103 善と悪の果実
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[赤い蝶は、久々の水浴びを終えると満足げに薄紅の褥へと戻っていった。 生命を失ってなお、美しい ――否、だからこそ美しいグロリアの身体をベッドに横たえる。 これだけのことが、幼い少女には一苦労だったが、愛情がなくても、熱に浮かされ赤く染まった少女は、笑みすら浮かべながらグロリアの髪を整えまでした]
……姉様 おやすみなさい
[目元に別れの口付けを落とし、ナイトランプを消せば 部屋は再び闇へと沈み、光がなければ赤もまた、輝くことはない]
(*20) 2012/09/26(Wed) 18時頃
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[真っ赤に染まった夜着と身体を、グロリアの部屋に繋がる浴室で清め、少女は部屋に戻った]
林檎、は――
…駄目、眠いわ
[ひとつ、大きく欠伸をすると、幸福な子供の表情を浮かべベッドにもぐり込む。遮る者は、もう何もない。 あとはただ、手を伸ばすだけ。そう信じて―――]
(*21) 2012/09/26(Wed) 18時頃
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― 翌朝、大広間で ―
……ずっと寝室にいたわ?
[嘘はついていない。 実際、夢も見ていない。魘されることも、幸せな夢も、何も見なかった。
昨日聞いた音は彼なのだろうか、と思いはすれど、子供が果実を盗むなど、と。自らを棚にあげた思考が先にたつ]
……ありがとう
[小さく礼を述べ、手を離すよう言外に促した]
(*22) 2012/09/26(Wed) 18時半頃
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嗚呼、永遠など、この世にあるはずもございません。
(*23) 2012/09/26(Wed) 21時半頃
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"――――――…見ていた。"
例えば自室をそっと抜け出した、赤い蝶を携える少女。
例えば人の気配のない大広間、闇夜に紛れた一羽の烏。
(*24) 2012/09/26(Wed) 21時半頃
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"蛇"は警備を誘惑し、甘い甘い毒を盛る。
きっと哀れな被害者は、今朝には何の記憶もない。
舞台さえ整えれば、劇が始まると知っていた。
(*25) 2012/09/26(Wed) 21時半頃
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だって…姉様はもういないのに
[小さく、小さく零した言葉はトニーの耳に届いただろうか]
(*26) 2012/09/27(Thu) 01時半頃
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―深夜の大広間―
[蝶が舞い、赤の蜜を吸う一方で。 僕は黄金の林檎を手に入れた。
あれはまだ、大広間の中にある。
部屋を彩る植物の飾り。 この屋敷を象徴するかのような黄金の林檎たち。 その中にひとつ、忍ばせた。 木を隠すなら森の中、果実を隠すなら同じくだ。]
(*27) 2012/09/27(Thu) 01時半頃
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もう、いない…?
[届いていた言葉。 蝶のように走り出した少女。 そして栄光の死。
――彼女が、グロリアを?
もし、そうならば。]
(*28) 2012/09/27(Thu) 01時半頃
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―――ふふ。
(*29) 2012/09/27(Thu) 01時半頃
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[そこには蛇もいたのだろうか。 そして昨夜のように、見ていたのだろうか。
林檎を盗み出す、アダムを。
果実を啄ばもうとする、烏を。]
(*30) 2012/09/27(Thu) 02時半頃
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[少女は秘密を守りきることに無防備だ。 感情を押さえつけることも苦手だ。
欲しいから、奪う。 邪魔だから、壊す。 善も悪も、自覚はしていない。 ただ、欲望に忠実な、心を知らない蝶のような存在。
この狂気が始まったのは何時だったか―――]
(*31) 2012/09/27(Thu) 02時半頃
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…―― ふふっ
(*32) 2012/09/27(Thu) 02時半頃
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[まるでそれは、わざと聞かせているような推理。 撹乱したいのか大広間を外す言葉を用いて。
本当はすぐ傍にある。 ただ誰も、気付いていないだけだ。
足元に転がる林檎のどこかに、“それ”があるだなんて。]
(*33) 2012/09/27(Thu) 02時半頃
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[見られていることにも、聞かれていることにも気づかぬまま]
そうだわ
[人影のない、廊下の途中で手を合わせた]
早く…あの子をつけたいわ
[黒い蝶もいつか羽ばたくのだろうか。 それとも蛇に呑まれてしまうか。
軽やかに少女が廊下を進む頃、 薄紅の褥に眠る蝶は、乾いた血で黒蝶に*成った*]
(*34) 2012/09/27(Thu) 02時半頃
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[左手が凶器に沿う。
ふつふつと湧き上がるこの感情が何なのか、分からない。 不明瞭で、だからこそ、消してしまいたい。 僕は怯えているのだろうか。
あの、おどおどとした彼のように。]
(*35) 2012/09/27(Thu) 02時半頃
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[警官が去った後に大広間へ辿り着いた蛇には、 烏の落とした推理を直接拾う機会はなかったが。
けれどざわめく人々の言葉端より、 彼が話していたことは伝わるだろう。
…あの夜、まさに林檎へてをかけた、 他ならぬ彼の言葉を]
(*36) 2012/09/27(Thu) 22時頃
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…そう、昨日の夜。
(*37) 2012/09/27(Thu) 22時半頃
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――――――…栄光(グロリア様)へ、永遠のお別れを。
(*38) 2012/09/27(Thu) 22時半頃
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[見開かれた瞳は、やがて力を失った]
………姉様、とても柔らかかった あたたかかった
…今は きっと 冷たくなってしまったのね
[諦めたように呟いた後、 意思を確認しようと顔を見たがる。 少女は蛇の意図を知らず、それでもまだ、無防備なままだった]
(*39) 2012/09/27(Thu) 22時半頃
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[赤い意思。 殺戮の匂い。
突き付けるのは、異端者を見る眸。
重ねるのは。 重ねるのは。
僕を知った人の眸。 僕を造った人の眸。]
(*40) 2012/09/28(Fri) 01時半頃
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…貴女様が望んでくださるのならば、
私は兄にでもなりましょう。
このような、下賤な浅黒い肌でも許されるのならば。
(*41) 2012/09/28(Fri) 01時半頃
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…貴女様が望んでくださるのならば、
私は。
―――――…御守りしましょう。
レディ・ポーチュラカ。
(*42) 2012/09/28(Fri) 01時半頃
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……――――僕をみるな
(*43) 2012/09/28(Fri) 01時半頃
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兄様………?
[手の中の蝶は、同じ血を吸うことはない。 震える手は、震える唇は]
(*44) 2012/09/28(Fri) 02時頃
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[小さな呟きは、鈍く光る銀色の運命を絶つ。 赤の殺意をもってして。 どちらかの命をもってして。
濡れた烏の、 塗り潰された黒の、 重ねた血の、 背負う罪の、
眸を開ける頃、世界は“楽園”に変わっているだろうか―――……**]
(*45) 2012/09/28(Fri) 02時頃
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……ええ
[守られることになれた少女は、花のように笑う。
家族を失い壊れた少女は けして取り戻せない欠片の幻影にすがる他ないのだ――**]
(*46) 2012/09/28(Fri) 02時頃
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[本質は、望まれるままに]
[共にも]
[男にも]
[女にも]
[兄にですら]
[脱皮を繰り返す蛇は、己というものがまるでないように]
(*47) 2012/09/28(Fri) 02時頃
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…けれど、確かに、手に入れたいものがあるのだ。
(*48) 2012/09/28(Fri) 02時頃
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[烏がないたことを、蛇は未だ知らぬ。今は唯、]
可愛い可愛い、ポーチュラカ。
僕が守ってあげるから。 怖いことなど、何もありはしないよ。
[喜劇のように、花を愛でる**]
(*49) 2012/09/28(Fri) 02時頃
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