22 共犯者
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……え。ソフィア、ですか。 来てませんが……
[ 寝乱れた長い髪を撫で付けながら、ソフィアの父の問いにぼそぼそと答える。 ソフィアは昨夜から自宅に帰っていなかった。
亡くなった親方とソフィアの祖父が兄弟と言うこともあって、生前は妻子の居ない親方のところにソフィアの家族が食事を届けることがたびたびあった。 親方の死後、ヴェスパタインが一人で住むようになってからはそういった届け物は無くなったが、それでもたまにソフィアが余ったからと菓子や季節の恵みをもって訪ねて来た。 特に親しい会話をする間柄ではない。ただソフィアなりに孤独なヴェスパタインを気遣っていたのだろう。]
(123) 2010/07/29(Thu) 17時頃
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[ 本来であれば、ヴェスパタインの家にソフィアがいる筈もない。 だが、家族は万が一を考えたのだろう。 落胆よりも焦燥の色濃いソフィアの父親に、彼はおずおずと切り出した。]
あの……僕もお手伝いしましょうか? 一緒にソフィアを探させて下さい。
[ 申し出は素っ気無く断られたが、気遣わしげな瞳を見て気が咎めたのか、ソフィアの父はそれでも一応の礼を言って出て行った。
扉がバタンと閉められた。]
(125) 2010/07/29(Thu) 17時半頃
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[ 閉められた扉の前に、冷ややかな瞳の獣がひとり。]
(*13) 2010/07/29(Thu) 17時半頃
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―祭前夜の夜 / 襲撃現場― [ 目を細め、現れた同胞を見遣る。]
別に、誰でもさしたる違いはないだろう。
[ 気怠るげな声音。 顔に垂れ掛かった長い髪を、首を振り、面倒臭そうに振り払った。]
(*15) 2010/07/29(Thu) 18時半頃
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腹が減ると言っていたな。 喰いかけで良ければ喰うがいい。 まだ肉は残っている。
[ 足元に屈み込み、草叢からソフィアの首を取り上げる。 愛らしかった美貌は恐怖と苦痛に引き歪んで見る影もない。 彼はその頬に飛び散った血をぞろりと舐め上げた。]
(*16) 2010/07/29(Thu) 18時半頃
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[ 同胞の挙動を何の感情も窺えない眼で見下ろしている。]
(*18) 2010/07/29(Thu) 18時半頃
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真名……ね。
[ その呟きに冷笑と――一抹の寂寞が篭っているようにも感じられる。]
前にも言ったが好きに呼べばいい。 お前も気に入った名があればそれを名乗れ。 俺には命名の権利を行使する気はない。
[ 鋭利な刃物の如き笑み、ソフィアの首を片手に掲げたまま、若い同胞を眺めやる。]
(*20) 2010/07/29(Thu) 19時頃
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泉の神には乙女の首(こうべ)を。 聖なる樹には地の果実を。
泉に供物を捧げ終えたら、一度村に戻る。 月が沈んだら、それを聖樹に納めに行こう。 お前が手伝うと言うならその時に。
[ 同胞と大地に転がった屍骸に背を向け、森の奥に向かって悠然と歩き出した。*]
(*23) 2010/07/29(Thu) 21時頃
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今は放っておけ。
そのうちに、な。
[ その対象が新聞記者であるのか、リンドクヴィスト家のことであるのか。 定かにはせぬまま、声は消えた。*]
(*24) 2010/07/29(Thu) 21時頃
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―広場― [ ヴェスパタインが広場に現れたのは、イアンが巻き起こした騒ぎが随分と拡大してからだった。 自警団と野次馬(と呼べるのかどうか)が既に現場に向かった後で、広場に残った人々は不安な面持ちでひそひそと囁き交わしていた。]
何があったのですか?
[ 彼は村人の一人を捉まえると、不思議そうな――そして穏やかならぬ顔をして尋ねた。]
(139) 2010/07/29(Thu) 21時半頃
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―ソフィア発見現場―
ソフィアが!?
[ 村人から聞き出した顛末に、目を見開いた次の瞬間。 自警団が向かったと教えられた方角へ弾かれたように駆け出した。
しかし、走り出して間もないうちに見る見る速度が落ちていく。 終いには片足を引き摺り、時折足を止めて休みながらとぼとぼと歩く始末だった。]
(148) 2010/07/29(Thu) 22時頃
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[ 後ろからやって来た村人が何人も彼を追い越して行く。 彼は荒い息を吐きつつ、黙って見送った。]
(151) 2010/07/29(Thu) 22時頃
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―ソフィア発見現場― [ ヴェスパタインが着いた時には、そこは集まった村人で人垣が出来ていて、到底何があるのか覗けるものではなかった。 未だ呼吸が整わないといった様子で立ち尽くし、遠巻きに遺骸を囲んだ人の頭を見詰めていた。]
(157) 2010/07/29(Thu) 22時頃
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ランタン職人 ヴェスパタインは、飾り職 ミッシェルの視線には気付いていなかった。固く強張った表情で通り過ぎて行った。
2010/07/29(Thu) 22時頃
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「約定」はやはり忘れ去られている、か。
[ 平静な声音。]
……それもそうか。
[ 小さく鼻を鳴らす。]
(*27) 2010/07/29(Thu) 22時半頃
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お前の言った通りだ。
彼らは忘れてしまった。
[ 遠巻きにソフィアの死体を眺めながら騒ぐ人間たちを凝視し、同胞に語りかけた。]
(*28) 2010/07/29(Thu) 23時頃
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―ソフィア発見現場― [ 何があるか確かめるためには、人を押し退けて前に進まなければならない。 それが出来ぬ性分なのか、青年は何とか人の頭越しに見ようと、人垣の後ろの方でうろうろしている。
ふと、昨夜の来訪者──新聞記者イアン・マコーミックと名乗る男が目に入った。]
(181) 2010/07/29(Thu) 23時頃
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[ 宵の月の色した瞳が、イアンの姿を追う。 記者はソフィアの遺体の傍で、自警団に何事か話していた。>>179]
(184) 2010/07/29(Thu) 23時頃
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[ 踵を返したイアンの視線がこちらに向いた。>>183 次の瞬間、イアンの瞳に浮かんだいろを、彼は見逃さなかった。]
(188) 2010/07/29(Thu) 23時頃
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[ 『それ』は月の瞳をイアンから逸らさぬまま、緩やかに動き出した。]
(189) 2010/07/29(Thu) 23時頃
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[ 肩の上で、宵闇の髪が流れる。]
(194) 2010/07/29(Thu) 23時頃
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[ ──不意に『それ』は視線を逸らした。
彼は顔を背け、人垣を離れて元来た方へと歩き出した。]
(200) 2010/07/29(Thu) 23時頃
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[ 途中、何を思い付いたか、井戸の方へと向きを変えた。 僅かに足を引き摺り、今は人気の無い枝道を歩いた。]
(204) 2010/07/29(Thu) 23時半頃
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─井戸─ [ ランタン職人の青年が井戸のある水場に姿を現した時、そこにはまだピッパとオスカーは居ただろうか。 彼は、少し疲れたように奇妙な足取りで、井戸端に向かい歩いてくる。]
(211) 2010/07/29(Thu) 23時半頃
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[ 三人の姿を認めると、軽く会釈した。]
やあ。どうも……
[ 続く言葉が見付からない様子だ。]
(212) 2010/07/29(Thu) 23時半頃
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>>218 [ ミッシェルの問い掛けに戸惑いの色を見せたが、ひとつ頷いた。]
……ええ。 でも人が沢山居て、どうなったのかまでは……
やっぱり、本当にソフィアが亡くなったんですね…… でも殺されたってどうして……
[ 血の気の薄い唇が震える。]
(224) 2010/07/30(Fri) 00時頃
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>>214 [ そうですね、とこくんと頷いて、いまだ幼さの残る青年を見下ろす。 オスカーの目にほんの僅か宿る憧憬には気付いていない様子だ。]
(228) 2010/07/30(Fri) 00時頃
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>>229
生贄? いけにえ、てどういう意味ですか?
[ 唐突に飛び出したミッシェルの言葉は、彼に驚きと途惑いをもたらしたようだ。 酷く混乱した表情をしている。 場所を譲ってくれたオスカー>>231にちらりと視線を移し、短い礼を言ったものの、井戸から水を汲む間も落ち着かない様子だ。*]
(236) 2010/07/30(Fri) 00時頃
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―井戸― [ ミッシェルの説明>>245を聞く間、桶の水の表面をじっと睨んでいた。 やがて、意を決したようにひとくちだけ啜ると、顔を上げ彼女を見る。]
この村は、一体、
[ 何が起こっているんだ、とか、どういう村なんだ、と問いたかったのだろうか。しかしその先は声になることなく消えた。 くしゃり、と端正な貌を歪めて固く目を瞑る。 口元を押さえた手。 シャツの胸元を掴んだ拳が震えていた。]
(287) 2010/07/30(Fri) 08時頃
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[ 先刻のオスカーの忠告>>231もショックだったのかも知れない。 傍で続く彼らの会話を、拒絶するように俯いて背を向けた。*]
(288) 2010/07/30(Fri) 08時頃
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>>290 [ ホリーの無邪気な物言いに、びくりと肩が震えた。 恐る恐るといった様子で振り返ってホリーを凝視するその瞳には、あからさまな恐怖と不信の色が湛えられていた。]
(292) 2010/07/30(Fri) 12時半頃
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