["父親"の口端が引き締まるのに反して、女の口角は三日月に上がる。
口にはせずとも咎むような視線に怯じる様子も欠片もない。
腕に抱えた"何か"を抱え直す様な動作をひとつ、それから近付き、]
ローストでなくとも構わぬぞ?
[と言うのはそういう話ではない。
シーシャの視線が包みに動くのに、それから不自然に外されるのを、愉快げに目を細めて眺めるが、問には答えず、ただ悪趣味な笑みを浮かべているばかり。
あと別に見てるのに気付いてもお金は取りませんので安心していただきたい。ただ、次の日にはその話が尾鰭ついてシェアハウスに知れ渡っているというだけで。]
主の抱えている仔が、喰えぬのならば仕方ないのう。
[不自然な沈黙の後、大仰な溜息をついて、その中身に暖かさを与えているだろう、お包み代わりの布を乱暴に引き剥がす。
その下には。その下には当然ながら焦茶の、リボンをつけた円な瞳のくまの縫いぐるみ。であるが果たしてそれを見たシーシャにとっては。]*
(71) ameya 2016/12/11(Sun) 23時頃