………… はあ。
[数十分後――その頃は無人だったか、あるいは新たな人影でもあったか、ともあれ――男は玄関の内側へと戻ってきた。編集者の彼、それが窓の外に立つのを視認したために、男は突如疾走したのであり、その甲斐あって今回は侵入を未然に食い止められはしたが、
困憊を露わに、溜息を吐く]
……希望的観測なれば五日。
少なくとも三日は、延びただろう。……
[呟くは、無論〆切についてだ。
過去三回の突撃において、責任をとってと言おうか、男は自ずから編集者に催眠をかけ――催眠、飛行、変化などといった能力の中で、男は催眠を最も得意とする――なんとか事態を収拾していた。今回もその例に漏れず、である。
しかし、まあ、毎度、吸血鬼の館の諸々に疑問を抱かなくする催眠には簡単にかかっても、〆切を延ばす催眠にはなかなかかからず苦労させる彼は、全く編集者の鑑だと思った]
(167) 2016/12/04(Sun) 03時頃