254 東京村U
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─ 迷子の駅で ─
冷蔵庫が開いて?でもそれは”怖くはなかった”?
[あの家はちょっと怖かった。そう日菜子は言った。>>5:+8 それでも時々冷蔵庫が開いている、それは怖いというより不思議でしかなかったと。その違いが不思議で、東蓮寺は黙って少し首を傾ける。]
じゃあ、ずっと遊んで欲しかったのかな。 その、ハナコちゃんは。
[声を潜めても、やはり無駄らしい。 そう悟って普通の音量で問いかければ、肯定の言葉が影から返った>>5:+32]
(77) dia 2016/10/09(Sun) 03時半頃
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そうか。それじゃあ、ハナコちゃんは「あの家」の元々の住人じゃあないんだね。
[あの家、すなわち「事故物件」の。 だから怖くはない。だから大丈夫ということなのか。]
そっか……、うん。 分かった。ごめん、変なことを聞いて。 でも良かった。俺のこともだけどさ…。 君が連れていかれるなんてことになっても、やっぱり心配だし。
俺さ、日菜子ちゃんと同じ年頃の従妹がいてね。 新宿駅ではぐれて一人にしてきちゃったんだけど…… だから気になる、なんて言ったら勝手だろうけど、ね。
[澪音はどうしてるかな、と思う。 せめて鈴里から無事が伝わっていればいいけれど。 あれからやっぱり、スマホはどこにも通じそうにない。]
(78) dia 2016/10/09(Sun) 03時半頃
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[いつしか、目の前には登り階段があった。>>40 ハナコに導かれるまま、その階段を上っていく。 微かに”知っている”道のような気がしたのは、気のせいだろうか。]
え…。日菜子ちゃん、ハナコちゃん……?
[小さな影が日菜子の右から左に動いて、黒い影がもう一つ同じく生まれる。闇より黒く見えるその影に、日菜子の足が下がる様子が目に見えた。>>42]
(79) dia 2016/10/09(Sun) 03時半頃
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ハナコちゃん、君は、
[日菜子の視線>>41を受けて問いかける、言葉の先をハナコが口にする。>>42 こちらを向いたように見えた、その小さな影を少し見つめて、東蓮寺はこくりと一度頷いた。]
───…、分かった。
[そうして、僅か下がった日菜子の肩を支えるように腕を伸ばす。]
(80) dia 2016/10/09(Sun) 04時頃
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行こう、日菜子ちゃん。
[促すようにして、階段を一つ上がる。 あの濃い黒い影は、なんだろう。分かりはしないが、日菜子がここにこうして来る理由となったモノ、即ちあのマンションの”住人”ではないかと何となく思う。 それでは影を置いていくのは正しいのだろう。それでハナコが共に残ることになるにしても。]
ハナコちゃんは、君を助けたいんだろう。 だから行こう。 君はお父さんとお母さんのところに帰らないと。
[止まった足>>43を促すように肩をそっと押す。 目が合えば、誘うように繋ぐ手を伸ばした。]
(81) dia 2016/10/09(Sun) 04時頃
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(ここが、出口……、か……?)
[階段をもう一つ上る。光が急激に溢れて視界が白くなった。 その光に呑まれるように日菜子も、ハナコの姿も見えなく*なった──*]
(82) dia 2016/10/09(Sun) 04時頃
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─ 新宿駅・回想 ─
[その日の新宿駅事務室も忙しかった。新宿駅東口傍にあるこの事務室は、さして目立つ場所にあるわけではないものの、それでも世界最大の一日利用者数を誇る駅の事務室である。迷子に落としものに問い合わせ、大きなものから小さなものまで、問い合わせと対応には事欠かない。
その日の夜半過ぎには、救急車を呼ぶことすらした。サラリーマン風の青年が一人、倒れたというのだ。時間が時間だけに一度は酔っ払いかとも思われたものの、酒の匂いはなく、急病人として救急搬送されることとなった。]
(128) dia 2016/10/09(Sun) 22時半頃
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[……その日。東蓮寺琉衣は、いつしか知らない駅にいた。いや、違う。身体は確かに新宿駅構内にあったはずである。 知らぬうちに従妹とはぐれ、気付けば見知らぬ場所にいた。焦って右に角を曲がる。突き当りを右に曲がって、再び突き当りを右に曲がる。再び右に曲がれば───辿り着く同じ場所だった。あんなに角を曲がったというのに!
再び右に曲がる。突き当り。 右に曲がる。同じ場所。頭が痛い。 ガンガンと頭が痛くて、思わず道の端に蹲る。 人々の足の流れは早くて立ち止まらない。 少し頭痛が収まって、スマホを操作してみたがうまく画面が出なかった。諦めて再び歩き出す。従妹の澪音はどうしただろう。
人影は随分少なくなっていた。 開いていたはずの店も既に閉まって、駅はますます見知らぬ風の顔をしはじめる。人影もまばらだ。
また、角を曲がる。また。 また角を曲がる────]
(129) dia 2016/10/09(Sun) 22時半頃
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[ 出られない。 ]
(130) dia 2016/10/09(Sun) 22時半頃
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─ 病院 ─
[目が覚めれば、そこは見知らぬ部屋だった。 奇妙な夢を見ていたような気がする。知らない駅、知らない街で迷い続けて出られない夢だった。思い出そうとして、微かな痛みに眉間に皺が寄る。その小さな動きに、ハッとしたようにベッドサイドの人影が振り向いた。]
『琉衣…!?』
かあ、さん……?
[それは田舎にいるはずの母だった。後から落ち着いて聞いた話によれば、東蓮寺琉衣は新宿駅構内で倒れていたということだった。たまたまその場に通り掛かった人が駅員に通報してくれ、そこから救急車で病院に運ばれたということらしい。 身元は所持していた新宿不動産の社員証で判明した。病院から新宿不動産に連絡があり、それから四国の実家へと連絡が行ったという話だ。
急ぎ上京した母に付き添われて数日、目を覚まして聞いた病名は脳梗塞。幸い軽度で済んだとのことだった。]
(131) dia 2016/10/09(Sun) 22時半頃
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[夢の中でのことは全体には曖昧なくせに、所々がいやに鮮明に記憶に残っている。鈴里みよ子と会話した気がする。出たくないんじゃないかと、何故あの人はあんなことを…あんな見透かしたようなことを言ったのだろう。
夢だ。ならば登場人物は自分自身の無意識の投影だろう。 ならば見透かされても当然だ───そうは理屈で思いながらも、何故か以前彼女と交わした他愛もない会話>>1:204が思い起こされるのだ。 あの時、東蓮寺が口にしたのは他愛もない愚痴だった。 それに対して入口も出口も名前が違うだけかも知れないと、そんな彼女の言葉>>1:238が、もしかしたらずっと気にかかっていたのかも知れない。あれから…思うよりもずっと。心の底に沈んでいて。]
(132) dia 2016/10/09(Sun) 22時半頃
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[夢の中では、日菜子とも出会ったように思う。
真嶋日菜子。 新宿不動産のマンションに住んでいる女子高生。 彼女と”ハナコちゃん”と一緒に迷路の中を彷徨うという夢を見た。現実には、顔を見知っているとはいえ、さして縁の深くない子だ。そんな子が何故夢に出てきたのだろうとは思う。
だた。一度は深くなった昏睡が、ある時を機に浅くなったのだと聞いて、ひょっとしたら本当に自分は彼女らに助けられたのかも知れないと思った。そう思わされるような夢だった。
退院したら、きっと真嶋家を訪ねてみよう。ひょっとしたら、変な顔をされてしまうのかも知れないけれど。]
(133) dia 2016/10/09(Sun) 22時半頃
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かあさん。俺の…スマホあった?
[問えば、それどころじゃないといった顔をされた。当然だろう。首を緩く横に振って、言葉を続ける。]
俺、倒れる前に澪音ちゃんと一緒だったんだ。 新宿駅ではぐれてそのままにしちゃったから、きっと心配させた。 だから連絡、いってるかなと思って…気になっててさ。
[言えば納得したように、入間家にも連絡はしたと母は言う。言いながら、はあと大きく息をついた。]
『祥子のとこもねえ…。』
[大変だったようだ、と。何やら姉妹で話があったようだが、どちらにせよ互いに忙しすぎたというところもあり、未だ顔を合わせてしっかりといった会話には至っていないようであった。息子が意識を取り戻したとなれば、また少し落ち着くのではあろうけど。]
(134) dia 2016/10/09(Sun) 22時半頃
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そ…っか。なら良かった。 今度、直接俺からも澪音ちゃんに謝らないと。
ねえ、母さん。 祥子おばさんは、ちゃんと祥子おばさんだった?
[問えば、母は顔を僅かに顰めて頷いた。 入間家に起こった奇妙な騒動、その真相を母はどこまで聞いてるだろう。ひょっとしたら倒れた息子を気遣って、聞いた話をしてくれてはいないだけなのかも知れなかったし、やはり未だ良く知らないのかも知れない。
ともあれ、母と今すべき話にも思えなかったし、実際、もし母が詳細を知らないとして、詳しく説明するほどの元気も今はなかった。何にせよ澪音の無事が知れ、彼女にも自分の状況が伝わったなら、今はそれでいい。そう思った。]
(135) dia 2016/10/09(Sun) 22時半頃
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(136) dia 2016/10/09(Sun) 22時半頃
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[脳梗塞の後遺症で、左半身に軽い痺れが残った。だが後遺症は、リハビリを行えばほぼ残らないまでになるだろうという。
まだ若いのだし。と、医師には言われた。 どのみち入院はまだ暫く続きそうで、職も危ういだろうかと思われた。なんといっても、そこは切るにも手軽な契約社員だ。]
………、
[やれやれと諦め気分の息をついて、病室から窓を見遣る。リハビリは順調に進んでいて、この分だと思ったよりも早く退院になりそうだ。
あれから、考えるだけの時間はたっぷりとあった。母と言葉交わす時間も存分にあった。そうして己を省みるだけの時間が、充分にあった。]
(137) dia 2016/10/09(Sun) 22時半頃
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[長男だから寺を継げって。修行が大変そうで。 田舎が嫌で。でも現実は思うよりも厳しくて。 アパートは従妹も招けない程に古く狭くて。 それでも、着るものだけは…外側ばかりは取り繕って>>3:+9
帰りたい───、帰りたくない。 出たい───出られない。出たくない…?
なんだ、そんな理由か。それだけの理由で、それだけのちっぽけな見栄と意地で…逃げで、自分で自分を縛り付けていたのか。出口と入口を同じくして迷い続けていたのは一体誰だ?それは自分、己自身だ。]
(138) dia 2016/10/09(Sun) 22時半頃
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[苦い笑みが口元に浮かぶ。 自覚してしまえば子供っぽい、下らない意地だと思った。そんなことも分からずに…、いや。分かっていたのに、分からないフリして過ごしていたのだ。迷路の出口から目を逸らして。]
(139) dia 2016/10/09(Sun) 22時半頃
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[自分自身の心が。現実から目を逸らし、逃げ続ける心こそが迷宮を作り出していたのだろう。
鈴里みよ子は、それと分かっていたのではあるまいか。 聞いてみたかったものだと思う。言えば彼女は笑っただろうか。 ふふ。と、四つ指を口元にやわらかに当て。]
(140) dia 2016/10/09(Sun) 22時半頃
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[入間澪音が見舞いに訪れれば、東蓮寺は少し情けなそうな顔で眉を下げて彼女を迎えた。]
ごめんな、澪音ちゃん。 あんな時に一人にさせちゃって、心細かっただろ。
俺から連絡出来なくなっちゃってごめん。 もう、大丈夫かい…?
(141) dia 2016/10/09(Sun) 22時半頃
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[最初に顔を合わせた時、彼女に真っ先に告げたのは謝罪であった。ずっと気にかかっていたことだ。あの不気味な恐怖、他人が身内に成り代わっていたという冷たい恐怖と嫌悪感、あれらを共にしたことを覚えている。他者にはきっと分かりえない不気味さではないか。
入間家に上がりこんでいた不審者らは警察に捕まった>>113とは、後に聞いた。澪音の両親が消えていたことの顛末も、その時聞いた。一件落着、良い結末だったといえるだろう。 とはいえ成り代わりの、あの当時の不気味さばかりは親にも言えず、むしろ言って上手く理解が得られるもののようにも思えなかった。
それは澪音も同じなのではないかと思う。 いやむしろ、彼女にこそ、その思いは強いのではあるまいか。だからこそ事情を知る、唯一の従妹へと案じ顔を向ける。]
(142) dia 2016/10/09(Sun) 22時半頃
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……俺はね。
[と、従妹相手に話したのは何度目かの見舞いの時だ。少し早めの退院の日取りが決まったと従妹に告げ、何となく「今後のこと」に話が向いた時のこと。]
(143) dia 2016/10/09(Sun) 22時半頃
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俺は退院したら、暫くこっちで勉強して…受験、してみようかと思っててさ。 仕事はどうも、なくなりそうだし。時間も空きそうだし───多少の貯金くらいは、これまでもしてきたからね。
せっかくだから、大学を受けてみようと思うんだ。 丁度こっちに、うちの寺の宗派の大学があってさ。 K大学って世田谷の。知ってる?
[大学名を挙げて従妹へと視線を流す。これは自ら長い時間で悩み、考え、そして母とその後上京してきた父とも話して決めた結論だ。自分に出来るだけのことを試したいのだと、その為にも再び学び直したいのだと話した結果、経済的支援は受けないとの条件で了承を得た。]
(144) dia 2016/10/09(Sun) 22時半頃
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俺は結局、決められたままの道が嫌だったんだよね。 寺の長男だから寺に入って、後継いで。
でも嫌だ嫌だとだけ言って飛び出したけど、自分の望みなんて分からないままだった。何でもいいから家を飛び出して、あてもないままフラフラとしていただけ。
だから───、もうやめたんだ。そういうの。
(145) dia 2016/10/09(Sun) 22時半頃
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この年だけど、俺はもう一度挑戦してみるよ。 澪音ちゃんと同じ、高校の勉強をし直してみる。
澪音ちゃん、今度得意分野を教えてくれないか? 現役相手に聞けたりすると心強いから嬉しいんだけどな。
[従妹相手にお願い一つ。以前よりも柔らかな印象の笑みで穏やかに頼みを告げて、目を細めた。]
(146) dia 2016/10/09(Sun) 22時半頃
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俺──…迷ってたんだよね、ずっと。 ずっと、出口が見えない迷路の中で。 もがいて、あれこれと探し回っても出口がまるで見えなくてさ。 でも気付いたんだ。…やっとわかったんだ。
入口も出口も結局は同じものだって。 気が付いてしまえば出るのなんて簡単なんだ。 出口は気付けばいつだって出られるくらいに、すぐそこにある。
……だからね。俺はもう迷わない。 迷わないで行けるとこまで進んでみようと思う。 進んだ先が、元からあった道に近くなったとしても、さ。
[独り言めいて落としてすぐ、照れたような笑みを浮かべた。 誤魔化すように「頼むね」と再び添えて、東蓮寺琉衣は随分と動くようになった左の手のひらを、確かめるかのように軽く握った───*]
(147) dia 2016/10/09(Sun) 22時半頃
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(148) dia 2016/10/09(Sun) 22時半頃
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─ 新宿不動産 ─
[退院後、やはり辞職することとなった新宿不動産に手続きの為に顔を出した。同僚や、正社員のオネエサマ方は随分と心配した顔を見せてくれたものだが。 その反応も、……今は暖かい、ありがたいものだと素直に思う。 余裕だのポーズだのと、捻くれたような気持ではなく。
顔を出したついでに真嶋家のマンションのことを聞き、そこで初めて日菜子がベランダから落ちた事故の話を聞いた。 一家は今もそこに住んでいるらしいと聞いて、頷いた。 あとできっと、訪ねてみようと内心思う。]
(149) dia 2016/10/09(Sun) 22時半頃
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えっ、いいんですか? ……、分かりました、ありがとうございます。 では、お言葉に甘えてこれは頂きます。
[頼んであった写真>>1:270を渡された。 記念だからとお金は要らないと渡された封筒入りの写真を、せめてもの気持ちと共に受け取り懐に仕舞う。]
(150) dia 2016/10/09(Sun) 22時半頃
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[新宿不動産の入るビルから出れば、聞き慣れた街の雑多な音が身を包み込む。何となく少しだけ切ない気持ちでそれを聞いていた時、見渡すように見遣った先に見覚えのある女の子の姿を見つけた。
訪ねようと思っていた人の姿に、東蓮寺の目が少しだけ大きく見開かれた。]
───日菜子ちゃん!
[雑踏に負けないよう、大きく呼べば彼女は振り向いたか。 ああ、彼女も覚えているだろうか、あの不思議な白い迷宮を。 まるで知っている街なのに見知らぬ場所のようだった、あの不可思議な巨大迷路を。]
(151) dia 2016/10/09(Sun) 23時頃
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元気そうで良かった。 事故のこと聞いたんだ…それで、おうちを訪ねようかと思っていたんだけども。
[ここで会えて良かったと、笑顔で告げ。 少し言葉交わしたのちに名を問われれば、あっと小さな声を上げて笑い、己の迂闊さを謝った。]
ああ、そうか。そうだったね、ごめん。 俺の名前は───…
(152) dia 2016/10/09(Sun) 23時頃
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[彼女が覚えているのなら、あの不思議な迷宮の話を再び語ろう。そして小さなハナコの思い出を語らおう。
そうしてひそやかに、そしてささやかに。 不可思議な体験は静かに共有されていくのだ。 人の口の端に上らなくとも…確かに、そこにあったはずのものとして。]
(153) dia 2016/10/09(Sun) 23時頃
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(154) dia 2016/10/09(Sun) 23時頃
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[あれから、東蓮寺琉衣が奇妙な迷路に踏み込んだということはない。時にはあれはやはり、夢ではなかったかとも思う。
それでも、折に触れてふと思ってしまうのだ。 あれは一体どこであったのか、と。 街行く時に道の端に見つける見覚えのない小さな路、その先は見知らぬ街に通じていたりはしないだろうか…、と。
人の心が作り上げる幻想迷宮、果たしてあれはそれだけのものだったのだろうか?鈴里にだけ通じた通話、あれは真に夢の出来事であったのだろうか。
確かめる術は最早なく、それでも日常は淡々として流れゆくのだ。まるで何ごともなかったという顔をして。]
(155) dia 2016/10/09(Sun) 23時頃
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……はあ…っ
[今日も人でごった返す新宿駅で満員の電車から開放され、東蓮寺琉衣はひとつ大きく息を吐いた。
新宿ダンジョン。 そう呼称されることもある巨大な駅は、今日も世界で最も多いといわれるほどの人間たちを飲み込み、また送り出していく。 小路は人知れず生まれ、また消えていく。 店はめまぐるしく入れ替わり、街は人に違う顔を見せ続ける。 街並みは今日もまた少しずつ、確実に変貌を遂げていくだろう。
新宿の街は今日も人々を呑み続ける。 変わり続ける眠らない街…それはまるで、変化を続ける巨大な生きた*迷路のように*]
(156) dia 2016/10/09(Sun) 23時頃
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