301 十一月うさぎのないしょ話
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[「どっちも」なんて贅沢な注文も、宇都木>>4:3の手にかかれば瞬く間に叶えられる。]
んー、いい匂い。
[ドライフルーツとナッツの香りだけでなく、小麦の甘い匂いがする。 にまにま笑い>>3:145だって、このご馳走を目の前にしては悔しさではなく、喜びだけが胸を満たした。]
……。
[異なる白い雪を乗せたシュトーレン。 まずは薄くクリームチーズの塗られた方へ手を伸ばす。 歯触りはふわふわ。味わいはややあっさり。 けれどこれはこれで良し。仄かなスパイスの風味やドライフルーツの食感をさっぱりしたクリームチーズが包んで、噛み締める度に洋酒がじわりと口の中に広がる。 温かなスパイスの香りが、鼻腔を通り抜けていく。]
(3) Pumpkin 2019/11/29(Fri) 22時頃
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[お次は冷たいお皿。砂糖の入っていないホイップクリームは、いつもよりもぽすぽすしているように見えた。薄く切られたシュトーレンを口へ運ぶ。]
ん。
[食感が少し違う。冷えて噛みごたえの増えた生地は、歯で潰す度に旨味を徐々に伝えてくる。 柔らかく広がるのが温かさなら、冷たさは味を重さとして舌に乗せてくれるような。 温度ひとつで姿を変える様は、正に欲張りにぴったりな一品だ。]
今だってこんなに美味しいのに、 また味わいが変わるんです……?
宇都木さんって本当おすすめ上手。 ……また、来ます。
[にまにま笑い>>3:145にだって悔しさより楽しさが溢れる。だから、満たされた気持ちで白旗を上げた。 12月のスケジュールにシュトーレンの文字が刻まれたのは、言うまでもないことである。*]
(4) Pumpkin 2019/11/29(Fri) 22時頃
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[二皿も空になり、一杯だけ頼んだお酒も身の内に蕩けた。 最後にもう一度手を合わせれば、乙坂>>3:149との間にあるのはカウンターとしとりとした沈黙だけだ。]
私、美味しいものが好きです。 食べることが好きです。 食べて、元気になって、また頑張って。 食べたいものも、いっぱいあります。
でも……だから、乙坂さんの料理がいいです。 乙坂さんが、いいです。
[戻った視線は彼の深い色した瞳の中。 彼が覗かせた感情に手を引かれるように口を開く。]
……待っていても、いいですか?
[次のスケジュール帳よりもっと近い、この後に。 帰り道だけの、ささやかなデートのお誘いを。*]
(5) Pumpkin 2019/11/29(Fri) 22時頃
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― 閉店後・murmur coney近く、街灯下 ―
[太陽からバトンを受けた月が顔を出せば、空気は秋の名残を払い、冬としての本性を表す。]
さむっ。
[身体をなぞる風に身を竦ませた。 ワインレッドから伸びる尾っぽの下、夜風の入り口は黒>>7で覆われている。]
……。
[顔を埋めるのは、寒いからだ。 冷えて赤くなった鼻をすんと鳴らしたのも、寒いからだ。 それだけのはずなのに、独りでに顔が熱を持った。 コートのポケットに仕舞っていた右手を取り出し、首元のマフラーへ触れる。 見慣れた黒と同じ色を、指先で絡めるように握り締めた。]
(11) Pumpkin 2019/11/29(Fri) 23時頃
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[声が聞こえて顔を上げる。 視線の先には、白い息を吐く黒い彼>>8の姿があった。]
――はい。
[黒色は、知っているけれど、知らない匂い。 だって、こんな近くにいたことがない。 確かめるように、ヒールを鳴らして距離を詰めた。 一歩分の距離を残して、音を止める。]
お疲れ様です。 乙坂さんを、お待ちしてました。
[マフラーから離した右手は下りるより前に彷徨い、彼の上着の端に触れようと伸びる。 彼を見上げて、はにかみながら白い息を吐いた。*]
(13) Pumpkin 2019/11/29(Fri) 23時頃
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[乙坂>>14の声に首を横に振る。 寒さを感じたのは一瞬で、周りの様子だって見ないまま、ただ一人のことを考えていた。 その相手が今、目の前にいる。]
……っ、
[板一枚取り払った距離は、想像よりも近かった。 熱いと思っていた自分の手が冷えていたことを、彼の熱を感じることで知る。 更に距離が近づけば、首に巻かれたの知らない匂いが彼のものなのだと知ることができた。]
えっと、ですね……。
[飢えたお腹みたいにきゅうきゅうと心臓が音を立てるようだった。 数年来見向きもしなかった感情に動揺し、言葉を探すように視線が揺れる。 こんな時、どんな風に返すんだっけ。 どうしたら、いい女になれるだろう。]
(16) Pumpkin 2019/11/29(Fri) 23時半頃
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……私、乙坂さんが好きです。 だから……ずっと、こうしててください。
[結局、上手い言葉なんて出てこなかった。 彼>>15を見上げて頷いて、指先を折り曲げる。
いつも見つめ続けていた彼の手が、手のひらの中にある。 こうしてて、と。 折り曲げた指先が、彼の手の縁にかかった。*]
(17) Pumpkin 2019/11/29(Fri) 23時半頃
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[長く溢れた乙坂>>18の息の始まりが白く染まった。 すぐに掻き消える靄を視線が捉える前に、視界いっぱいがただひとりの人>>19に埋め尽くされる。 今度はこちらが息を止める番だった。]
……、
[間近で降り注いだ薔薇三本分の言葉の威力に、はく、と動いた唇は音すら滲ませない。 閉じることを忘れた目が、間近にある瞳を見つめる。 通った鼻筋の骨の膨らみだとか、下を向く顔の落とす影の形だとか、誰もは知らない彼を焼きつけるように瞬きをした。]
(25) Pumpkin 2019/11/30(Sat) 01時頃
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それ、は……困っちゃいますね。
[繋いだ手は彼のポケットの中。 離れていく顔から鋭意努力して視線を剥がし、マフラーに口元を埋めながらもごもごと告げる。]
たぶん、心臓が保ちません。 だから少しずつでお願いします。
少しずつ……を、ずっと。 私も、そうします、し。
[誰の目にも隠された手を引いて歩き出した耳が赤いのは、寒さのせいだけではないだろう。 家は、会社までバス停3つ。ここからなら4つ分くらいか。 普段運動だと言い聞かせる道のりも、ふたりならきっとあっという間。ヒールだからと言い訳して、踏み出す歩幅をいつもより狭くした。
マフラーを洗って返すと次会う口実を取り付けようとするのは、もう少し後のことになる。*]
(26) Pumpkin 2019/11/30(Sat) 01時頃
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[止めさせてみたい、なんて殺し文句>>33に射抜かれた心臓は反比例するように早鐘を打ち、射手である彼から赤い顔を逸らすように手を引いた。 そうして案内し始めた足は次第に速度を落とし、今は彼の隣に収まっている。
いつもより遅い、帰り道。通りを歩く人も疎らだ。 時折通り過ぎる車のヘッドライトが、繋がる腕を歩道に焼きつけていく。]
……乙坂さん、サービスしすぎです。
[何度目かの射影。見慣れたバスが乙坂>>34の顔を照らす。 見上げた顔が眩しくて目を細めた。光が消えても目を逸らせなかったが、溝の多い地面に慌てて前を向く。 転ばないよう、慎重に。足先に力を込めた。]
(43) Pumpkin 2019/11/30(Sat) 17時半頃
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覚えてますよ。 覚えてますけど……そこかぁ。
だって、私のイメージと違うじゃないですか。 でも嬉しかったからつい……忘れてください。
……やっぱり、忘れないで。
[耳元をくすぐるのは、まだ紅葉した木々が踊っていた日のことだ。 懐かしさや恥ずかしさ、抑えきれない嬉しさも。複雑なソースみたいにない交ぜになった感情を滲ませながら相槌を打ち、最後の仕上げにわがままを一滴だけ落とした。]
(44) Pumpkin 2019/11/30(Sat) 17時半頃
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[赤信号で小休止。途絶えた言葉の最中、同じ温度に近づく手を彼の指>>35がなぞる。 ポケットの中、ぴくりと指が跳ねて、仕事柄邪魔にならないよう短く整えたワンカラーの爪が布地を掻いた。小指が彼の指の隙間に迷い込んで、骨の窪みをつつく。]
嬉しかったんですよ。 おかえり、って。
[赤が灯る間彼の口が閉じるなら、その隙に少しだけ。 立ち止まる人たちに聞こえないよう、腕が触れ合うくらいに身を寄せた。 潜めた声は、まるで内緒話だ。]
お店に行って、美味しい料理を食べる。 それって当たり前なんですけど、全部私が選ぶこと。 murmur coneyは私の願いが叶う場所で、 乙坂さんは願いを叶えてくれる人。
(45) Pumpkin 2019/11/30(Sat) 17時半頃
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でも、おかえりは待っててくれたみたいじゃないですか。 常連だからなのは理解した上で、それでも嬉しかった。
自分のイメージも、忘れちゃうくらいに。
[車道の緑が点滅し始める。]
……だから、夜働く乙坂さんに初めて会った日、 勇気を渡せていたことを知って。
貰ってばかりじゃなかったんだなって、 私も、力になれることがあったんだなって、 乙坂さんの意味になれたんだなって――
[流れるように走っていた車が止まり、黄色が赤にバトンを渡った。 一瞬、この場所にいる誰もが立ち止まる。 静寂により潜めた声が届くように、ヒールの中で更に背伸びをした。]
(46) Pumpkin 2019/11/30(Sat) 17時半頃
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――たーまんねぇなぁ、なんて。 乙坂さんにしか、思わなかったです。
[とどめは今日の笑顔だったけれど、始まりならあの時を置いて他にない。 三度目の真似もいささか照れ混じりではあったけれど、満足したように踵を下ろす。 信号が、青に変わった。*]
(47) Pumpkin 2019/11/30(Sat) 17時半頃
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[信号が青になって歩き始めても、暫くお互い口を開かなかった>>59。 沈黙に不安はない。 お互いの足音と体温だけを感じる時間に、うっとりと瞬きをした。]
……乙坂さんは私を喜ばせる天才ですか?
[白いラインを渡り終えて、また次の道へ。乙坂の声にゆっくり瞼を持ち上げる。 いつもより近い場所から聞こえる彼の言葉ひとつひとつが嬉し過ぎて、ふにゃふにゃと崩れる顔を隠すみたいにマフラーへ口元を沈めた。 布越しの篭った声は、照れてもごもごしている。]
……ふふ。 いっぱい、止めてください。
いっぱい止めて、 いっぱい、私のこと好きになって。
[絞り出すような声>>60はきっと、触れ合う距離でなければ聞こえなかっただろう。 きょとんと睫毛を上下させ、それから微笑む。 かわいい、なんて。年上の男性に思ったのは二度目だ。一度目も同じ人だった。]
(66) Pumpkin 2019/11/30(Sat) 23時半頃
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宅本くん?
[再会した同級生の名前が出て、もう一度きょとんとした表情を浮かべた。 意味を理解する前に、少しの間を置いて発された理由>>61に乙坂の顔を見上げる。 口元が、また彼の黒いマフラーに埋まった。]
……乙坂さんじゃなきゃ、 忘れないで、なんて言わないです。
乙坂さんの料理が食べたいし、 乙坂さんの笑顔に心臓が跳ねます。
私は乙坂さんが、いいの。 ……駄目?
[道をひとつ越える前>>58、嬉しかったなんて言われて、喜ばない訳がなかった。 何かを手放した訳でもなく、何かを比べた訳でもなく、この手を掴んだのはそれを自分が望んだからだ。 伝えきれなかった気持ちを補うように、ポケットの中、唯一の愛しい人の手に指を絡めた。]
(67) Pumpkin 2019/11/30(Sat) 23時半頃
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はぁ、どうしよう。 すごい恥ずかしいこと言ってる気がします。
酔ってるのかな。浮かれてるのかも。 おかしなこと言ってたら止めてくださいね。
[小声とはいえ、大胆な告白をした自覚はある。 熱くなった顔を空いた手で顔をパタパタと仰いだ。*]
(68) Pumpkin 2019/11/30(Sat) 23時半頃
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じゃあ、お互い様ですね。 そうなら、もっと嬉しい。
ドキドキするのも、気持ちも。 全部、お互い様。
[自惚れようがないくらいに、彼>>69の声から視線から、想われていることが伝わってくる。 口元を隠したって、そこから出てくる声がふわふわ弾んでいるのが分かった。鼓膜をくすぐる自分の声が普段より甘いことに気づかないフリをする。 自覚したら、頭の先までマフラーに埋れたくなってしまいそうだ。]
!
[いつもと違う反応>>70に、絡めた指がピクリと跳ねた。 頬を抓る顔を見上げる。]
(81) Pumpkin 2019/12/01(Sun) 01時頃
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ふふ、私はもう意識してますよ。 乙坂さん、食べる時の顔見てるでしょ? 作った人として見てるのは分かってるんですけど…… 今日、ドキドキしてましたから。
[秘密を打ち明ける声は、照れと喜びに蕩けていた。 声と同じくらいとろんとした笑みを浮かべる。]
その笑顔は初めて見ました。 さっきの言い方も、向けられるのは初めて。 どっちも、ドキドキします。
私が知っているより、乙坂さんが思うより、 私は、乙坂さんの全部が好きみたいです。
[ジャッジ>>71に甘えて、存分に浮かれることにした。 指の間までぴったりと重なった温度を愛おしむように、親指で彼の手の甲を撫でる。]
(84) Pumpkin 2019/12/01(Sun) 01時頃
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? はい、なんでしょう。
[通りを曲がって、一本細い道へ。 暫く住宅街を進むとマンションが見えてくる。 あそこです、と今日の終わりを示しながら、彼のお願い>>72を聞いた。]
……それ、ずるい。
[最初に言った自分のことを棚に上げて、抗議の声ひとつ。考え込むように口を閉ざした。 名前は知っている。もっと近く、近く。 マンションの入り口が見えた。]
一馬…………さん?
[名前だけの甘い響きに体温が上がって、付け加えるように続きを添えた。浮かんだのは、人懐こい笑み。カズさんと呼んでいた声だ。 赤く染まった目元を伏せつつ、足を止める。 つま先を軸にくるりと半回転。コートの下、スカートが踊った。]
(85) Pumpkin 2019/12/01(Sun) 01時頃
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今日は、ありがとうございました。 マフラーまで借りちゃって……洗って返しますね。 寒くないですか? 何か持ってきた方が……。
[この時間が終わってしまうのが惜しくて、次々と言葉を重ねてしまう。 繋いだ手を離せないまま、困ったような笑みで乙坂を見つめる。]
……おやすみなさい、一馬さん。
[もう一度、特別な名前を呼んで。 指先から力を抜いた。*]
(86) Pumpkin 2019/12/01(Sun) 01時頃
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違いますねぇ。 “murmur coneyのお客さん”が知らない乙坂さんです。
でも、だから、嬉しい。 だって……恋人、ですから。
[恋、という響きのくすぐったさにはにかむ。好きと伝えるのとはまた違うくすぐったさだ。 手の甲に触れる彼の指>>91の固さも、いつもよりくだけた笑顔も、少し乱暴な話し方も、店員と客の間柄では知り得なかったもの。 餌を欲する雛鳥みたいにもっとと願う欲は、自分の心臓が保つ程度に少しずつ出していくとしよう。]
(99) Pumpkin 2019/12/01(Sun) 16時半頃
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はい、もう着いちゃいます。 もっと遠かったはずなのになぁ。
[欲の代わりに零れたのは、彼>>92に続く寂しげな音だ。 疲れた日なんてどれだけ歩いても見えて来ない景色が、今日はワープしたみたいにあっという間に視界の中。 終わりから目を逸らし、ニヤニヤ顔の恋人を見上げる。]
む、意地悪。知ってるくせに。 ……大好き。
[何度目かの好きは、少し拗ねたような声。彼に求められる喜びの照れ隠しだ。 こんなに好きにさせてずるい。 近い呼び名は、お返しみたいなものだ。くらえ。]
(100) Pumpkin 2019/12/01(Sun) 16時半頃
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……そ、れは、良かった……です。
[くらった。乙坂>>93の反応に、顔が真っ赤になるのが分かる。繋いだ手が燃えるように熱い。 連ねた言葉は別れを惜しむ時間稼ぎであったし、動揺を隠すためでもあった。]
できるだけ早く返しに行きますから、 風邪、引かないでくださいね。 24日に大きな仕事があるので、 暫くはバタバタしちゃうんですけど……パーティ?
絶対行きます。都合は良くします。 えっと、じゃあラザニア食べ……あっそうですね。 私名刺ありますので ――っ!
[いつもの計画性はどこへやら。 わたわたとほどいた指は、ポケットの主>>94に捕まる。 引き寄せられるがまま、よろけた足で腕の中に飛び込んだ。]
(101) Pumpkin 2019/12/01(Sun) 16時半頃
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[近い。近くて、熱い。驚きに固まった身体から、徐々に力が抜けていった。 マフラーと同じ匂いに包まれながら、空いた手で彼の服をそっと掴む。 額を彼の肩に押し当て、2人分の鼓動に目を閉じた。]
……?
[頭上から聞こえてきた声>>95に意識を向けると、耳の中に囁きを残して身体が離れた。 さっきまで燃えるように熱かった身体に夜風が染みる。身を小さく震わせた。]
……。
[差し出された一枚の紙に手を伸ばす。 ワインレッドの爪は紙を通り過ぎ、差し出す手の付け根に触れようとした。]
(102) Pumpkin 2019/12/01(Sun) 16時半頃
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一馬さんに、カコちゃんって呼ばれるの好きなんです。 そんな風に呼ばれることないから、新鮮で。 かわいい響きでしょう?
[輪郭を辿るように手の淵、それから指の付け根へ。]
でも、私も、一馬さんの特別が欲しい、な。
[小指の側面をなぞり、順番に指先の山を越え、最後に紙を掴んだ。]
……次、会った時。 もっと近く呼んでください。 いっぱい、傍で。
(103) Pumpkin 2019/12/01(Sun) 16時半頃
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それじゃあ、おやすみなさい。 連絡しますね。
[代わりに名刺を差し出し、扉の向こうへ駆けていく。 自動ドアが閉まる直前、ふと思い出したように振り返り、自分の心臓の辺りを指で示した。]
ついてるかも。
[無防備に飛び込んでしまった箇所は、少し汚れてしまったかもしれない。 申し訳なさそうに両手を合わせてから、マフラーを引き上げ、顔の半分を隠した。 ひらりと手を振り、名残惜しさを振り切るように駆けていく。*]
(104) Pumpkin 2019/12/01(Sun) 16時半頃
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― 自宅・302号室 ―
[駆けた足はそのままエレベーターへ飛び乗り、染みついた動作で3階へ。ヒールの音に気をつけながら、早足で自室の鍵を開けた。素早く身体を滑り込ませた。 ドアに背を預けたかと思えば、ずるずると滑り落ちるようにしゃがみこむ。]
……っ!
[マフラーに隠した顔の熱が冷めない。きっと耳まで赤い。 睫毛を震わせながら、小さく息を吐いた。視線を手元へ動かす。 受け取った紙は少し皺が寄ってしまっていて、両手で破らないように伸ばした。右上がりの文字を指でなぞる。]
(105) Pumpkin 2019/12/01(Sun) 17時半頃
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[名刺には電話番号とメールアドレスしか載っていない。 鞄からスマホを取り出し、貰ったIDにメッセージを送る。]
『桐野江です。 今日はありがとうございました。 パーティ、楽しみにしてます。』
[あまりにシンプル過ぎる文面と数秒睨み合った。 素っ気ないと思われてしまうだろうか。しかし、自分の性格と年齢が壁となって立ちはだかる。]
『また、デートしてくださいね。]
[数分の葛藤の末、一文が追加された。]
いっ……足攣った!
[足の裏に走った痛みに、慌ててヒールを脱ぎ捨てる。 背伸びから解放された足を震わせながら、親指でもう一度スマホをタップした。
画面には、ハートを持った猫が揺れている。*]
(106) Pumpkin 2019/12/01(Sun) 17時半頃
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― ハッピー・ノット・アンバースディ ―
[冷たい風に、枯れ葉の擦れる音よりも揺れる枝のきぃきぃという鳴き声が聞こえることが多くなった。 仕事の資料を置いて来た分、今日の鞄はいつもより二回りは小さい。 他には底の広い紙袋がひとつと、平らな黒い袋がひとつ。 「本日貸切」の札>>39の前、ヒールの音を息継ぎみたいに止めた。]
お邪魔しまーす。
[潜った穴の中は、お茶会さながらに大皿料理がテーブルに並んでいる。 店長>>39の姿を見つけ、人と料理の隙間を縫うように歩を進めた。]
芙蓉さん、おめでとうございます。 これ、良かったら。
[底の広い紙袋の中身は、片手サイズの小振りなブリザーブドフラワー。 デルフィニウムにムスカリ、ペニーブラック。見覚えのある色の中、すべてを繋ぐようにふわりと咲く白い霞草は目の前の彼女のつもり。 テーブルには主役の料理たちが所狭しと並ぶだろうと、邪魔にならない大きさを選んで良かった。 手に持つ物をひとつ減らして、周囲を見渡す。]
(133) Pumpkin 2019/12/01(Sun) 23時半頃
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