[一瞬視界が遮られる。それがラルフの腕で、直視するのを避けてくれたのだと気づくのに数秒かかった。>>64
伏し目がちに見た血腥い匂いの中ほのかに浮かび上がる白い衣は、ミタシュのものではな,かった。心底安堵したと同時に、猛烈な吐き気が黄色い胃液と共にせりあがり、近くの灌木の影にもどしてしまった。
さっきの声が聞こえていたら、ミタシュは来てくれるだろうか。
どれだけ待っただろう。
結局、ミタシュは来なかった。]
もうここを離れたのかもしれないですね。
近くには、いないのかも。
[震える声で告げたのは、寒さの所為だけではなかっただろう。
マリオとミタシュが、会えているといい。
さよならも言えずに別れてしまうのは、よくあることではあるのだけれど、何か良くないことが起こっていないことを、祈らずにはいられなかった。]
(76) 2023/01/03(Tue) 18時頃