃
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[久しく稼働していなかった部位がきゅうと締め付けられる感覚に、寒さで強張った頬が緩む。
彼女は己を待ってくれて、そしてその到着にこんな表情を見せてくれるのだ。>>13
「先約」という言葉を己の物にしたいと出した強欲の結果が、しっぺ返しどころか更にオマケつきでやってきたようなものだ。]
ありがとう。 ……寒かっただろ?
[マフラーから手が離れたのを見た瞬間、その手が上着に触れるよりも早く迎えに行ってしまった。 >>11思っていたよりは冷えていなかったが、それでも熱籠る己の手の方が体温の高さを主張する。]
(14) Ellie 2019/11/29(Fri) 23時頃
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……俺がこうして手を握りたいと思う子はカコちゃんだけなんだけど。
俺を――…カコちゃんに触れて良い唯一の男にして貰えるかな。
[彼女が詰めた、あと一歩分の距離を更に半歩分詰めて。 触れた手に体温を移すように力を込めた。*]
(15) Ellie 2019/11/29(Fri) 23時頃
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[男に対する距離感に遠慮がない自覚はある。 それと同時にいかに気心知れた同僚相手でも「女の子」には不用意に触れたりしないように意識的に気をつけていた。 了承を得る前に衝動的に触れるなんて、まるで10代の童貞だ。
触れて、後から追いかけて来た理性が必死に紡いだ言葉は祈り。
頷いてくれと願う間、彼女の動揺はきっとそれ程短くはなかったのだけれど、無意識に息を止めていたらしい。]
は――……
[店内でゆっくり探り合っていた時のような、大人びた語彙による応酬も楽しかったけれど。 いざ耳にしてみたら、そのストレートに好意を伝えてくる言葉は、何よりも乙坂の全身に電流を走らせた。]
(18) Ellie 2019/11/30(Sat) 00時頃
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っ、あーーーー、もう、参った、
[力が抜け、頭がかくりと垂れる。 少し下にある彼女の形の良い額に着地して、こつ、と立つ音も響くような夜の静寂の中、握り返してくれた手を宝箱に仕舞うように己のポケットに導いて。]
(19) Ellie 2019/11/30(Sat) 00時頃
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好きだよ。 好きなところ、いっぱい言えるから、 ――帰り道ひとつひとつ聞いてくれるかな。
こうして、ずっと。
(20) Ellie 2019/11/30(Sat) 00時頃
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[顔を上げる。 こんな距離で見られるなんて思わなかった美しい睫毛にまた恋をする。
帰ろうか、家はどっちの方向?なんて。
もしかすると言い終えるより早く着いてしまうかもしれないという予感を胸に。**]
(21) Ellie 2019/11/30(Sat) 00時頃
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[絡む視線。>>25 カコはその光彩まで綺麗だと、伝える言葉が増えるのを感じる。 いくら人気がないからといって、往来で額を寄せ合う大人の男女という恰好は、あまりに彼女に配慮がないと理性が内側でがなり立てるのを無視して「あと少し」を伸ばした。
その唇が音を紡ぐのを一番近くで聞きたくて。]
……心臓が保たない、か。 それは確かに困る。 止めさせてみたいなんて思う日が来た自分に今ちょっと引いてる。
[勢いを諭すような言葉はその実乙坂の想いを加速させた。 けれど彼女が持つ「少しずつ」が全部聞けない内に幻滅されるのだけは避けたいから、そろそろ理性に勝たせるとしよう。
ゆっくり額を離して歩き出す。 夜道のヒールは危ないという言い訳は口に出さないまま。>>26 店内で歩く速度よりもずっと緩やかな家路。]
(33) Ellie 2019/11/30(Sat) 08時頃
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……入荷待ちも数えたら、きっと少しずつ言ってもどんどん在庫が増えるんだろうなぁ。
[歩き出して少ししてから口を開いた。 彼女が普段乗るバスだろうか。灯りが二人を追い越していく。]
(34) Ellie 2019/11/30(Sat) 08時頃
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久々にランチに来た日、覚えてる? 俺が不細工なかぼちゃのうさぎを作って、裏声で「オカエリ」っつったら、後からこっちにわざわざ手ぇ振ってくれて「タダイマ」って、恥ずかしさに裏声になりきれてなくて。
たーまんねぇなぁ、なんて。
どんなに長く通ってくれてるお客さんにも、そんなこと思ったことなかったんだけどな。
[語りだすのは心が動いた瞬間。 ただ、言い切らない内に信号にたどり着き、増えた通行人の手前言葉を切った。 誰にも彼女の魅力を聴かせたくなかったから。
続きがあることを示唆するように、ポケットの中の指は温まった細い指から中手骨をなぞり、形を覚えるように動いた。**]
(35) Ellie 2019/11/30(Sat) 08時頃
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[サービス?されているのは此方の気分なのだが。>>34 頬に視線を感じる。 外気は冷たいのに、火照る心地がする。
舗装の甘い道路に彼女の視線が外れていなければ、また立ち止まって触れる面積を増やしていたかもしれない。]
カコちゃんの中には「自分はこう見られている」っていうイメージがあるんだよな。 そうなるように「見せてる」っていうか。
あの日のアレは、見せようとした訳じゃなくて。 でも、「俺に」届けようとしてくれた。
それが嬉しかったから。忘れる訳ねぇよ。
[彼女にとっては恥ずかしい思い出なのだろう。>>44 でもそれを、乙坂が「カコを唯一の女の子だと気づいた瞬間」とラベリングしたことにより「忘れないで」という想いに変えられたことが嬉しい。 カコといると、「嬉しい」が増えすぎる。]
(58) Ellie 2019/11/30(Sat) 22時半頃
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[止まっている間乙坂は口を閉じたけれど、今度はカコが密やかに言葉を紡いだ。>>45 追い込んだつもりが追い詰められる。 好きな子に探られる、今まで己も気づいていなかった弱点に、喉仏が上下したのは無意識。]
俺にとっても店は「美味いものを食って貰って喜んで貰う」って、願いを叶える場所で。 願った通りの反応を返してくれるカコちゃんは、願いを叶えてくれる人だよ。
[乙坂が口を開いたのは横断歩道を渡り切ってからだった。 信号待ちで口を噤んだ理由は周りを気にしてのものだったけれど、話し始めが遅れたのは、彼女の言葉でかき混ぜられた感情が言葉を失わせた所為だ。]
待ってたよ。 ランチに立ち続ける俺に力をくれるカコちゃんを。
(59) Ellie 2019/11/30(Sat) 22時半頃
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待ってたって気づいたから、暫く来なかった訳を店長にカンニングした。知りたかった。
そしたら仕事頑張ってたって聞いたから。
――うん、俺も夜シフト不安に思ってる場合じゃねぇなって。
[彼女の三度目の真似>>47は、思い出すだけで心臓が潰れそうだ。]
……先に俺が心臓止めるんじゃねぇの、これ。
[信号待ちからずっと、腕が触れ合う距離のまま。 絞り出すような声。苦笑。 もう会話が聞こえる範囲に人は歩いていないのに。]
(60) Ellie 2019/11/30(Sat) 22時半頃
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俺にだけ? ――宅本さん、は?
……あーごめん、駄目だ、妬いてる。
[彼女よりも多分年上の己は、彼女の前では大人で頼り甲斐のあるシェフだと思われていたいのに。 彼女の言葉を疑う訳でもないけれど、初見で誤解をする程に二人が似合っていたから。
慾張りになってしまった。 己を選んでくれたのは、 ――「選択肢」ではない答えを期待して。*]
(61) Ellie 2019/11/30(Sat) 22時半頃
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それはこっちの台詞だけどな?
店でも言った。「カコちゃんは俺を喜ばせるのが上手い」って。
[恥ずかしがる顔を隠すように口元がマフラーに沈む。>>66 ……俺のマフラーなんだよなぁ、なんて。 眺めたらまた愛しさに息をするのを忘れそうだ。]
いっぱい止めて、か。 じゃあその度に生き返られねぇと。
[言われなくてもいっぱい好きになるけれど。 それを求められることがこんなにも嬉しいなんて知らなかった。
息の根を止めるのも、動かすのも、彼女。 預けられることがこんなにも幸せ。]
(69) Ellie 2019/12/01(Sun) 00時頃
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[ほら、また心臓を串刺しにする言葉が耳に響く。>>67 欲張った分以上が返って来るものだから、往来だというのにへらりと緩む頬を隠せない。
マフラーは彼女の口元をすっかり覆っている。 何かを発する度、その毛糸は乙坂よりも先に彼女の唇に振れるのだ。]
――……
[己よりも先に、 ――いや駄目だ、性急過ぎる。]
駄目な訳あるか。
[浮かんだ邪な考えを打ち消そうとしていたら、口調が同僚に対してのもののように少し乱暴になった。]
(70) Ellie 2019/12/01(Sun) 00時頃
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嬉しい。 ああでも笑顔が良いのかって思ったら、笑う時ちょっと意識しそうでやばいな。 少なくともこんな緩み切ったやつじゃねぇだろ。
[繋いでいない方の手で己の頬を抓った。 そうか、己が嬉しくて笑顔でいるだけで、彼女を嬉しくさせることができるのか。 まるで永久機関だ。]
ジャッジが浮かれてる俺だから公平な判断は保証しかねる。 おかしなことなんて一個もないよ。
[絡んだ指先から今も彼女が「伝えたい」という想いが流れてくるようだ。 繋がりを深める。 言葉以上の想いを共有するように。]
(71) Ellie 2019/12/01(Sun) 00時頃
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じゃあ酔ったついでにもう一個聞いて。
こうして二人でいる時は――「宅本くん」よりも、俺を近くに呼んで欲しい。
……駄目?
[今度は乙坂が真似する番。 許可を取るようでいて、ごり押ししている自覚はある。*]
(72) Ellie 2019/12/01(Sun) 00時頃
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[>>84己が出したものがどう食されるのか気になってしまうのは癖だ。 他の客に対してもそうだし、他の客にも見られるとドキドキすると言われたことはある。
それでも、今日カコを見ていた視線に料理人としての純粋な癖だけではない意味が宿っていたように。 カコが感じていたドキドキに、純粋に「見られている」ことの緊張以外の意味があったのなら。
それは二人の間に流れる気持ちが「お互い様」で「同じもの」だからだろう。>>81]
店じゃ出せねぇ顔してんのはわかるよ。 さっき思わず言ったのも。
"murmur coneyの乙坂シェフ"のイメージとは違うだろ?
でもそれも好きだって、俺が思うより想ってくれてること、 ――嬉しくてまた好きになる。
[カコも知らない彼女も己が「全部好き」だと、同じ位置を指腹で撫でることで示した。]
(91) Ellie 2019/12/01(Sun) 11時頃
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……もう着くのか。
[示された終点を明らかに惜しむ声が出る。>>85 細い道は少し心配になるが、辺りの住宅の雰囲気を見る限りは治安は悪くなさそうでほっとする。 彼女が一人で歩いただろう過去の夜と、今後己が送れない夜に、彼女が無事自宅の玄関を開けることは常に気にしていたい事柄だから。]
狡い俺は嫌い?
[ニヤニヤと追い打ちをかける。 返って来る気持ちが期待通りのものだとしても、敢えて。 「じゃあまたね」の挨拶までの少しの時間も惜しんで求めた。]
(92) Ellie 2019/12/01(Sun) 11時頃
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[――ら、打ちのめされたのは乙坂の方だった。 呼び捨てでもさんづけでも構わなかったが、彼女の声で響いた「かずま」の響きがあまりに甘くて、奥歯が痒くなる心地にごくりと唾を飲み込んだ。]
――うん。 はは、思ってたよりキたわ、 ……はー、こんな感じか。 店で呼ばれたら手元狂いそう。
[とうとう着いてしまう。 「おやすみ」に続く前口上が少しでも長く続くように、自分も何かを言おうとしたのに、耳元に残る「かずまさん」が脳を溶かして言葉が上手く出てこない。]
俺も、ありがとう。 マフラーは……うん、また今度。
店に来た時にでも、 ――あー、こないだ書いてなかった日は休み、だし…… 寒くねぇから平気、うん。
(93) Ellie 2019/12/01(Sun) 11時頃
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そうそう、カッコつきでdinnerて書いた日は「貸切」看板出して開店記念パーティをするんだよ。 常連さんにはスタッフがこうやって内緒話みたいに伝えてるんだけど、……もし都合が良かったら、是非。
食いたいもんあったら教えて。 連絡先――あー、名刺持ってねぇから何かメモしようか。
[物理的に手を離すきっかけを作らないと、このまま永遠に繋ぎとめてしまいそうだ。 そう思って緩めたのは乙坂の方が先だったのに。
困ったような笑顔でするり彼女の手がポケットの上部を目指したなら、思わず掴んでしまった。]
(94) Ellie 2019/12/01(Sun) 11時頃
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やっぱ、寒いからちょっとあっためて。
[繋いでいない方の手を彼女の背中に回して引き寄せる。 ドッドッドッと鳴る心臓が煩い。 シャンプーの香りだろうか。彼女からは良い香りがする。 あと少し、あと数秒。]
……マフラー渡してて良かった。 危うく、
[もっと近づくところだった、と身体を離し、今度こそ肩に引っ掛けていたワンショルダーバッグを探る。 料理のネタ帳を一枚ちぎって右肩上がりに電話番号とIDを書き連ねた。**]
おやすみ、カコちゃん。
(95) Ellie 2019/12/01(Sun) 11時頃
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[「恋人」と紡ぐ彼女の声の柔らかさにまた胸がきゅうと鳴る。>>99 乙坂がカコの「見せたい自分」の裏側を欲するように、カコもまた「客の前で料理を出す乙坂」のオフの姿を欲してくれている。
手を繋いで歩くことが許される関係になってから数十分。
新しく知ったのは、彼女が己をすごく好いていてくれることと、自宅の場所。
拗ねた声で響かせる「大好き」の甘さ。>>100]
いやほんとマジで。 店で呼ばれたらやばいから。
[くらわせてきたカコも動揺する乙坂の姿に動揺して赤くなる。 呼ぶのと呼ばれるの、どちらが先に慣れるのだろう。 でもいつか慣れたとしても、こうして照れ合った衝撃を忘れることはないのだろうという確信がある。
きっと、ずっと。]
(111) Ellie 2019/12/01(Sun) 20時半頃
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「できるだけ早く」逢えるのは嬉しいけど、無理だけはしないでくれな? デカい仕事抱えてんなら、尚更。 俺も体調には気をつけるし。
ってハハ、慌てないで良いよ、
[「都合は良くします」だなんて可愛すぎることを言うその口を塞がずにいられたのは、己のマフラーが防波堤の機能を果たしてくれたから。 それでも離れようとした手を繋ぎ直して引き寄せることまでは我慢できずに。
強張る身体から力が抜けるのがわかる。>>102 抱擁に応える手が乙坂の上着に触れ、今度は少し乙坂の身体が固くなった。
随分長い事こんな風に誰かと抱き合うことがなかったから初心者みたいで情けないが、カコの動悸も激しいところを見ると、そんな乙坂の錆びた抱き締め方でも冷めさせることはないようだ。]
(112) Ellie 2019/12/01(Sun) 20時半頃
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響きも可愛いけど、カコちゃん本人が可愛いからなぁ。
[漸く離した手は、差し出した紙片の受け取りでまた触れ合った。>>103 ムラなく塗られたワインレッドがマンション玄関からの照明を受けてきらめいた。 輪郭をゆっくりなぞる間、その美しい指先から目を離せない。
指の動きが色っぽいと気づいたのは何時だったろう。 その指が銀のフォークを持ち上げて己のパスタを運ぶ様を見つめる視線は、もしかしたら自覚よりも前から料理人の興味の範疇を越えていたのかもしれない。
そんな彼女がメモを取り、同時に此方は力を抜く。 告げられたお願いに、差し出していた手は硬直させたまま、もう片方で口元を覆った。]
(113) Ellie 2019/12/01(Sun) 20時半頃
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……煽るのも上手いとか、
[じ、と見つめる。 今は、「次」ではない。]
覚悟しとけよ? 「もういい」って言っても言うからな。
[いっぱい、傍で。]
(114) Ellie 2019/12/01(Sun) 20時半頃
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[駆ける彼女の軸はぶれない。>>104 高いヒールでもゆっくり歩く必要はなかったのだと再認識すれば、自分との帰り道を伸ばす為の行動に愛しさが増す。 振り返り両手を合わせる姿のなんと可愛いことか! ヒールなど履いていない乙坂の方がよろめきそうだ。]
……嬉しい。
[黒シャツに、彼女の名残。 お互いの気配を交換して、夢ではないと思いながら夜を過ごす幸せを貰ったことに笑みを浮かべて。
自動ドアが閉まってから3階の一室に明かりが点くまで乙坂は暫く佇んでいた。*]
(115) Ellie 2019/12/01(Sun) 20時半頃
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――帰路――
[貰った名刺に書かれた文字列を見ながら来た道を戻る。]
香子。
[こういう漢字を書くのかと音読したら、より彼女に近づいた気がした。 イベントプランナーの仕事は門外漢だけれど、社内でもきっとあのヒールで背筋を伸ばして頑張っているのだろう。 その忙しい仕事の合間に店に来てくれていたのだ。
有言実行で必ず訪れてくれるだろうパーティには、彼女がノータイムでリクエストしてくれたラザニアを用意しようと心に決めた。]
(116) Ellie 2019/12/01(Sun) 21時頃
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[ラザニアはパスタの一種で己の長く闘って来たフィールドを思わせるし、 それでいてランチのセットには登場しない、夜メニューと言えるもの。 パーティの大皿料理として出しても見劣りしない、「乙坂宛」としてあまりに完璧なリクエストだ。]
何モンだよまったく……
[手汗で撚れてしまいそうな名刺をもう一度見つめて立ち止まる。 バッグの中、財布のカードケースに仕舞おうとする目に己の免許証が留まって。]
……乙坂、 ……あ”ークソ、恥ずいわ俺。
[香子の名前を続けたくなった己の感情に呆れて一人ぶんぶんと首を振った。]
(117) Ellie 2019/12/01(Sun) 21時頃
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[再び歩き出した乙坂の携帯がメッセージ受信の通知音を鳴らす。>>106 シンプルな、彼女のイメージを崩さない丁寧な文章。 これをどんな顔して送ってきたのだろうかと思うだけで嬉しくて腹の奥から笑いが込み上げてくる。
信号までは既読のまま、赤で止まって「こちらこそ」と返す間に画面が動いて。]
っ、
[秒でスクリーンショットを取ってしまった。
「また」ということは、彼女にとって「も」今のがデートだったということで。 それを今後も望んでいるということで。 スタンプの猫はハートを持っていて。]
(118) Ellie 2019/12/01(Sun) 21時頃
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……………
[「バースト」フォルダに何十枚ものスクリーンショットが追加されてしまったのは、仕方がない。
『何度だって』 『よろしく』
スタンプショップを検索しまくって、背景にハートがいっぱい飛んだファンシーなうさぎのスタンプを購入した。
何度信号を渡り損ねたのか――数えては、いない。*]
(119) Ellie 2019/12/01(Sun) 21時頃
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――ハッピー・ノット・アンバースデー――
[乙坂の仕込みは一部前日の夜営業が終わってから。 当日はランチタイムの営業もないし、こういう時でなければ「一晩寝かせる」ということはしにくい。
作るのは、牛ほほ肉のラグーソース。 ラザニアにはミートソースが定番だが、どうせなら挟むソースに拘りたかった。
肉の脂と筋を取り除き、みじんぎりにした玉ねぎにんじんセロリと一緒に赤ワインに漬ける。 ボジョレーではない、高価なものではない、安価なチリ産の赤ワインが驚くべき美味さを引き出してくれる。 ここまでが前日の仕込みで、煮込むのは当日だ。
夜はしっかり寝ておかないと、翌日良いパフォーマンスが出来る筈もない。]
(128) Ellie 2019/12/01(Sun) 23時頃
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[出勤したら肉を取り出し、オリーブオイルで焼き色をつけてから取り出す。 肉の脂とオリーブオイルが混ざったオイルで漬けこんでいた野菜をワインごと加えて野菜の嵩が10分の1以下になるまでじっくり炒め煮をし、そこに肉を戻してトマトの裏ごしと香草を加えて煮る。 長時間アクを取りながら煮詰めると、塊肉もほろほろと解けていく。
煮詰めている間にベシャメルソースを用意する。 こちらはブラウンマッシュルームをペースト状にして加えたシャンピニオンソース仕様。
特別な日のラザニアは、特別感たっぷりに。
出来上がったソースを板状パスタであるラザニアで交互に挟み、ピザ用チーズとパルメザンの両方をかけてオーブンへ。 天板とそう大きさの変わらないスクエア型の器は開店後温度を保つ為に電磁保温器の上に置かれる。]
(129) Ellie 2019/12/01(Sun) 23時頃
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[煮込みに時間がかかるだけで、その間は他の料理も用意できる。 メインばかりではすぐに重たくなってしまうので、サラダや箸休めの一品も作っておかねばならない。
サラダコーナーは葉物野菜とミニトマト、ヤングコーン、ミックスビーンズなどの野菜やハム、スクランブルエッグ、サラダチキンなどの器の他に、一見パスタのように見える細長い野菜の器。 いわゆるベジヌードルの種類はズッキーニと、にんじんと、大根と、ビーツと、コリンキー。 フレンチやサウザン、ごまなどのドレッシングも傍に抜かりなく。 サラダ用に用意はしているが、エリカのロールキャベツが浮かぶスープに入れてスープパスタのようにして食べるのもアリだ。
因みにすぐ傍の籠には、焼きたてのピタパンとバタール、中にクリームが詰まっていないコルネが置いてある。 野菜を入れてサンドウィッチのように楽しめるようにと焼いたパン達は、宅本に気づいて貰えるだろうか。>>125*]
(130) Ellie 2019/12/01(Sun) 23時頃
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[いつもはキッチンで忙しなく動き回っている店員も、今日はその場で作る料理は何か突発的なことでもない限りはお休み。 訪れた客と、歓談に興じることが許される特別な日だ。
訪問後すぐに店長にプレゼントを渡す人々の多さ>>124>>133がこの店の愛されている証。 毎年お客さんから贈られる植物や置物は、年末の休業日を迎えるまで店内をより一層華やかに賑やかにしてくれる。]
カコちゃん、いらっしゃい。
[挨拶の後、料理を見渡す彼女を見つめていた。 途中視線が止まったように見えたカラフルなベジヌードルは彼女の食欲を誘えただろうか。 その後ラザニアが用意されているのを見つけ、しっかり視覚でも料理を楽しんでくれているのを確認した後、顔をあげた彼女の視界に登場する。
まずは、"murmur coneyの乙坂シェフ"の顔をして。
それでも、他の参加者を牽制するように、距離は近く。]
(137) Ellie 2019/12/02(Mon) 00時頃
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スケジュール調整お疲れ様。 無理して――るよな、せめて此処にいる間にいっぱい腹も心も充電してって。
[この後はクリスマスイブに向け彼女が益々忙しくなる見込みだ。 直接逢うどころか電話も難しくなるかもしれない。 若者でもなし、堪え性がないところは見せたくはないから。
こうして一緒の空間にいられる間の「充電」は、乙坂の方も大きな目的としていた。**]
(138) Ellie 2019/12/02(Mon) 00時頃
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[自ら店員の顔して近づいた癖して、香子が「カコちゃん」の顔をして此方を呼ぶことに寂しさを感じてしまって内心苦笑した。>>139 陣取った彼女の隣、綺麗に染まるアイメイクに乙坂が施した紅が加わる様に、また奥歯が痒くなるような甘さを覚える。]
うん、此処に来て「大丈夫」にして来たの、ずっと知ってるから信用してる。 楽しんで。
[しかし彼女の「充電」の為にまずは腹ごなしをして貰わないとと踏み出しかけた乙坂に、ふわりと気配が近づいて。]
(152) Ellie 2019/12/02(Mon) 21時半頃
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――――
[乙坂が初めて贈った「薔薇」と同じ数の触れ合い。>>140 他の参加者の目を忍んだ暗号のような。
息を呑み時間が止まった乙坂を置いて、彼女はすっかり元通り。]
(153) Ellie 2019/12/02(Mon) 21時半頃
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初手からラザニア行ってくれんの? さっすが頼もしい。 麺みたいなのは生野菜を麺みたいに切った「ベジヌードル」っつってアレも俺が出してるから、楽しみにしといて。
[手招きの彼女に近づいた。 大皿からトングで切り分けて、まずはミートソースより深い赤茶のソースとベージュのソース、ラザニアのクリーム色、チーズの黄色の断面図を披露してから取り皿へ。]
牛ほほ肉のラグーソースとシャンピニオンソースのラザニアです。 どっか座るとこ確保しとく?
[次のサーブを待つ客がいた手前、皿を彼女に渡して少しばかり仕事モード。 それでも早々に切り上げることが許されるのが今日で。]
(154) Ellie 2019/12/02(Mon) 21時半頃
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香子、飲みモンは?
[しれっと彼氏面をしていてもパーティの喧騒に紛れるだろうと、「充電」にやられたお返しとばかり、悪戯っぽく口角を上げた。*]
(155) Ellie 2019/12/02(Mon) 21時半頃
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[切り分ける時に断面図を見せたのは、その色味も色の理由も彼女は「咀嚼」してくれると確信していたから。>>157 前のめりに食欲を示す彼女が可愛くて仕方がないから、もしかしたら彼氏面を意図的にしなくても周りの客には「察し」となっていた可能性もある。
バイキング形式の大皿料理ではいくつかの料理を一緒に盛って席に座る客もいたが、「乗り切る」モチベーションにしてくれていたラザニアをまず堪能して欲しくて、その瞬間の表情を独り占めする為に相席を欲しがった。]
(158) Ellie 2019/12/02(Mon) 23時頃
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じゃあ取ってくるから座っときな。 あっち、日当たり良いとこ。
[反撃は成功したようだが失敗でもあったかもしれない。 彼女の紅い顔は、己の腕の中だけに留めておきたかったから。
二つのグラスに注ぐ黒豆茶。 彼女の充電の為にこれも乙坂が選んで出しているということは、流石に己だけの秘密にしておこう。
ついでに皿に残るラグーゾースを拭うバタールも二切れ彼女が待つ席へと運んだら。]
いただきます!
[と香子の前で初めて使う言葉を披露して笑った。*]
(159) Ellie 2019/12/02(Mon) 23時頃
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[勿論提供する前にそれぞれのソースの味見はしているし、ラザニアも端を切って固さを確かめてから出しているけれど、こうして皿に盛って、しかも彼女に導かれた隣の席で>>164、というのが己の料理no 最後の隠し味となっている気がする。
向かい合って彼女の食べる様を見たことは何度もあるが、この距離でこの角度で見るのは初めてで、一緒に手を合わせたのに乙坂は暫くフォークを動かせないでいた。 メイク崩れの兆候もなく美しく塗られた頬が熱さに取り入れた呼気で膨らむ様子>>165や、正面からでは隠れて見えない上品に添えられた手の下で唇が柔らかく解けている様子に見惚れた。]
初めて隣り合って食うのが此処で良かった。
この先色んな店に行くだろうし、その内店じゃなくて香子と食う為だけに「おうちごはん」ってやつも作るだろうけど、此処は俺達が出逢ったところだから。ここから新しい二人が始まるって気がする。
――うん、美味い。
(167) Ellie 2019/12/03(Tue) 00時頃
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[噛むとすぐに解ける牛肉の繊維の隙間から、形がなくなるまで煮込んだ野菜の風味が追いかけてくる。 裏ごししたトマトは舌ざわりもよく溶けるようだ。 そこに香りの高いブラウンマッシュルームの味をして濃厚なベシャメルソースが追いかけてくる。
ミルフィーユ状に構成されたそれぞれを歯で一度分断して、フォークと己の口にチーズの端をかけた。]
美味いな、我ながら会心の出来。 香子が隣にいてくれるから、肉の旨味に甘さも追加されてるし?
[同じタイミングでグラスを手にする。 熱に浮かされたような瞳にうっすら水膜が張るのを見つめて、己からも甘味を追加する試み。
バタールをちぎって、2種のソースが作るオーロラを掬って隣に差し出す。
背後の内緒話など耳に入る筈もない。>>163
己の視覚も聴覚も、嗅覚も触覚も味覚も、香子の為に今は存在している。**]
(168) Ellie 2019/12/03(Tue) 00時頃
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[こっそり見ていたことは当然ばれていたらしい。>>181 くすくすと笑いながら「駄目。見たい」と駄目返し。 正面で見る香子も何回見ても足りないのだから、横顔の香子をもっと堪能させてほしい。 呼び名と助詞の違いで関係性の変化を表す香子の魔法にかかってしまった乙坂は、きっと「未来」にもかかったままだ。 そんな確信を、確実にする手段のことを自然と思える己がいる。]
うん、一応挑戦期間は今日までで、年末までと年明けからはランチ専属に戻る予定ではあったんだけど。 ディナーで香子に指名される気持ち良さを覚えたら、惜しくなってんだよな。 ただ、最近のペースで夜入ると今度は香子とゆっくり過ごす時間がなぁ、
[反撃のように香子の視線を感じる。>>182 手元を見られることには慣れている筈だけれど、咀嚼の様子は同僚にもあまり晒さないものだから妙に緊張した。
甘い時間。 周囲には普段の営業時よりも多く人がいる筈なのに、香子の声だけは指向性マイクを通したかのようにまっすぐ乙坂の鼓膜をやわらかく揺らす。
バタールを差し出し見つめた先のブラウンが窓の光を受けて透けるようにきらめいた。己の脳内を香子の声が出力する、奇跡>>183]
(194) Ellie 2019/12/03(Tue) 23時半頃
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[けれど思考が重なったと思った瞬間バタールはお預けをくらって、彼女の身体は一度荷物の方に傾いた。>>184 マフラーだと言われたら中身を確かめるまでもないけれど、その黒に映えるように置かれたものに、目を見開いた。]
っ香、
[衝撃に身を乗り出しかけた乙坂よりも、香子の反応の方が早かった。 躊躇いなく触れる手は、乙坂の手からソースが浸みこむバタールを奪って。]
(195) Ellie 2019/12/03(Tue) 23時半頃
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[香子の方は焦らしている自覚はあるのだろうか。 乙坂は、その美しく紅が引かれた唇がソースを迎え入れ、頬張ったスペースが元通りになるまで手も中空に浮いたまま見つめていた。 こうしている時に乙坂が何も口を出さない癖を彼女は知り過ぎてやしないか。]
え、やー、美味いのは、わかってる、うん。
[此方なんてドキドキして今食べたラザニアの味が咥内からすっかり気配を消してしまった。 彼女の視線が鍵に落ちて漸く金縛りに遭った指に零れたソースを口元まで運ぶ。 くちり、と音を立てて行儀悪く舐める乙坂の耳に、彼女の言葉が響く。]
(196) Ellie 2019/12/03(Tue) 23時半頃
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――うん、 ――うん、
……同じこと、考えてたよ。
[動くようになった手は、小さな鍵を拾い上げ。 両唇で軽く食んだ。勿論金属の味だ。 かぷかぷ。 持て余す感情を金属に吸わせるしかない。]
……何でここ個室じゃねぇんだろ。
[じっと見る瞳には悔しさとそれ以上の熱が籠る。]
(197) Ellie 2019/12/03(Tue) 23時半頃
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香子の貴重な呼び捨てとタメ語、俺の腕の中で練習させたかった。 くそ、荷物はバックにあるんだよな……
[ちらりと振り返るバックヤードは、「勤務中」は基本立ち寄らない。 その中の荷物に]
これと同じ形――っつってもこのギザギザんとこは当然違うけど、同じ「合鍵」ってやつを、俺も持ってきてるから。 「交換」はまた後でな。
で、俺はもうこの後は「おうちデート」の心算だったから。
終わった後徒歩3分したら二人っきりだ。
(198) Ellie 2019/12/03(Tue) 23時半頃
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[この間は彼女を外で待たせてしまった。 すぐそこに自宅があるのに、彼女はまだそこを知らなくて。
あの日彼女の家を知ったけれど、一人暮らしの女性のマンションに男が深夜に頻繁に出入りするのも配慮がないかな、なんて、すべて言い訳。
己しか知らない彼女をもっと知りたい我儘。]
(199) Ellie 2019/12/04(Wed) 00時頃
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「時期」さえ悪くなかったら、このままずっと一緒にいてよ。
[黒い袋は一度自分のロッカーに置いてくる、と立ち上がった。 空いた皿を重ねて持ち、人の波をすり抜けていく。**]
(200) Ellie 2019/12/04(Wed) 00時頃
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[席を立ちかけた時、背後から同僚の声がかかる。>>207 普段のようにサーブ役として乙坂が立っている訳でもなし、自由に好きなものを取れるようになっているのに態々声を掛けて来たということは、と考えれば口元に笑み。 己が先程発した遠回しな誘いが聴こえていたかは知らないが、おっとりした彼女は外から見えるよりもずっと「察する」能力が高いから、今二人で座っていた意味は悟られていることだろう。]
りょーかい。 皿下げて荷物置いたら取って来るよ。 それまで見張っといて。 ……俺の大事な子に余計な奴が寄って来ねぇように。
[察していると思ってはいても改めて言語化して、同僚に席を譲る。 傍にいる宅本は「敢えて声をかけた」エリカをどんな目で見ているだろう。 「予想外のことするでしょ」と苦笑を向けて、近くのテーブルから椅子をひとつ拝借して、3人掛けを作ってから後を託した。*]
(208) Ellie 2019/12/04(Wed) 20時半頃
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――バックルーム――
[あまり長く離席をしている訳にはいかない。 客と同じ空間にいることを許されているとはいえ、ホスト側であることに代わりはないのだから。]
はーっ
[それでも暫し、ロッカーに背中を預けて。 火照る頬をぺちぺちと数度叩いて冷ます。
己の黒皮のキーケース、自宅の鍵と香子に渡す用の鍵と(梱包を試みてあまりに仰々しいかと止めた懊悩の結果)、その横に形の違う鍵。 同じ速度で恋を育てている実感に、心拍数もあがるというものだ。>>217
「望むところ」と背中で聞いた。
奔放には見えないけれど、潔癖を美徳とする青さを過ぎた大人の女性が出す答えにかかる時間を短縮させたのは、己に対する想いだという確信がある。
大事にしたい、と改めて心に誓った。*]
(230) Ellie 2019/12/04(Wed) 23時頃
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――3人卓へ――
[宅本のオーダー>>222もあり、全てを手に持つことは不可能だったから、店員権限を使って厨房からトレイを持ち出した。 エリカと宅本の分のラザニアと、二人に渡すものの切り口を揃えるために少し切った潰れた切り口の一口分は自分と香子の「おかわり」に、コリンキーのベジヌードルと一緒にピタパンに詰めて証拠隠滅。
それと二つのスープボウルにエリカ作のポトフを。 煮込むと煮崩れちがちなじゃがいもがちゃんとその形を主張している。 シンプルな家庭料理であるが故に「プロ」の技をそこに見る。
側面が割れたソーセージ、波打つベーコン、それとたっぷりのセロリ。>>74 セロリは好まない人もいるが、香子はむしろ喜ぶだろうとエリカのオリジナリティの縮図を作った。 乙坂の分はスープをたっぷりめに。 何故なら裏アレンジ的に用意してある炊飯器からよそった小盛ご飯で野菜の旨味が溶け込んだスープ飯を楽しみたいからだ。
そうして乗せた4人分を持って、話がはずんでいるであろう3人の元に戻る。]
(231) Ellie 2019/12/04(Wed) 23時頃
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お待たせ、話は弾んだ?
? ――何話してた?カオ赤くね?
[香子の表情>>227を指摘して、くすくす。 自分の分の椅子は空いていなかったので、少々行儀は悪いがウィンドウに凭れるように。 カーテンが引かれていても明るかった時間は冬の速足で過ぎていく。壁際の照明のスイッチを明るめに回した。*]
(232) Ellie 2019/12/04(Wed) 23時頃
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直の? いつの間にリクエストしてたんだよちゃっかりとあいつめ……
[当の直の姿を探すが、人の波で見えない。 彼は彼で固定ファンもいるし、忙しくしているのだろう。
花二輪の配慮>>238>>241に「あんがと」と会釈ひとつ、椅子に腰を下ろした。]
ん?
[勿論誤魔化されてなどやらない。>>241 ネタばらしをしたエリカに慌てる様も、今は聞く耳が二人分あるというのについ「可愛いなぁ」なんて言ってしまって。>>242]
(246) Ellie 2019/12/05(Thu) 00時頃
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客の「キリノエ」さんは独占できねぇけどさ、「香子」は俺のだから許せよ。
[彼女の可愛らしい回答>>240は残念ながら聞いていない。 ここにいるのは家族に彼女を紹介するかのような男の姿。]
幸せそう、ってんなら、お前らもな。 二人でいる姿がしっくりくるよ。 最初に宅本さん連れてエリちゃんが顔出した時にもう「カレシ連れて来た」って思ったからな俺。
(247) Ellie 2019/12/05(Thu) 00時頃
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[そして男は「いもうと」が彼氏を紹介する時のごとく、少し改まって。]
宅本さんなら無理強いはしねぇとは思うけど。 ……泣かしたら俺と直がぶん殴りに行きますんで。 店長は――なんかこう、何かしらやると思うんで。
よろしくお願いします。
[頭を下げた。**]
(248) Ellie 2019/12/05(Thu) 00時頃
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――四人卓――
[トレイに乗せた料理は登場時から大歓迎された。 宅本の賛辞>>252には「Zてなんすか」と笑ったり、照れを誤魔化すように食べ始めを促した香子がそれでもきちんと食前に新しいお手拭きを使用する様>>257に目を細めたり、穏やかで美味しい時は流れる。
ライスが足りなくなれば追加し、黒豆茶のお代わりにも立った。]
そうそう、生食用のカボチャで「コリンキー」って品種。 黄色味が強い野菜が欲しくて、ソウメンカボチャでも良かったんだけど他の野菜との相性考えたらこっちかなって。 ん、甘くて正解だったな。
[既にある「完成された」皿の話題だけではなく、アレンジした味も共有できる幸せ。 香子が隣でポトフもピタパンサンドもひとつひとつ丁寧に味わってくれるから、多分今日は心拍数を落ち着ける隙がなさそうだ。]
(260) Ellie 2019/12/05(Thu) 21時頃
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デザートは「ちょっとずつ全部」で良いよな?
[3人を順繰りに見回して、にっと口角を上げる。 彼等を見る視線が柔らかい自覚はある。 自分が煮込んだのは牛の頬ではなく己の頬だったのかもしれない。蕩けてずっと戻らない。]
……他の人と楽しそうに話してる彼女を見てんのも楽しいっての、この歳になって初めて知った。 すげぇよな、どの瞬間も可愛いとか。
[席を立ってからそっと宅本に相槌を求めたのは、仲良く話す女性二人の姿を見る彼もきっと同じ気持ちだと思ったから。 二人きりでいたい、独占したいという気持ちとは別に、ただ楽しさ美味しさを堪能している彼女を見ているだけで幸せな気持ちも胸の同じ位置に存在している。
デザートを堪能する彼女にもまた新しく恋をするのだろうと確信しながら何度目かのサーブを。*]
(261) Ellie 2019/12/05(Thu) 21時頃
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――巣穴から抜け出して――
[その場で料理を作る業務はないけれど、パーティの後片付けというものはやはり店員の仕事。 いつもより長くかかるだろうそれに臨む間、一度彼女には自宅に帰ることを勧めた。
合鍵を用意していたとはいえ、此方も同じものを用意しているとは思っていなかっただろうし。]
店のやつがよく泊まりに来るから歯ブラシとかは新品置いてあるけど、メイク落とし的なのはないしさ。 あ、パジャマは俺のシャツを着るっていう選択肢も考えといて。
[つまりはそれらを己の自宅で行って欲しいということで。 準備出来たらまた店の前でと約束して、働き黒兎は夢の去った巣穴がまた夢を紡げるように磨いていった。]
(262) Ellie 2019/12/05(Thu) 21時頃
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[それから二人で乙坂のマンションに帰り、合鍵は細い丸カンつきで香子の手、というか指に渡された。 丸カン自体はキーホルダーをつける為だけれど、「薬指」にリング状のものを差し込む動作が欲しかったから。
己のテリトリーに案内して、テレビをつけたけれどすぐに消したり、後輩の結婚式や己の卒業アルバムを肴にほんの少しアルコールを入れたり。]
香子、
[互いの名前以外に意味のある言葉を持たなくなる時間には、ずっと固く手を握っていた。 この手がいつか包丁を握れなくなる日が来たとしても、どんなに手入れをしても彼女の手がつるりとした光沢を取り戻せなくなる日が来たとしても、こうして手を握って眠りたい。
それを言葉に出す日が来るまで、あと――――――**]
(263) Ellie 2019/12/05(Thu) 21時頃
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