わわ、おにいさんだめ!
この飴はもう先約が入ってるんだ。紛らわしくってごめんね。
かわりにこっちの飴にしなよ。甘酸っぱくて美味しいよー?
[ひとつおくれ、と手の代わりに伸ばされた舌が、星躑躅によく似た真っ白な飴をひょいと巻き取った。少女は慌ててぴょんぴょん飛び跳ね、蛇男から飴を取り返す。大事そうに籠に戻すと、渦巻きのかたちのままの舌に、代わりにりんご飴を挿した。]
まいどありー。
[飴を舐めながら遠ざかる客が視界から消えても、にこにこと笑顔のまま。
視線を落とす、取り返した白い飴を愛おしげに眺めている。
それは、彼女の作り出した可愛い「いたずら」の結晶。
それを食べてくれる優しいお客さんを探して、少女は祭り囃子の中を行く。]
ーーこんこんちきちき、こんちきちき。
こんこんちきちき、こんちきちき。
飴はいらんか、いらんかねー。
(99) 2016/05/21(Sat) 01時頃